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知らず知らずのうちに「女性の昇進モチベーションを奪う」男性管理職の問題行動5つ

  • 2020.9.17
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内永ゆか子さんが率いるNPO法人J-Winが、各社の男性管理職を集めて実施するプログラム「男性ネットワーク」。その活動の中で、男性たちが、“女性のモチベーションを奪う男性集団の悪意なき言動”に気づき、行動変容を起こしていくプロセスとは。参加者の一人の変化を追った――。

若手の管理職社員のグループがオフィスでコミュニケーションをとっている
※写真はイメージです(写真=iStock.com/imtmphoto)
なぜ、ダイバーシティが進まないのか

「最初に内永さんに言われたことですか? いやー、衝撃すぎて……」

そう苦笑するのは、佐川急便人材戦略部働き方改革推進課の犬塚政彦さん(45歳)。営業畑から人事系の部署に異動したばかりの昨年(2019年)7月、NPO法人J-Winが主宰する1年間・月1回のプログラム「男性ネットワーク」に参加。その初日、異業種の大企業から集まった男性管理職たち19人は、まず内永ゆか子理事長の講義を受けたのだ。

「確か……『日本はダイバーシティ(多様性)という考え方が進んでいない』というお話をされたときだと思いますが、内永さんに指名されて『なぜだと思う?』ときかれ、『島国だから』とか『大陸と地続きじゃなくて外国人が身近にいないから』とか、何かこう……浅いことを口にしたんですよ」

即座に「ダイバーシティが進まない原因はこう」「その根拠はこう」……内永理事長から理路整然とした答えが返ってきて、月並みな回答をした犬塚さんは「恰好の餌食になった」という。「怒られたわけじゃないのですが、やっぱり見当違いがあったなあと」(犬塚さん、以下同)。

世界中の企業は今、生き残りをかけてその構成員の人種・性別・国籍・宗教等々の違い=多様性(ダイバーシティ)を組織内でのイノベーション喚起に生かそうと躍起になっている。それが遅々として進まぬ日本企業を相手に、J-Winは過去13年、ダイバーシティのマネジメント推進を支援してきた。

女性のモチベーションを奪う男性集団の悪意なき言動

日本企業が進めるべきダイバーシティの中でも最もハードルが低いと思われるのが、マジョリティの男性社員とは性別以外はほぼ同じ、女性社員の活用である。しかし、それすら阻む元凶となっているのが「オールド・ボーイズ・ネットワーク」。“マイノリティ”である女性社員のモチベーションを奪ってきた、男性集団の悪意なき言動やその文化全般を指す。

犬塚政彦さん(写真提供=佐川急便)
犬塚政彦さん(写真提供=佐川急便)

あちこちの異なる業種の企業からこのプログラムに参加した犬塚さんら管理職の面々は、この「オールド・ボーイズ・ネットワーク」に気づき、我が事として受け止めたうえで、自社内でその対応策を講じるというミッションを負っていた。

オールド・ボーイズ・ネットワークという名称を初めて聞き「なんだそれは?」と思ったという犬塚さん、「最初の感覚では、腹落ちはしませんでしたが、なんとなく理解はしました」という。

ミッションを同じくした同世代の男性管理職が集結

月1回集まる分科会では、メンバー7人が毎回自分たちでテーマを決め、議論を進めながら対策を出していく。「テーマは、例えば女性活躍を阻害する管理職の行動意識が何からくるのか、バイアスがどのように働くのかなど。積極的に話をしました」。

メンバーの所属企業は、印刷、外資系生保、化学、通信、精密機械、電子機器と業種は本当にバラバラだが、共通のミッションを持つ同世代の管理職ということもあって、すぐに打ち解け、仲間意識が生まれたという。

衝撃的だったのは、J-Winの女性メンバー185人を対象としたアンケート結果。女性社員が日々感じている(いた)モチベーションの低減・職務遂行上の弊害となりうる「男性管理職が無意識に行っている職場での行動や考え方」を、各人3個程度ずつ記したものだ。いわく「自分の思考・行動特性を押し付ける」「上司に忖度する」「責任ある仕事は男性に任せる」……。

「厳しいなあというのは感じましたよね。思った以上に。クーラーの温度上げてほしいとか、ご飯食べるのが早すぎるとか。歩くのが早いよね、といったことまで含めて……何でしょう……そういうことも気をつけたほうがいいんだなと。衝撃を受けました」

男性が阻害行動を起こす要因5つ

このアンケートをもとに、分科会チームはそうした阻害行動を起こす要因として、①自己防衛心 ②男性の被害者意識 ③マイノリティ排除 ④自分至上主義 ⑤引き継がれるオールド・ボーイズ・ネットワークの5つを上げた。

「私に“刺さった”のは②で、男性には女性をひと括りにして考えるところがあったんじゃないか。つまり、うまくコミュニケーションが取れないために、決めつけで行動する管理職がいるんじゃないかと気づいたんです。例えば、無意識のうちに『女性は守るべきもの』と過剰に保護することで、かえって女性のモチベーションを下げてしまい、揚げ句に『女性はいいよな』という方向に意識が動いてしまう」

そこで思考が止まったまま、その女性たちを生かそうとは考えない男性管理職がほとんどだ。このアンケートの回答者たちは、その思考停止も見抜いて回答していたのではないかと犬塚さんは指摘する。

「ここに自分たちがしっかり気づいて、良い方向に向かわないといけないと思いました」

男性管理職向け「言動チェックリスト」を作成

こうした分析をもとに、犬塚さんらは男性管理職向けに自らの言動に関するチェックリストを作成した。例えば「女性に対するアンコンシャス・バイアス」や「コミュニケーション不足」に関して5項目ずつある質問に回答し0~3点の点数をつけていくと、本人の「忖度傾向」「男女差別」「対話の偏り」などがレーダーチャートで「見える化」されるしくみ。そしてその結果次第で“処方箋”を出す。

「“処方箋”はどういう活動をするかというアドバイスです。女性に対して1歩踏み出せない人には1on1(1対1のミーティング)をやるとか、男女がバランスよく入った座談会を自分が座長となって開く、といった処方箋が出ます」

これらを各社で展開する予定だったが、コロナ禍でメンバーが直接会えず、オンラインでの活動にまだ慣れていないため、残念ながら実行の段階には至っていないという。

昇進して社会や会社を変えたい女性はたくさんいる

内永理事長から、「メンバーの中で、最も大きく意識が変わった人」と評される犬塚さん。仲間と会話をしていく中で、少しずつ多様性の大切さに気付いていったという。

「職場に戻って日々の業務をこなしていると、分科会で議論したことをつい忘れがちになります。でも、翌月また仲間に会うことで、前回会って話したことが役に立ったか? とか、目的を見つめ直すことができた。それを重ねるうちに、少しずつ気持ちが変わっていったのかなという気がします」

活躍したい、昇進してもっともっと高い役職に就いて、社会や会社をよくしていきたい、自分の生活を豊かにしていきたいという女性がたくさんいることに気づきなよ、ということをJ-Winで学んだ、と犬塚さんは言う。

「部下とは男女関係なく、定期的に1on1をやっています。仕事の話というより、『先々どうしたい?』という未来の話をするようにしています。そうやって話をしていくと、こちらから聞かなくても自分の課題や悩みを言ってくれるようになる。質問で引きだすという事ではなくて、回を重ねていくと、素直にこちらと向き合ってくれるようになります」

部下が心を開く。これは大きな変化だろう。7月に始まった分科会だが、約半年を経た11月か12月頃から、「自分の半径1~2メートルの職場の雰囲気が変わったなと感じたという犬塚さん。「オールド・ボーイズ・ネットワークをぶっ壊す!」と意気が上がる。

「まだまだ威張って言えるほどのことではないですが、今よりもっと働きやすい職場を実現したいと思っていますし、今は多様性の大切さが腹落ちしたので、進めていきたいなと。総合物流企業なので、女性だけじゃなくて、すべての従業員に働きがいを持ってほしいと思っています」

写真=iStock.com

西川 修一(にしかわ・しゅういち)
プレジデント編集部
1966年、神奈川県生まれ。中央大学法学部卒業。生命保険会社勤務、週刊誌・業界紙記者を経てプレジデント編集部に。

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