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“表現”を楽しみながら研ぎ澄ます。ダイアログ・ミュージアム「対話の森(R)」

  • 2020.10.5
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東京・竹芝に2020年8月23日に誕生したダイアログ・ミュージアム「対話の森(R)」。日本初のダイバーシティを体感できる体験型常設施設だ。今回は、同施設で開催中の、音のない世界で聴覚障害者とともに対話をする「ダイアログ・イン・サイレンス」に参加した。

“世の中を分断しているたくさんのものを、出会いと対話によってつなぎ、ダイバーシティを体感するミュージアム”
この施設説明を初めて聞いたとき、正直「なんだか難しそう」と思った。
しかし、実際に訪れると、それがただの勝手な思い込みだったということにすぐに気がつく。

ダイアログ・ミュージアム「対話の森(R)」は、東京・竹芝にある複合施設「アトレ竹芝」1階にある。同じ建物には劇団四季の新劇場や飲食店などが揃い、汐留川を望める絶好のロケーションだ。
デートスポットにも最適なこの場所にある同施設。ガラス張りの開放的なロビーは、広々として明るくエネルギーに溢れていた。
“障害に触れる展示=真面目で堅い“、という先入観がここで早くも覆される。
「対話の森」では現在、静寂の世界を体験する「ダイアログ・イン・サイレンス」と、暗闇の世界を体験する「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」を新型コロナウイルスの感染予防のため期間限定アレンジした「ダイアログ・イン・ザ・ライト」の2つのプログラムを開催中。
今回は、「ダイアログ・イン・サイレンス」を体験させてもらった。

このプログラムではヘッドフォンを装着し、声を発さず、音のない世界での対話を楽しむ。案内をしてくれるのは、聴覚障害者のアテンドスタッフだ。
まず最初に、アテンドスタッフから“ヘッドフォンを外してはいけない”“音や声を出してはいけない”などの基本的なルールをジェスチャーで教えてもらう。
簡単な説明でも、相手の表情や手の動きをじっくりと確認しないと理解が難しい。まだアトラクションが始まってすらいないのに、音のない世界では想像以上に集中力・観察力が必要なことに驚く。

展示内は7つの部屋にわかれており、手だけでさまざまな表現をする「手のダンス」、表情を使ったパフォーマンスを体感する「顔のギャラリー」などが続く。

どれもシンプルでユニークなものばかり。アテンドスタッフさんのホスピタリティと豊かな表現力にも魅了され、楽しみながら進んでいく。

なかには参加者同士でチームを組んで挑戦するゲームなども。
初対面同士がいきなりアイコンタクトやボディランゲージで意思疎通させるのは、日本人にとってはなかなかハードルの高い作業だ。

最初は照れや戸惑いもあったが、体験を重ねるうちに、少しずつではあるが自然に目をあわせ、手を動かせるようになってくる。
ここで初めて身についたというよりは、自分のなかに眠っていた“喋る”以外の表現方法が、解放されていくような感覚に近い。

音のない世界での対話は、静かな衝撃の連続。知らず知らずのうちにサボってしまっていた、表情やジェスチャーの大切さに気づかされる約90分間の体験だった。

「ゲストの表現力を引き出すことで、最初は不安そうな表情が徐々にほぐれていくのを見ると、とても嬉しくやりがいを感じます」と語ってくれたのは、今回案内をしてくれたアテンドスタッフのにゃんこさん。
また、表情やジェスチャーが必要なのは、決して聴覚障害者との交流の場面だけではないという。
「今は皆さんマスク必須で、耳が聞こえる方でも、コミュニケーションが取りづらいと感じる人が多いと思います。だからこそマスクの外側の目や眉、手の動きでも対話ができることを伝えたいです。優しく笑顔で目をあわせ、身振りや表情でコミュニケーションできる人が増えて、外国人も私のように耳が聞こえない人も、当たり前に生きやすい社会になってほしいです」

広報の脇本さんには、施設がオープンした経緯を聞いた。
「建物のバリアフリー化などハード面の整備は進んでも、日本では障害者と日常的に出会う機会は少ないと思います。しかし、視覚・聴覚障害者が多く働くこの施設周辺では、自然に声をかけてくれる人や、目を合わせて手話で挨拶をしてくれる人が増えてきました。あえて都市空間で開催することで街全体が優しくなる。人と人とのより豊かで優しいコミュニケーションを、ここ竹芝の地から見出していければと思っています」
また展示内容については「真面目なトーンにしすぎないことで、より広がりができると思っています。家族や恋人と非日常の空間で、お互いの関係性を見つめたい時に、楽しみながら体験していただけると嬉しいです」と話してくれた。

施設内にはミュージアムショップもあり、他にはないオリジナルアイテムを販売している。
触感タオルは、視覚障害者のスタッフと今治のタオルメーカーの共同開発商品。視覚に障害があるからこそ培われた鋭い感性によって、厚みや触り心地など、細部にまでこだわったタオルだ。
対話から生まれた、この施設ならではのプロダクトの数々もチェックしてほしい。

エンターテイメント性の高い展示で“障害者の方と接するのは難しい”という固定観念から解放されるダイアログ・ミュージアム「対話の森(R)」。デートで、友人同士で、気軽に訪れたい場所だ。

文:日笠麗奈
撮影:南方篤

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