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オンラインとリアルでの映画祭開催、それぞれの課題やメリットを映画祭主催者と考える【映画祭座談会・後編】

  • 2020.10.2
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映画を観る楽しさや、新たな才能を発見する喜びを共有できる“映画祭”。新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、各映画祭も開催にあたってあらゆる変化を求められることとなった。そんななか、ぴあフィルムフェスティバル(PFF)は、会場に観客を迎える“リアル”と“オンライン”のどちらも活用する形で開催。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭はオンライン開催、東京国際映画祭は基本的にリアルでの開催を決定。様々にアイデアをしぼり、映画祭を実施する。そこでMOVIE WALKER PRESSでは、ぴあフィルムフェスティバルディレクターの荒木啓子、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭プログラミングディレクターの長谷川敏行、東京国際映画祭プロモーショングループ グループマネージャーの菊地裕介による、映画祭座談会を敢行。後編では、オンラインとリアル、それぞれの課題やメリットについて語り合ってもらった。

【写真を見る】コロナ渦での開催…それぞれの映画祭主催者たちがいまの気持ちを語り合う

「作り手にも、“スクリーンでお客様と一緒に映画を観る”という体験をしてほしい」(荒木)

ーー第42回ぴあフィルムフェスティバル (9月12日〜26日開催)は、会場に観客を迎えた形で開幕しました。リアル開催を目指した想いを教えてください。

26日まで国立映画アーカイブで開催されたぴあフィルムフェスティバル
26日まで国立映画アーカイブで開催されたぴあフィルムフェスティバル

荒木「もし感染者が出た場合、そこで映画祭を止めなければならない。その心配やリスクを抱えながら開催をするというストレスは、実は根深く、私たちのなかに残っています。とにかくスタッフ一丸となって、徹底的に対策をして、お客様を迎えたいと思っています。オンラインのみでの開催にした方が、精神的には楽かもしれません。対策には経費もかかりますから、普通に考えたら、(リアルで)やらないほうが賢いのかもしれない。それでも私たちは、お客様を迎えた形で開催をしたかった。作り手にも、“スクリーンでお客様と一緒に映画を観る”という体験をしてほしいんです。とはいえ、オンラインで開催して成功をした映画祭もたくさんありますので、オンライン開催を否定する気はまったくありません。PFFの役割として、“スクリーンで上映する”という決断をしたということ。どちらがいい、悪いということではないと思っています」

「オンラインでのQ&Aなど、観客と作り手がライブでつながれるような場を設けたい」(長谷川)

ーー第17回SKIPシティ国際Dシネマ映画祭(9月26日から10月4日開催)はオンラインでの開催となります。

【写真を見る】コロナ渦での開催…それぞれの映画祭主催者たちがいまの気持ちを語り合う
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長谷川「荒木さんがおっしゃったように、“映画はスクリーンで”という気持ちはもちろん持っています。特に我々のホールは高画質での上映ができる条件が揃っていますので、お客様だけでなく、監督たちにも、その環境で映画を体験してほしい。いまでも、環境が整えばリアルで開催したかったという気持ちもあります。映画祭で特に重要なのは、クリエイターや審査員、観客との交流の機会があるということ。オンラインでの開催を決断するにあたって、それができなくなるのではという葛藤もありました。ですので、オンラインでのQ&Aなど、観客と作り手がライブでつながれるような場を設けたいと思っています。」

「今年は、“映画本編は映画館でご覧いただく”をある種のメッセージとして掲げていきたい」(菊地)

ーー第33回東京国際映画祭(10月31日〜11月9日開催)は、リアルでの開催となります。オンラインを活用する予定はありますか?

10月31日(土)~11月9日(月)まで六本木ヒルズエリアを中心に開催される東京国際映画祭
10月31日(土)~11月9日(月)まで六本木ヒルズエリアを中心に開催される東京国際映画祭

菊地「東京国際映画祭の考え方としては、映画本編に関しては、オンラインでは一切ご覧いただけないということ。“映画本編は映画館でご覧いただく”ことを前提に、また今年は、それをある種のメッセージとして掲げていきたいと思っています。ただコロナ以降の世界では、配信ストリーミングが日常に溶け込んできていますので、それは決して無視することはできません。オンラインには海外とも簡単につなぐことができるメリットがありますので、Q&Aやティーチインなどにおいては、どんどん活用していきたいと思っています。劇場だとキャパシティの問題がありますが、オンラインだとたくさんの方に届けられるという利点もありますので、うまく使い分けて、実施していきたいと思っています」

コロナ渦での開催…映画祭にかける熱い想いを主催者たちが告白!
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「オンラインの場合、やはりどこからもアクセスできるというのはとても大きなメリット」(長谷川)

ーーぴあフィルムフェスティバルは入選作品17本をはじめ、いくつかのプログラムをオンラインで配信。リアル、オンラインのどちらでも楽しめるハイブリッドの映画祭となります。

荒木「そうなんです。コンペティションはすべてオンラインで観ることができます。招待作品や、この映画祭でしか観られないロイ・アンダーソン監督特集も観られますよ。私は、上映作品をなんとか全国に届けたいと思っていて。全国に映画を届けることって、本当に大変なんです。だからこそPFFでは、オンラインとリアルでの両方の車輪で進もうということを、何年も前から決めていました。いまやらなければと思ったことを、少しずつ、実現してきたんです」

長谷川「PFFさんはすでにオンラインでの上映を行なっていらっしゃって、オンラインのよいところも知ったうえで、リアルでの上映も行うという判断をされた。すばらしいなと思います。我々はこれまで一切、オンラインには踏み込んできませんでしたので、今年はその苦しみを感じました。世界とつないでコンペの審査会を行いますので、どうなるのかと不安もありますが、同時に楽しみでもあります」

ーー皆さん、オンラインも活用されるとのことですが、メリットに感じているのはどのようなことでしょうか。

長谷川「オンラインの場合、やはりどこからもアクセスできるというのはとても大きなメリットです。(毎年、埼玉県で実施される)SKIPシティ国際Dシネマ映画祭は、駅から会場までバスを利用していただくなど、立地的な条件もありますので、興味はあったけれど、これまでなかなか来られなかったという方もいらっしゃると思います。そういった方々が作品を観ていただける機会になればと、期待しています」

荒木「マーケットに関しても、たくさんのチャンスが生まれていると思います。いままで現地に行く予算のなかったプロダクションや、インディペンデント系の関係者たちが、映画祭のマーケットに参加できるようになったという話も、実際に聞いています。世界中で映画産業が衰退しているなか、若い世代が入ってきて、映画界が活性化される。そのいいチャンスになるのではないでしょうか」

菊地「東京国際映画祭と併催される、TIFFCOMというマーケットがあるのですが、そちらはすべてオンラインで実施することになりました。荒木さんがおっしゃっていたように、敷居が低くなって、たくさんの方がマーケットに参加できるようになるのではと思っています。もちろん、直接会って交渉する楽しさには代えがたいものがありますが、実際に商談できる数は、リアルよりも確実に増える気がしています」

「人と人との化学反応で生まれるものって、とても大事なものですよね」(荒木)

ーー変化や変更を求められるなかで、新たな可能性が見えてきたこともありますか?

荒木「やはりいま実感しているのは、見知らぬ人や、憧れの人に、自分のつくった作品を観てもらって、それに対しての反応をもらうなど、直に対話をすることに代わるものは、見つからないということ。人と人との化学反応で生まれるものって、とても大事なものですよね。PFFでは監督と俳優とで、映画のクリエイションについて深く話すことを推進していますので、そういった生のトークも充実しています。ぜひこれらもお楽しみいただきたいと思っています。ただそんな状況のなか、PFFの今年の入選作で、4人の制作メンバーがリアルでは一度も会わずに制作した『LUGINSKY』という作品があります。メールでやり取りをして完成させたそうです。こういったタイムリーな作品が出てきたことには、ちょっと感動しましたね。映画界にもいろいろなことが起きています。今年の映画祭も、なにが起きるのか楽しみです」

菊地「オンラインでやるのか、リアルで行うかなど、お客様、そしてクリエイターにとっても選択肢が増えたと捉え、柔軟に対応していきたいなと思っています。東京国際映画祭は、“映画の未来を創造する”こともビジョンの一つとして掲げています。そのなかで、中学生を対象にした『TIFFティーンズ映画教室』という企画も行っています。映画監督を講師に招いて、夏休み中にワークショップのような形で実際の映画づくりを体験してもらうんです。これまでは中学生に東京都内に集まってもらって実施していたのですが、今年はそれが難しい状況になりましたので、すべてオンラインでやるという史上初の試みにチャレンジしています。講師は、『きみの鳥はうたえる』の三宅唱監督。オンラインで集まった中学生たちが、どのような作品をつくるのか。僕自身、とても楽しみにしています」

長谷川「オンライン開催もやってみて、どうなるのか。新しい試みとなりますが、やってみて見えてくるものがあると思います。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭は毎年、地域の方々が参加してくださる映画祭でもあって。地元の方からお電話で、今年の開催状況についてのお問い合わせがあったりするので、きちんと地元の方々にも情報を発信していく必要性を感じています。今回、オンラインで参加してくださって『オンラインも観やすいな』と思っていただけたら、そういったご意見も来年以降の参考にさせていただきたい。また今年はコンペに特化して開催することになりましたので、お客様には当映画祭のコンペの特色をぜひ楽しんでいただけるとうれしいですね。国内外から長編3作目までの監督を対象にコンペ作品を募っていますが、そうすると、日本の若手監督の作品と、著名な俳優の出演するヨーロッパの予算のかかった作品が、同じ土俵でコンペにかかるという状況も起きるわけで。その点も、おもしろいのではないかと思っています」

取材・文/成田おり枝

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