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産業医が教える、ダメ出しされて自己肯定感が急落したときの「心の整え方」3ステップ

  • 2020.10.19
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自己肯定感とは、自分にダメなところがあっても、自分は自分でいいと思える感覚。しかしストレスが増えると、本来自己肯定感の高い人も、つい他人と比べて自分は劣っていると考えてしまう傾向にあるそうです。そんな状態で「ダメ出し」されると、いつもより強く反応し、ダメージも大。敏感になった自分の心を整える方法を精神科医で産業医としてもご活躍の井上智介先生に教わりました。

オフィスの机の上で重ねた両手に頭をのせる若いビジネスウーマン
※写真はイメージです(写真=iStock.com/PeopleImages)
60点でOKと思える人の強さ

自己肯定感の高い人は100点満点の姿を目指すのではなく、60点ぐらいの自分でもそれでいいよね、という感覚を持っている人。例えば何か企画を提出する際でも、60点でOKと思って提出するので、ダメ出しされたとしても精神的なダメージは小さく、ダメ出しの内容をしっかりと反映して完成形へと前向きにブラッシュアップしていけるのです。

一方、自己肯定感の低い人は、100点満点を出さないと自分が評価されないと思っている傾向があります。その前提でスタートしているため、失敗したときやダメ出しされたときのダメージが大きくなってしまうのです。そうすると、「自分は本当にダメなんだ」と能力を否定し、「ここにいても意味がない」と自分の存在まで否定することになって、いいことは何もありません。

そんな状況に陥ったときに、心を整える方法を3ステップでご紹介します。

ステップ1:精神的なショックを和らげる手段をもっておく

理想と現実のギャップが大きいだけに、ダメだったときの落ち込みは激しいもの。ですから最初は結果を無理に受け入れようとせず、結果は結果として受け止めるだけでOK。

「悲しい」「つらい」といったネガティブな気持ちが押し寄せてきて、平静を保っていられないときは、とりあえず気持ちを静めることに集中しましょう。

そのための方法として有効なのが「呼吸法」です。ネガティブな感情を手っ取り早く緩和してくれるので、ふだんから身に付けておくとよいでしょう。

おすすめは、いすに座ったまま、4秒間息を吸って、6秒間息を吐く、といった呼吸を繰り返す方法。吐くほうを長くして、肺の中にある空気を全部吐き切るイメージで行います。4秒+6秒=10秒をワンセットにして、3分つづけます。今吸っている、今吐いている、ということに意識を集中させると、ざわついた気持ちがいったん落ち着きます。

ステップ2:気持ちに「タグ付け」する

最初の大きなダメージから脱したら、次に重要なステップは、自分の「気持ち」にフォーカスすることです。

失敗した当事者は、その出来事によってネガティブな気持ちが渦巻いていて、そこからこの仕事に向いていない、ここにいてもダメだ、自分には力がない……、と自暴自棄な考えに及んでいるでしょう。そうしたモヤモヤとした感情は、言語化するのが一番です。自分自身と感情を分離させて自分を俯瞰してみることができるからです。

言語化するときは、自分がもともと持っているネガティブな気持ちのタグを、今の気持ちにあてはめて貼っていきます。たとえば今回のようにダメ出しされたら、「イライラ」「不安」「罪悪感」といったタグを貼る人は多いでしょう。「落ち込む」「元気が出ない」といったタグを貼る人もいるかもしれません。

貼るタグは千差万別ですが、こういったタグをあらかじめ自分の中に準備し、それを貼っていけば、自動的に言語化できます。モヤモヤした気持ちが膨れ上がっているときは、一個でなく、何個でも貼っていいでしょう。

タグ付けして言語化する過程で、感情を客観的に観察できるようになり、自分自身から分離させることができるのです。紙に書くと、より整理しやすいので、モヤモヤしたら、ぜひペンと紙を用意して、どんどん書き出していきましょう。気持ちがすっきりしますよ。

ステップ3:プロセスを冷静に振り返る

「ダメ出しされた」ということは、結果に向かって「挑戦した」ということです。振り返ってみると、そのプロセスで何かを調べたり人に聞いたりしているはず。それは自分にとっては、かけがえのない財産で、挑戦する前よりも確実に成長しているということです。

またプロセスを振り返ると、失敗の原因も見つかります。業務上のことなら、そこがつまずきやすいポイントであるとわかり、戦略や手順を見直す手立てにもなりますし、それをチームで共有すれば、周りにとっても助けとなります。

こうしてプロセスを振り返ると、自分も成長しているし、人の役にも立っている、とポジティブな気持ちに切りかえることができますよね。

失敗してもあなたの価値は変わらない

最後に強くお伝えしておきたいのは、失敗したからといって、自分自身の価値が下がるわけではないということ。

自己肯定感が低い人ほど「失敗=自分の価値が下がった」という図式になってしまいがち。でも、たとえ失敗しても、失敗した人にしか得られない気づきや学びがありますし、そこで初めて自分の得手不得手など本当に大切なことが見えることもあります。

ですから失敗をダメなことと思い込んで、悪いほうへ悪いほうへ考えないようにしてほしいですね。

失敗してうまくいかない経験は誰にでもあります。失敗しても、あなたの価値は変わりません。60点の姿も「それが自分」と、ありのままの自分を大切にしようと思う気持ちこそ、自己肯定感を底上げする大事な根拠であると知っておきましょう。

ありのままでOKと思えるようになるための新習慣

それでもその根拠が、なかなか自分で見つけられないという人は、「カラーバス効果」を活用することをおすすめします。カラーバス効果とは、ある一つのことを強く意識すると、それに関する情報が集まってくる現象のこと。

たとえば、朝起きたときに「今日は赤いものを意識して探そう」と思うと、他人の赤い口紅、看板の赤い装飾、目の前の赤いボールペン……、いつもは意識しないような「赤いもの」が次々と見つかります。

自己肯定感が下がったときは、このカラーバス効果を応用して、「今日は自分の頑張っているところを探そう」と意識して一日を過ごしてほしいのです。

そうすると「予定より早く仕事を終わらせた」「雨でも会社に行った」など、自分の頑張っていることがたくさん見つかります。

私もふだんからけっこう頑張っているんだなと思えれば、自分を大切にする気持ちが強くなり、自己肯定感アップにもつながっていきますよ。

構成=池田純子 写真=iStock.com

井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医
島根大学医学部を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急科・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び、2年間の臨床研修を修了。その後は、産業医・精神科医・健診医の3つの役割を中心に活動している。産業医として毎月約30社を訪問。精神科医・健診医としての経験も活かし、健康障害や労災を未然に防ぐべく活動している。また、精神科医として大阪府内のクリニックにも勤務

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