1. トップ
  2. ライフスタイル
  3. ネガティビティバイアスとは?脳が減点法で人を判断してしまう原理を日常例で解説

ネガティビティバイアスとは?脳が減点法で人を判断してしまう原理を日常例で解説

  • 2020.10.2
  • 17736 views
ネガティビティバイアス
Credit: depositphotos

「SNSの投稿に100いいねがついても、1つの辛辣なコメントが気になって落ち込んでしまう」

「自分を大切にしてくれる優しい恋人だけど、汚い言葉使いやマナーの悪さなど欠点ばかりに目がいってしまう」

このように、ネガティブな情報ばかり頭に強く残ってしまう経験はありませんか? この心理傾向を心理学の用語で「ネガティビティバイアス」と言います。

ネガティビティバイアスとは

人間の脳はネガティブな情報を敏感に察知し、記憶に長く残す働きがあります。これが「ネガティビティバイアス(Negativity Bias)」です。

いやなことばかり思い出して、夜な夜な思い悩んだことのある人も多いでしょう。人によっては何ヶ月、何年と引きずることもあります。

しかしそれも仕方のないことです。脳は、そもそもポジティブな経験に比べてネガティブな経験を詳細に刻み、ネガティブな刺激にも瞬時に反応する仕組みになっているのです。

シカゴ大学で行われたネガティビティバイアスに関する研究でも、脳はネガティブな情報により強い刺激を感じることがわかっています。実験では、まず被験者のグループにポジティブ、中立、ネガティブな写真を見せました。ポジティブな写真は高級車やピザ、中立な写真は家電やお皿、ネガティブな写真は動物の死体やケガの様子です。その結果、被験者の脳は、ポジティブや中立な写真よりも、ネガティブな写真を見た時により強い刺激を感じたのです。

ネガティビティバイアスはなんのためにあるの?

脳の仕組みとして、人間はネガティブな情報に強く反応することがわかりました。しかし、一体なんのためにネガティビティバイスはあるのでしょうか?

この脳の機能は、もとは人類が災害や事故などの危険から身を守る役割を果たしてきました。自分の身に危険が及ぶようなものに特に敏感になり、それらを記憶に長く留めて回避できるように脳が発達したのです。

その結果、人間はネガティブな情報をより早く認識するようになりました。たとえば、食べ物を口に入れて変な味や匂いがしたりすると、すぐ反応するというのが一例に挙げられます。

ネガティビティバイアスは人間関係を悪化させやすい

その昔、脅威を回避し自分の身を守る上で、ネガティビティバイスは重要な機能でした。

現代でも、傷んだ食べ物を気にせず食べてお腹を壊す、攻撃的な人と一緒にいて心を病んでいく、といった危険を避けるために建設的に機能する場合がありますが、一方で破壊的な影響をもたらすこともあります。

その一例が人間関係です。

人間関係にネガティビティバイアスがかかると、他人の嫌な部分ばかりが目について減点法で人を判断するようになったり、以前に人から裏切られたり騙されたり傷つけられた経験がある人は、深い関係を築くことをやめたり、新しく出会った人のことを信用できなくなったりしてしまいます。

その結果、良好な人間関係が築けず、悪化しやすくなってしまうのです。

また、上司と部下という仕事の関係においても、ネガティビティバイアスは影響を与えます。部下を教育する上で、上司は「叱る」「褒める」というコミュニケーションを使います。

どちらも重要ですが、「叱る」という行為は「あなたの言動は間違っている」というメッセージであり、部下からするとネガティブな情報となります。

たとえ褒められることがあっても、ネガティビティバイアスによって叱られたことの方が、長く強く鮮明に記憶されることが考えられるのです。

ある研究では、アメとムチどちらを使っても、部下の会社への献身的な働きは変わらないことがわかっています。それであれば、「叱る」よりも「褒める」の比率を高くした方が、上司部下どちらもより気持ちよく仕事ができるのかもしれません。

減点法で人を見てしまいそうな時の解決策

先述したように、ネガティビティバイアスによって、他人の嫌なところばかりが気になり、中には減点法で人を見てしまう人もいます。

減点法で人を見ていると、その人のことがだんだんと嫌いになり、両者の関係性が悪くなってしまいます。

そんな時は、まず自分が減点法で人を見ている=採点する側になっていることを認識します。採点するということは、すでに二人は対等の関係ではありません。

友人、恋人、配偶者など、対等でいたい関係であれば、そういう見方をしていることを客観的に認識し、改める必要があるでしょう。

また、相手に求める具体的な基準を考えておくのも効果的です。それ以外のポイントを妥協できるようになるので、減点する必要がなくなるからです。

たとえば、「どんなに良い人でも、腹を割って話せない人は嫌」「”ありがとう”と”ごめんなさい”が言えない人とは仲良くなれない」など、「これだけは絶対に譲れない条件」を、一度深く考えてみましょう。

ネガティビティバイアスを自覚することが大切

今回は、ネガティビティバイアスの概要と、ネガティビティバイアスによる人間関係への影響について、詳しく解説しました。

ネガティビティバイアスは、危険を回避できるというメリットもありますが、ネガティブな出来事がずっと頭に残って悩み続けてしまう、人間関係を悪化させてしまうというデメリットになる側面もあります。

ただ、「人間にはネガティビティバイアスという脳の働きがある」ということを知っておくだけで、今の自分の状態や状況を客観的に見て、少しでも楽になるように行動できたり、人の良いところを見ようと意識することができるはずです。

「ネガティブに頭が支配されているなぁ」と感じたら、ぜひ試してみてくださいね。

元記事で読む
の記事をもっとみる