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【アフォーダンス理論】思い込みを有効利用できる!? デザインでも活躍する心理効果

  • 2020.10.15
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アフォーダンス理論
Credit: depositphotos

アフォーダンス理論とは、「環境(物)が持つ形・色・材質などの特性は、もともと人や動物に提供(アフォード)されるべき情報として備わっていて、それらは人や動物の知覚や行為を促すきっかけ(アフォーダンス)を含んでいる」とする概念です。

……このように書くと少し難しいかもしれませんね。

たとえば身近な例だと、「床はそこに『立つ』という情報を人に提供(アフォード)している」「椅子は『座る』という情報を人に提供(アフォード)している」「マグカップの取っ手は『持ち上げる』という情報を人に提供(アフォード)している」と言えます。

この概念の背景には、「人を含む動物が環境(物)に意味を与える」のではなく、「環境が持つ意味が人に知覚される」という捉え方があるのです。

この効果は今や、心理学を超えて、Web上や電子工学などでも応用されている注目度の高い効果です。今回はアフォーダンス理論について、私たちの生活に溶け込んでいる例とともに詳しく解説していきます。

アフォーダンス理論とは

アフォーダンス理論は、認知心理学における概念で、1950年後半にアメリカの心理学者ジェームス・ジェローム・ギブソンによって提唱されました。

「アフォーダンス(affordance)」とは彼が作った造語であり、「afford」は「与える、提供する」という意味の英単語で、「-ance」は行動や状態・性質などの意味を表す接尾辞です。

何が何に対して何を提供するかというと、「環境(物)が人や動物に対して、その使い方を与える」ということになります。

つまり、アフォーダンスという概念は「環境(物)はもともと様々な使い方をアフォード(与える、提供する)しており、人や動物はその使い方を受け取る」という概念になるのです。

アフォーダンス理論の具体例

概要の説明だけでは少しわかりにくいアフォーダンス理論を、具体例を交えて解説します。以下の2つの具体例は、ジェームス・ジェローム・ギブソンが提唱した例です。

具体例1:地面

1つ目の例は地面です。

表面がほぼ水平で、平坦で、人や動物に対して十分な広がりを持っていて、人や動物よりも堅いものであれば、その表面(地面)は人や動物を支えることができます。

これを、アフォーダンス理論では「その表面は、『支えること』をアフォードする」と表現します。表面(地面)は人や動物に対して「支える」という使い方を与える(説明する)しており、人や動物は、表面の使い方を受け取っていることになります。

表面の水平さや形、大きさ、堅さといった環境の特質は、その人や動物との関係において決まります。

具体例2:椅子

2つ目の例は椅子です。

表面が水平で、平坦で、ある程度の広がりがあり、十分に堅いという特質に加えて、その面が膝の高さにあるとします。

人は、その面を見たときに「(椅子のように)座れる」と認識するでしょう。アフォーダンス理論では、「その面は『座ること』をアフォードする」という表現になります。

デザインの分野で発揮されるアフォーダンス理論

ジェームス・ジェローム・ギブソンが提唱したアフォーダンス理論は、その後心理学以外の領域に広がっていきました。

その1つのきっかけとなったのが、アメリカの認知科学者であるドナルド・アーサー・ノーマンです。

ノーマンは自身の著書「The Desing of Everythings(誰のためのデザイン?)」の中で、ギブソンのアフォーダンス理論を取り上げ、それをきっかけにデザインの世界でよく使われるようになりました。

ノーマンは著書の中で、「道具やコンピュータによるシステムの設計などは、それが何を『アフォード』しているのかを明確にデザインにすべきである」と提案しています。

つまり、「過去の経験から、その使い方を知っている環境や物には、説明がなくても人が使えるようにわかりやすい特徴を持たせ、行為を誘発するようにデザインすべきだ」ということです。

このデザイン分野におけるアフォーダンスを、「知覚アフォーダンス」と呼ぶことがあります。現在、ノーマンの「知覚アフォーダンス」の方が一般的に浸透しているとされています。

アフォーダンス理論の活用例

以下では、私たちの生活の中で活用されているアフォーダンス理論の活用例をご紹介します。

具体例1:ドアの取っ手(引き手)
アフォーダンス理論:具体例1
Credit: depositphotos

ドアには押すと開くもの、引くと開くもの、どちらにも開くものがあります。

ドアの中には、押すドアに見えて引かなければ開かないものや、引くドアに見えて押さないと開かないものがあります。こういうドアに出くわしたときは、少しイラッとしてしまうものです。

ノーマンはこうした事態は、ドアを操作する際の手がかりとして、「アフォーダンスが適切にデザインされていない」と考えました。

そこで、ドアノブではなく平らな金属や板がついている場合、その部分を押せばドアが開くことがわかります。これは「この平らな部分が『押すこと』をアフォードしている」ことになります。

また、引き手がついているドアは、その取っ手を引けばドアが開くとわかるでしょう。これは「取っ手が『引くこと』をアフォードしている」ということです。

このように、アフォーダンス理論を活用し、ドアにわかりやすい特徴を持たせてデザインすることで、説明なしでも使い方を伝えることができるのです。

具体例2:Web上のテキストや画像
アフォーダンス理論:具体例2
Credit:depositphotos

インターネット上の画像やテキストにもアフォーダンス理論が用いられています。

例えば、画像にカーソルをあてると、テキストが読めるものがあります。ボタンのような立体的なデザインをほどこした画像は、「クリックできる画像」として認識されやすく、クリックにつなげることができます。

また、テキストが青文字になっていて下線がしかれていると、人はそのテキストをリンクだと認識しやすくなります。

このように、その物(画像やハイパーリンク)にどういった使い方があるのかを認識させることができるのは、Googleなどの大手検索サイトがこの手法を採用しており、人は過去の経験則で「このテキストはリンクだ」と知っているからです。

具体例3:iOSやAndroidのアプリデザイン
アフォーダンス理論:具体例3
Credit:depositphotos

iOSやAndroidのアプリには、取扱説明書がついてきません。多くのユーザーは、アプリ画面の中で直感的に「ここはタッチできる」「ここはスワイプできる」と認識し操作しています。

Appleは、iPodのクイックホイールやiPhoneのタッチパネルディスプレイなど、ユーザーインターフェイスの実現に向けて段階的に進めてきました。

世界中のユーザーが説明書なしでも使うことができるのは、こういった過去の経験則に基づいて、知覚アフォーダンスを活用しているからだと言えます。

身近なところにアフォーダンス理論が使われているかも

今回はアフォーダンス理論について、身近な例といっしょに解説しました。

心理学だけでなく、さまざまな領域で活用されているアフォーダンス理論。説明なしに使い方を知っている物やサービスがあれば、それはアフォーダンス理論が使われているのかもしれません。

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