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出産機に専業主婦、39歳女性が「夫は外、私は家」を喜んで受け入れる理由

  • 2020.9.29
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夫婦の家事分担の在り方は?
夫婦の家事分担の在り方は?

亭主関白が当たり前だった昭和の時代から、平成、令和ときて、夫婦間の家事育児の負担割合に対する考え方は確実に変わってきています。背景として、共働き世帯の増加や女性の社会的地位の向上といった要因が考えられますが、この過渡期において、アラフォー世代は実際、家事育児をどのように分担し、それをどのように考えているのでしょうか。いくつかのケースを見てみたいと思います。

「夫は仕事」「妻は家事」に双方納得

Aさん(39歳)は第1子出産を機に退職し、専業主婦となりました。現在、7歳と4歳の子どもがいます。夫はAさんと同い年で、共働きをしていた(子どもがいなかった)頃、家事は仕事の忙しさにかかわらず、完全に分担して行っていたそうです。

子どもができてからは、家事育児をAさんがほぼ全て負担するようになりました。しかし、Aさんがそれをストレスに感じることはないようです。これには理由があります。

「家事育児の細かな分担はなくなりましたが、専業主婦になって、『夫は外で稼いでくる、私は家を守る』という大きな分担に変わり、まず、それについて夫婦ともに納得してやっています。

私が不満を感じない一番大きな理由は、夫がこちらの家事育児を気遣い、時間を見つけては手伝う姿勢を見せてくれるからです。『俺は外で稼いでいるんだから、その間、そっちは家を守り、仕事で疲れた俺をいたわるのが当たり前』という態度だったら、私は確実に反発していたと思います。

夫は、私が何か家事をこなすといちいちお礼を言ってくれるので、私も夫に対して『お仕事お疲れさま』という気持ちでいられます」(Aさん)

童話「北風と太陽」を思い起こさせるアプローチです。「いたわれ!」と迫るのではなく、こちらからいたわることで、向こうからのいたわりを引き出しているという理想的な夫婦関係が構築されているようです。

Aさん夫婦は、形式こそ昭和の主流であった片働き(専業主婦)世帯ですが、夫が妻に家事育児を当然のものとして押し付けていないところに、新しい時代のにおいを感じさせます。

「亭主関白気味」も違和感なし

Bさん(37歳)世帯は共働きで、夫は亭主関白気味です。

「夫は家事をほとんどやろうとしないのですが、正確には『ほとんどできない』といっていいかもしれません。独身の頃から、夫の暮らしぶりを知っていますが、当時から、掃除や洗濯ができない人で、私が一緒に暮らすようになってからは夫に代わってそれをこなしていました。

子どもが生まれてからは夫も育児に参加するようになりましたが、仕事で忙しくしているので戦力としてはあまり期待していません(笑)たまに、『次の休日は自分が一日面倒を見る』と言ってくれることがあって、すごくありがたく思っています。育児をするようになっても家事は相変わらずですが、時間があるときは子どもを連れて買い物に行ってくれるようにはなりました。

家事をする旦那さんの話を周りから聞くと、うらやましく思うときもありますが、うちの父が典型的な亭主関白で、母はそれを支える妻だったので(家事のほとんどを担っている)自分の境遇にはあまり違和感がありません」(Bさん)

共働きではありながら、家事を全面的に担っているBさんですが、その点については「夫の方が仕事が忙しい」と考え、自分の中で折り合いをつけているそうです。

出産きっかけに家事分担

1年の同居期間を経て、結婚したCさん(37歳)は夫と共働きで、家事を完全に分担していました。ただ、確かに“分担”ではあるのですが、“分担”が指す一般的な意味とは少し趣が違います。

「2人とも仕事で疲れていて、平日は自宅がシャワーを浴びて寝るだけの施設になっていました。食事も各自好きに取り、もちろん、部屋の掃除をする余裕もありません。同居する前から、『家事は分担しよう』と話していましたが結局、2人とも全く家事をしないので、ある意味すごく平等で『これも分担の一つの形だ』と開き直っていました。

休日に2人で過ごすことになると、お互いに相手が『掃除をしなくちゃ』と言いだすのではないかとビクビクして、落ち着きませんでした(笑)掃除をしなければいけないことは分かっているのですが、いざするのは面倒くさいので、子どもができるまで、掃除をする習慣がありませんでした」(Cさん)

妊娠したCさんは産休を取りましたが、幸い、つわりがそこまでひどくなかったので、自宅で暇と元気を持て余しました。そこで、いよいよ部屋の掃除に着手します。いったん始めてしまうとすっかりのめり込み、1週間で部屋は見違えるほどきれいになりました。

「夫は『別の人の家みたいだ』と喜んでいました。時間があったから掃除したというのもありますが、やはり、生まれてくる子どもにあの汚い部屋はさすがにかわいそうだろうと思い…」

一度、きれいになった部屋に慣れると、今度は汚れや散らかっている状態が許せなくなってきたとCさんは話します。

「私がすっかり、まめに掃除や片付けをするようになると、私にばかりやらせている罪悪感が夫に芽生えてきたようで、夫も家事に積極的になりました。しかし、夫が家事をやると、『仕事をしているのに家事もやらせるなんて…』と私の方に罪悪感が出てきて、競い合うように家事をやるようになりました。

出産してからは育児がかなり大変だったので、家事を適宜手抜きする一方、夫は仕事を早めに切り上げて家のことを手伝ってくれました。2人とも家事を全くしなかったあの頃が遠い昔のようです」

一時期、Cさん夫妻が家事をしなかったのもどちらかが始めなかったから、つまり、片方が始めていたら、2人ともやるようになっていたかもしれないと考えられます。よくも悪くも影響し合う2人のようです。

総務省の「2016年社会生活基本調査」を見ると、夫の家事育児負担割合は微増傾向にあるので、亭主関白的立ち振る舞いの夫もそれにつれて減少している傾向にあると推測されます。

ここ数年のことですが、「(夫が)育児を手伝う」「イクメン」といった言い回し・言葉が疑問視される流れが出てきました。「夫が育児をするのは当然だ」という考えが背景にあります。世論の後押しを得て、新しい価値観はさらに浸透していくことでしょう。

夫婦のありようは千差万別で、正解があるわけではありません。“夫婦で家事を分担”というこの令和のトレンドをヒントや足掛かりにしながら、2人にとって最適な形を模索していけば、その人たちなりの理想の夫婦像に近づくことができるかもしれません。

フリーライター 武藤弘樹

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