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タクシー運転手が語るコロナ渦中の観光地のリアル【北海道十勝編】

  • 2020.10.17
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豊かな自然を求めて全国から観光客が訪れる十勝。観光の足となるタクシーでは女性タクシードライバーも増えている。運転手歴およそ10年、ガイド歴は15年以上という川原洋子さんに、彼女目線で見たコロナ渦での変化と想いを聞いた。

「コロナは、すぐに収束するだろうと思っていたんです。それがあっという間に世界各国に広がってしまい、率直に『どうしよう……。』という思いでした」

昨年末から決まっていた予約が年明け次々にキャンセルとなり、帯広の街からは人が消えた。JR帯広駅前に行っても、誰も降りてこない。

「一日数千円という売上の中、同僚も皆、意気消沈していきました。毎朝、今日はどうしようか……と、重い気持ちで一日が始まるんです」

そんな中、川原さんの気持ちを変えてくれたのが、お客様からの「どこに行ってもマスクが手に入らない。運転手さん、どこで手に入れているの?」という言葉だった。

「その言葉を聞いて、家族のためにと作り始めていた布マスクを、お客様のためにも作って差し上げたいと思ったんです。すぐ会社に相談し、快諾してもらいました」

川原さんがこれまでに作った布マスクは、幼児用、子供用、大人用3種類で合計350枚ほど。5月1日から、布マスクにメッセージを沿えて、タクシーの乗客に1乗車につき1枚、プレゼントした。

同じ頃、飲食店と提携し、テイクアウトメニューを購入者宅へと運ぶ取り組みも始まった。人ではなく飲食メニューを乗せて運ぶのは初めてのことだったが、走れる喜びを感じたそう。

「宅配でも、お届けする時に直接お客様に会える。お客様の声が聞ける。そのことが本当に嬉しくて。この取り組みのおかげで、私たち運転手が元気と笑顔を分けてもらったように思います」

布マスクのプレゼントも、飲食メニューの宅配も、お客様に大好評だった。特に外食を控えていた人には「お店のメニューが温かいまま食べられる」と喜ばれた。大正交通は、現在も帯広市内の飲食店28店ほどと提携し、宅配を続けている。

車内にはアルコール消毒液を常備し、運転席と座席の間には飛沫防止シートを設置。乗車毎の消毒を欠かさない。「決済方法が増えて現金に触れる機会が減ったのも良かった」と川原さん。現在は、Go to トラベルキャンペーンや、北海道独自の観光支援策「どうみん割」の効果も少しずつ出始めている。

「6月から、やっと観光タクシーの利用が出てきました。本州のお客様の中には『PCR検査、受けてきました』と逆に気遣ってくれる方もいらっしゃいます。十勝には、ガイドブックに載らない絶景スポットも多いので、ぜひ遊びに来てほしいですね」

細やかな気配りとおもてなしでお客様を迎える川原さん。旅先での暖かい心遣いは、十勝の美しい風景とともに忘れられない思い出になるだろう。(2020年9月16日取材)

 

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