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横浜流星×浜辺美波「私たちはどうかしている」観月ありさの死の真相は?どうかしている元凶は、光月庵の伝統だった最終回

  • 2020.10.7
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「私たちがどうかしている」最終回2時間SPは、「七桜と椿のお菓子対決」「事件の解決」の二編から構成。ここに恋愛が絡み、伝統と人間関係に変化が起きて、終幕へ。あれだけ怪しさ満載だった山口(和田聰宏)が、ただ“ちょっと過去を知っている人”だったのには驚き。あの含みのある表情の数々は、殺しに関係しているやつのそれだっただろう。

椿と七桜のお菓子対決

病床の大旦那(佐野史郎)が、血の繋がらない光月庵育ちの椿(横浜流星)と繋がりはあるものの外からきた七桜(浜辺美波)のお菓子対決を提案。勝った方が光月庵の当主になる。

椿と七桜は相思相愛。どっちが勝っても一緒に仲良く受け継いでくれよと思ってしまうし、負けた方が出て行ったらどうかし過ぎていて感情移入が難しい。正直、あんまり勝敗に興味が持てなかったのだが、ここで表現されたのは技術比べなんかではなく、2人の技術の継承、伝統だった。

七桜が作ったのは、砂糖で煮詰めた柚子の中身を、皮だけ残して薄くくり抜いて、白餡を詰めて包餡した「冬暖」(ふゆあたたか)。美しさと美味しさに加え、“香りがいつまでも残る”お菓子だ。才能あふれる職人だった百合子(中村ゆり)と、いつか一緒に作ると約束していた逸品だ。

一方の椿は、血がつながっていないことから、存在そのものが光月庵にとって伝統をぶち壊す存在。考え方も伝統にとらわれずに挑戦し続けることで光月庵を守るというもの。七桜との結婚の動機も、それだった。そんな椿が作ったのは、なんと道明寺を椿の葉で包む、伝統的でシンプルなつばき餅だった。これは前の当主で育ての父である樹(鈴木伸之)に初めて教わったお菓子で、椿にはすべての始まり。血こそ繋がっていないが、光月庵で育った椿の人生を守るお菓子だった。しかし、椿のお菓子は「大旦那に向けて作ったものだった」という理由で、七桜に軍配が上がる。

「何にも縛られず、思うままお菓子を作るんだ」

直後に大旦那は倒れ、椿に上記のセリフを残してこの世を去った。今まで苦しめてきた椿への謝罪の念と、自分自身が伝統に縛られてきた後悔の念が入り混じる、そんな最後だった。

“どうかしている”の歯車は伝統から

原作ですら明かされていない、樹を殺した犯人もしっかりと判明した。しかし、その内容は思っていたよりもちょっと複雑で、登場人物ひとりひとりに想いを寄せると、なんでコイツここでこんな突飛な行動するんだよ、とちょっと腑に落ちない部分もあったり。

タイトル通りこのドラマは登場人物たちがみんな、どうかしている。放送開始時は七桜も椿もみんながみんな奇行の連続だったが、ストーリーが進むにつれてその原因がわかって行った。元凶は、光月庵の伝統だ。

一番の悪と見られる女将も伝統の被害者だ。25年くらい前だろうか、光月庵に嫁いできた当初の女将は、明らかにか純な新妻だった。しかし、夫の樹には学生時代から交際する不倫相手の百合子がいて、しかも、百合子を従業員として雇い、同じ屋敷に住まわせるという奇行にまで走っている。女将は樹に指一本触れてもらえず、新妻としてのプライドはズタズタだ。樹と百合子の行動は許されるものではないが、この原因は2人の交際を知りながらも無理やり結婚させた大旦那にあった。親が結婚相手を決めるのは、光月庵の伝統だ。

自分の存在価値が欲しい、女将は光月庵の常連だった多喜川の父・秀幸(丸山智己)と不倫をして子どもを作ろうと企む。このことにより、多喜川家は崩壊。女将の企てた殺人計画は、予想通りには事が運ばなかったが、結果、樹は死に、百合子は逮捕されてしまう。そしてこれがきっかけで、七桜は光月庵に乗り込むことを決意した。光月庵の伝統により、樹と百合子の純愛は歪み、女将の思いは踏みにじられ、多喜川家は壊され、椿と七桜は人生を縛られたのだ。

女将は事故死?

狂いに狂いまくっていた女将だったが、椿への愛は本物だった。おそらく、唯一の味方だと感じていたのだろう。事件の全てが明るみに出た後、女将は小さな子どもを守るためにトラックに轢かれて死んでしまう。しかし、生前から臓器提供を希望していたことにより、椿は角膜を移植してもらい、失明を免れた。

女将は事故死だったのだろうか? トラックと子どもを助けた女将の距離はかなりあったように見えた(演出かもしれない)が、女将は覚悟を決めたように目を閉じ、わざと逃げなかったように思える。行き場を失い、これ以上椿のためにできることがなくなった女将は、あえて死を選んだとも取れる。

とはいえ、トラック自殺は、角膜が壊れる可能性が高い。今回はたまたま偶然、奇跡的に頭部は綺麗なまま死んだからよかったものの、普通だったら壊れててもおかしくない。そう考えると、わざと自殺にはちょっと不可解だ。だとすると、その間だろうか? 椿に想いを重ねて子どもを助けたら目の前にトラック、避けずにこのままいたら椿のためになるな……そう考えて女将は死んでいったのかもしれない。真相はわからないが、椿は、ドラマを観てきたみんなはあの事故死をどう受け取ったのだろう?

■まつもとりえこのプロフィール
フリーイラストレーター。ドラマ・バラエティなどテレビ番組のイラストレビューの他、和文化に関する記事制作・編集も行う。趣味はお笑いライブに行くこと(年間100本ほど)。金沢市出身、東京在住。

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