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ニューアルバムをリリースする高橋優「歌うことだけはデビュー前から20年くらいやってきてるので、続ける良さも知ってる」

  • 2020.10.21
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7月21日にデビュー10周年を迎えた高橋優のニューアルバム『PERSONALITY』。全15曲という大ボリュームで、1曲1曲それぞれがとてもビビッドな色を放つ、多彩なアルバムになっている。多くの曲がコロナ禍において生まれた曲だという。

【写真を見る】撮影中は終始おしゃべり。とても和やかに進みました

ニューアルバム『PERSONALITY』をリリースする高橋優
撮影=山田大輔

「僕コロナ禍で30~40曲書いたんですけど、何にも使われなくてもいいって思いながら曲を書くことは、それこそインディーズ時代以来で。この10年は、時間に追われながらとか、1曲入魂でタイアップ先のクライアントやスタッフに満場一致で気に入ってもらえる曲を書かないといけないっていうタイミングもあって。それも僕の中で尊い経験になっていて。でもステイホーム中は、これはどこにも出せないだろうと思いながら、自分でクスッと笑いながら曲を書いたりしてて。思えば、中学とか高校の時って、家で時間があり余ってる中で曲を作っていて。要はラブレターみたいなもので、人に見せるのも恥ずかしいみたいな。それが奇しくもコロナ禍で、またそういう時間がたくさんあって。変な曲をいっぱい書きましたね(笑)。うんこの曲書いて、スタッフだけでも笑ってくれるかなって思ってたら、みんなが口をそろえて『アルバムに入れるに決まってんじゃん! うんこは最優先でしょ』って言ってくれて(笑)。それが『東京うんこ哀歌』って曲なんですけど。『ABC』って曲は、AメロはコードがAだけ、BメロはBだけ、サビはCだけって、コードが続いていくだけの曲で。だからギターの弾き始めの人には良い練習になる曲なんじゃないかなって。そういう実験的なこともできた。改めて曲作りにピュアになれた気がします」

一方、昨年12月からスタートしていたツアー「free style stroke」は、新型コロナウイルスの影響で3月に中止となってしまった。

「ツアーに向けて、練習を重ねて体も作ったので、中止になって2週間くらいは自分の精神的にも穴が空いた状態で、なかなか曲を作る気にもなれませんでした。でも時間があり余ってるからなんか書こうって思い始めて、朝起きて、昨日書いた曲の続きをやろうかなとか思ったりしているところから生活の軸ができ始めた。自分は根っからそういう人間なんだなって気付きましたね。一人暮らしで家にずっといたら、別に朝起きるきっかけってないんです。夕方まで寝ていても誰も怒らないですし。でも、日のある時間に歌詞書くとまた気分が違うから、朝のうちに起きて続きやろうかなって思ったり、それで起きたら晴れてるし、走りに行こうかなとか。ジョギングの帰りにスーパー寄って総菜買って鍋でも作ろうかなとか、鍋煮てる最中にもう1フレーズ書いてみようかなとか、そうやって生活が回って行く感じはありました」

アルバムのレコーディングは、初タッグを組んだ蔦谷好位置との楽曲「one stroke」からスタート。この曲はツアーでも演奏されていた。

「もっとライブに合う曲にしたいなとか、意味合いがフィットする曲にしたいなって思って、ツアーで歌いながら歌詞を変えていったんです。それでツアー終わってからレコーディングしたんですけど。元々は、小学校の時に、友達と遊んで夕方別れる際に、『ばいばい~!』って友達のことを追っかけてたことを題材に書いて。友達も僕に向かって『ばいばい~!』って返してくれる。大人になって振り返ってみると、その一連の流れって一つも合理的じゃなくて。車の中から手を振っている時間って、まどろっこしかったりもするわけですけど、衝動的で人間関係の美しい部分でもある。いろんな大切なものが入ってた気がしていて。よくよく考えたらライブもそうだなって。“距離との距離は今どれくらい”とか、“手を伸ばせば触れられそうだ”って歌詞とかは、車からバイバイするシチュエーションにも置き換えられるけど、お客さんと僕の関係にも置き換えられる。ライブだって別に合理的ではないわけですけど、家族以上の人間関係が育まれている気がするなって思って、どんどん歌詞が変わっていきました。アルバムはダークな曲も多いんですけど、その中で『one stroke』はかげがえのない前向きな曲ですし、僕とリスナーのことを歌ってる大切な曲ですね。でも今回は主役になれる曲が15曲揃ったと思ってるので、その一つの構成要因という感じでもあります」

撮影●山田大輔
KADOKAWA

みんながあなたと同じ人間なんだみたいな気持ちも込めて書きました

前作『STARTING OVER』に続き、今作も15曲という大ボリュームだ。

「ボリュームを多くしようとかは思ってないんですけど、シンガー・ソングライターって曲書いてなんぼってところもあって。僕は、すごくかしこまった7分の曲を作るよりは、2分の曲をたくさん書くってスタンスなんですね。2分のまま完成する曲もあれば、発展して4~5分になる曲もあって。がっつり聴いてもらう曲があったら、箸休め的なふざけた曲も入れたいっていう風にやっていくと、どんどん曲が増えていく。高橋優っていう人間のスタンス的にも、叫んでも叫んでも叫びたりないし、わめいても怒ってもまだまだ感情が出てくるっていうところがあって。だから15曲くらいになるのは割と自然なことだと思ってます」

キャリアが増えれば増えるほど、その渇望感は増しているように見える。

「これまで自分は、何もやり遂げたって気持ちがないんですよね。もちろんこうやって取材してもらったり、ライブでお客さんと会える時間は得も言われぬ幸せな時間なんですけど。『いや、まだまだだろ』って気持ちが大きくて。周囲を見渡すと、振り返り型の人間になっていく人や、過去の栄光で朝まで飲めちゃう人がどんどん増えていて。それはそれで良いと思うんですけど、僕の場合は、積み重ねてきたものの話をするよりは、今やこれからの自分を意識していたい。それは歌をきいてもらえると、出てるとは思うんですよね」

特に「RUN」と「LIFE」の2曲には、音楽活動の原動力がダイレクトに描かれているように聴こえる。

「この2曲に共通してるのは、音楽を辞めていってしまった人のことも見てるっていうか。別のことを初めて幸せになっている人はいいんだけど、『なりたい自分になれなかった』って決めつけちゃって、人生さえも投げ出してる人もいて。僕も、自分のことをかっこいいと思えない日なんていっぱいあるし、恥をぶらさげて生きてるような気持ちになる時だってある。でもそれってまだ伸びしろがあって、希望が残されているからなんじゃないかって思いたいんですよね。こんな自分でもこんなことができるって見せたら、自信のないような人たちも、『俺でもやれるんじゃねえか』って思ってもらえるんじゃないかって。逆境に立たされる時の方が、いろんな願いを込めやすいんです。『高橋優ってまだ活動してるの?』って思っている人もいるかもしれないけど、やってる本人にしか分からない喜びは間違いなくある。それは歌に限らず、全部のジャンルに用意されている気がするんですよ。諦める美学もあるけど、僕は歌うことだけはデビュー前から20年くらいやってきてるので、続ける良さも知ってる。そういう気持ちはこめました」

ラスト曲は、自身でラジオ番組も持ち、ラジオ・パーソナリティとしての想いが綴られたアルバムタイトル曲「PERSONALITY」。

「ラブソングが多いアルバムになってきたなと思ったときに、この曲には“最後の曲を君に捧げよう しみったれたラブソング”って歌詞があるし、締めくくりに相応しい言葉が並んでいる気がしたんですよね。ラジオのことを曲にしたのは、『壊れかけのRadio』とか『トランジスタ・ラジオ』とか、ラジオを受け取る側の曲が多いなと思ったことが大きくて。それで、ラジオを発信する側の曲を聴いてみたいなって思ったんです。今って誰でもインスタライブとかで発信できるじゃないですか。一般人と芸能人の垣根もなくなってきてる。誰でもバズればエンターテイナーみたいなところがあって。いろいろな意味でパーソナリティーの時代になってきてるし、発信する側の人の気持ちがもっと浸透していけばいいんじゃないかなって思って。あと、ラジオをやっている人もそれぞれの事情があって、みんながあなたと同じ人間なんだみたいな気持ちも込めて書きましたね」(ザテレビジョン・取材・文=小松香里)

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