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仕事の生産性を劇的に高める「To Stopリスト」の作り方とは

  • 2020.9.19
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「仕事の生産性は、足し算ではなく引き算で決まる。」とクレディセゾン常務執行役員CTOの小野和俊さんは言います。より高い生産性と成果が求められるからこそ、時代の変化に合わせた仕事のアップデート方法を教えてもらいます。

※本稿は小野和俊『その仕事、全部やめてみよう――1%の本質をつかむ「シンプルな考え方」』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。

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※写真はイメージです(写真=iStock.com/MarkPapas)
人生の可能性を極大化させる「繰り返しの力」

プログラマーの仕事には「パフォーマンスチューニング」がある。これは、ソフトウェアの動作が遅くなる原因を調査し、課題をとり除いていく作業だ。

このパフォーマンスチューニングにとり組むとき、真っ先に注目しなければならないのが「繰り返し処理」だ。

例えば、Excelのシートやデータベースのテーブルのような表形式のデータを1件ずつ処理していく場合で考えてみよう。

縦の行数と横の列数とのかけ算の回数分繰り返し処理が行われる。仮にこの件数が縦に10万行、横に10列だとすると計100万回の処理が行われる。この100万回の「繰り返し処理」をたった1ミリ秒(1000分の1秒)でも速くできれば、全体の処理時間は16分も短くなる。

こうした「繰り返しの力」を日々目の当たりにしている私たちプログラマーからすると、人生はパフォーマンスチューニングの余地に満ち溢れているように見える。

人生の「繰り返し処理」は、効率化だけではなく、その人がその人らしく生きていく可能性を極大化するポテンシャルを秘めている。

毎日の「繰り返し」を効率化するには

人生における「繰り返し処理」とはいったい何か。月次のもの、週次のもの、日次のものがあるが、まずは日次を分解してみよう。

小野和俊『その仕事、全部やめてみよう――1%の本質をつかむ「シンプルな考え方」』(ダイヤモンド社)
小野和俊『その仕事、全部やめてみよう――1%の本質をつかむ「シンプルな考え方」』(ダイヤモンド社)

例えば電車やバスで会社に通勤している人であれば、往路と復路とで1日2回の繰り返し処理がある。食事だって1日に3回ある。休憩をとることやトイレに立ち上がることも繰り返し処理だ。

さらに、より高頻度のものとして、日本語の漢字変換がある。取引先や同僚の名前ですぐに変換できないものがあると厄介だ。毎回別の単語を入れ、一部分を消してまた別の単語を入れて……などの作業を毎回やるのは非効率極まりない。いますぐ、その人の名前を辞書登録したほうがいい。

「いつもお世話になっております」「お疲れさまです」「以上、よろしくお願いいたします」といった定型文も短い言葉で変換できるように辞書登録しておこう。作業の手間を大幅に削減できる。

パソコンのスペックがあまりよくなく、待ち時間が頻繁に発生してはいないだろうか。「待ち時間×待った回数分」で考えれば、かなりのロスだ。すぐにパソコンを新調しよう。マウスやキーボードのコードが絡まってそれをしょっちゅう直しているなら、ワイヤレスマウスやワイヤレスキーボードの導入を検討しよう。

毎日の通勤時間が片道1時間かかるなら、その時間を「自分が興味を持っていること」の勉強に充てよう。月に20日出勤するとすれば、年間480時間になる。それだけの時間があれば、その人なりのユニークな知識が身につくはずだ。

マイナス効果に要注意!

繰り返し回数が多ければ多いほど、かけ算の効果がある。裏返して言うと、繰り返し回数の多い処理が少し遅くなるだけで、かけ算分のマイナス効果があるのだ。

転職したとき、PC環境やメーラー・スケジュールソフトが変わって、「生産性が落ちた」と感じたことはないだろうか。セキュリティーが強すぎて、何かするたびに8桁以上のパスワードを毎回入力しなければならず、効率が悪い。そんな話もよく聞く。

IT部門にこの不便さを訴え、「そんなに困りますか?」とキョトンとされたら、彼らは「繰り返しの力」を認識していないことになる。Slackのようなコミュニケーションツールの使い勝手が重要なのは、「繰り返し」の回数が極端に多いからだ。

攻略すべきは「繰り返し処理」である。

効率化も、非効率化も、「繰り返し処理」の扱い方で決まるのだ。

「To Doリスト」ではなく「To Stopリスト」を作ろう!

日々の仕事や生活の中で「やること」を忘れないようTo Doリストをつけている人は多い。だが「やめること」はどうだろうか。日々のタスクを少しでも減らすことが、時間なりコストなり、何かを新しく始めるための余力を生み出す。

To Stopリストには「やるべきと思われているが、実は不要な仕事」が入る。いつ、どんなときに仕事を見直し、リストを作ればいいのだろうか。

To Stopリストを作る「3つのタイミング」
①何かを新しく始めるとき

何かを新しく始めれば、時間と労力が割かれる。To Stopリストを作る絶好の機会だ。何かをやめれば、必ず影響を受ける人が出てくる。「やめたらどんな影響があるか」を頭の中でシミュレーションしたうえで、思い切って関係者に聞いてみよう。

②忙しすぎて業務がまわらなくなってきているとき

忙しすぎるときこそ、その原因となっている「日々の業務」の見直しをすべきだ。だが忙しいときほど「そんな時間はない」というモードになりやすい。結果、忙しさからずっと抜け出せない状態になる。業務がまわらなくなってきているときこそTo Stopリストを作成するべきタイミングだ。

③非効率な仕事が増えてきているとき

もっと効率よくできそうなのに、ずっと見直せずにいる仕事はないだろうか。あるいは、何年も前に確立された仕事がずっとそのまま続いている場合も、To Stopリストを作り、業務を整理するタイミングにあると言えるだろう。

では、具体的に何をやめるべきか。例えば次のようなものだ。

To Stopリストに加える「5つのこと」
①定例会議

定例会議の必要性や頻度を見直そう。試しにやめてみて、特に支障がない会議は大幅に頻度を落とす、もしくは完全にやめてしまおう。

②引き継がれた業務

引き継ぎを受けた業務で、いままでのやり方をずっと踏襲していたものについては、今後もそのままでいいのかどうかを見直そう。

③手作業のデータ集計・資料作成業務

日次、週次、月次でデータ集計して関係部署や上長に報告している内容の中に、実はさほど必要なかったものはないだろうか。また、実は自動化する手立てがあり、手作業でやらずに済むものはないだろうか。

④社内向けに提供しているシステムやサービスで利用者の少ないもの

使っている人がいる限りなかなかやめにくいものだ。だが、利用者が少ないのであれば、時間とコストをかけて続けていくのかを検討すべきだ。

⑤事故の再発防止策を重ねた結果、慎重になりすぎている仕事

事故が何度か続くと、「原因究明のうえで再発防止策を講じるべし」となり、慎重に慎重を重ねて過剰なまでにチェックを行うルールになりがちだ。もちろん事故は防ぐべきだが、こうした種類のルールも見直しの対象になる。

仕事だけではなく私生活でもTo Stopリストは活躍する。なんとなくダラダラ続けて時間やお金を使ってしまっていることはないだろうか。試しに一度やめてみよう。大きな問題がなければ、やめることを習慣化していこう。

写真=iStock.com

小野 和俊(おの・かずとし)
クレディセゾン常務執行役員CTO
1976年生まれ。小学4年生からプログラミングを開始。99年、大学卒業後、サン・マイクロシステムズに入社。研修後、米国本社にてJavaやXMLでの開発を経験する。2000年にベンチャー企業であるアプレッソの代表取締役に就任。エンジェル投資家から7億円の出資を得て、データ連携ソフト「DataSpider」を開発する。13年、「DataSpider」の代理店であり、データ連携ソフトを自社に持ちたいと考えていたセゾン情報システムズから資本業務提携の提案を受け、合意する。15年にセゾン情報システムズの取締役 CTOに就任。19年にクレディセゾンの取締役CTOとなり、20年3月より現職。「誰のための仕事かわからない、無駄な仕事」を「誰のどんな喜びに寄与するのかがわかる、意味のある仕事」に転換することをモットーにデジタル改革にとり組んでいる。

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