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寂れた炭鉱設備、道路に佇む1匹のキタキツネ... 「北海道の廃れた世界」を映した写真に反響

  • 2020.10.18
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第15回「地域ブランド調査2020」(ブランド総合研究所、2020年10月発表)によると、全国で最も魅力的な都道府県は12年連続で北海道だった。安定の人気ナンバーワンである。

ただ北海道と言っても、かなり広い。観光客が憧れる魅力的な観光スポットの陰には、こんな寂しげな場所もあるという。

2020年10月13日に、次のような写真が投稿され、話題となっている。

道路脇にある矢羽根付きのポール(標柱)は、道路の境目を指し、積雪時に道路の幅を示すものだ。北海道民にはおなじみの光景と言っても良いだろう。そして道の中に座り込んでいるのは、犬ではない。どうやらキタキツネのようだ。これまた北海道ならではの風景かもしれない。

写真をツイートしたのは、北海道の廃墟やひなびた風景と人々の姿を記録して歩いている「道民の人」(@North_ern2)さんだ。「この写真が自分の中で一番『北海道の廃れた世界』を凝縮した一枚だと思っている」というコメントを添えている。

それにしても背景の大きな建物は何だろう? いったいここは、どこだろう?

Jタウンネットは、投稿者の「道民の人」さんの話を聞いた。

かつては1万人以上が暮らした街

 「羽幌炭砿」施設跡 「道民の人」(@North_ern2)さんのツイートより

投稿者「道民の人」さんによると、ここは北海道北部の西海岸に面した羽幌町(はぼろちょう)の中心部から東に20キロほど離れた山中にある、「羽幌炭砿」の跡地だという。大きな建物は、ホッパーと呼ばれる貯炭場のようだ。

羽幌炭砿は、かつて繁栄を誇った炭鉱の街だった。

それが衰退するまでの経緯については、ゆかりの深い「鈴木商店記念館」のウェブサイトや、羽幌炭砿についてのドキュメンタリー作品を制作した「羽幌カラー現像所」のサイト中コンテンツ「ふるさと羽幌炭砿」などに詳述されている。

また、「ふるさと羽幌炭砿」では、羽幌炭砿から閉山までの経緯を描いた「羽幌炭砿 ~黒いダイヤに夢を賭けた物語~」という約16分の動画を見ることができる。Jタウンネットも参照させてもらった。関心のある読者はのぞいてみてはいかがだろう。

これらのサイトによると、1940年に石炭積み出し用の鉄道が開通し、この場所での本格的な炭鉱経営がスタートした。以来、「羽幌炭砿」として、1970年の閉山まで賑わった。

最盛期の60年代には、3つの地区で約3000世帯、人口1万3000人が暮らしていたという。街には小中学校、病院や郵便局など生活に必要な施設や、映画や演劇が楽しめる会館などの娯楽施設もあった。川沿いには商店街も形成され、約200メートルに渡って様々な商店が並んでいたそうだ。

しかし70年、国のエネルギー政策の転換等に伴い羽幌炭砿は閉山を余儀なくされた。1万人を超える住民は、街を立ちさらざるを得なくなったという。

 「羽幌炭砿」施設跡 「道民の人」(@North_ern2)さんのツイートより

冒頭のツイートの投稿者「道民の人」さんは、北海道内の廃村や廃墟になってしまった炭鉱集落が好きで、地元の函館から羽幌へ何度も通っていると語る。この写真を撮影したのは3度目の訪問になる2017年の10月頃だったそうだ。

「私が『羽幌炭砿』について一番最初に知ったのは、高校生の時、地元のニュースで見た元羽幌炭砿職員の方のインタビューだったと思います。実際に私が最初に羽幌炭砿を訪ねたのは、それから5年ほど経ったころです。

訪ねる前に現地が炭鉱として機能していた時期の写真を見てから行ったのですが、『本当にここに街があったのか...?』と思うほどの原野が、ただただ広がっていて、呆然とした記憶が強く残っています。

自分自身も同じような経験があるからか、見ていて非常につらくなりましたね。しかしまた一方で、ここで暮らしたことがない私にとっては、誰一人いない原野の中に突如現れる巨大な石炭ホッパーや選炭施設、橋桁、廃校などは『街の跡』というよりも、場にそぐわない不釣り合いな光景に映るという奇妙な感覚が募ったことを覚えています」

「北海道の廃墟といえば炭鉱施設跡と炭鉱集落の跡だと思います」と語る、「道民の人」さん。中でも、原野へ還った森の中にたたずむ羽幌炭砿の竪坑櫓(たてこうやぐら)は、国のエネルギーや産業を支えた北海道の石炭産業の巨大な墓標のように見えるそうだ。

全国で最も魅力的な都道府県トップに輝く北海道、華やかな人気スポットの陰に、すっかり忘れられてしまった廃墟の町もある。でも、それがかえって、「エモい!」と言われてしまうのかも......。

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