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ランナーズハイを経験するには?

  • 2020.9.14
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得られるときもあれば、得られないときもあるけれど、いつも、もっと欲しいことに変わりはない。それがランナーズハイ。運よく得られれば、走るのが楽になって心がウキウキするどころか、ほろ酔い気分になれてしまう。

つい最近、とある研究チームがランニングに対する脳の反応を調べたところ、走りながら“ハイ”になる能力は誰にでも備わっていることが分かった。これは、私たちの祖先にとって、食糧(獲物)を追いかける能力が生死に関わったことに由来する。その内容をランナーズワールドからご紹介。

米アリゾナ大学人類学准教授のデイヴィッド・A・ライクレン博士によると、私たちの祖先が生きるために必要なスピードで必要な距離を走ることができたのは、脳内で幸福ホルモンが分泌されていたから。ランナーズハイは昔もいまも天然の鎮痛剤として働き、脚の疲れや靴ずれの痛みを和らげてくれている。

現代人に獲物を追う必要はないけれど、幸福ホルモンが分泌される仕組みを知れば、ランナーズハイがもっと頻繁に得られるかもしれない。

トリガー:エンドルフィン

天然の鎮静剤であるエンドルフィンは、医療用のモルヒネと同じような働きをする。ランナーはエンドルフィンによる幸福感を何十年も感じてきた。でも、この幸福感の源が特定されたのは、2008年にドイツの研究チームが長距離を走るランナーの脳をスキャンして、前頭前野と辺縁系(愛などの感情によって活発化する脳の領域)からエンドルフィンが大量に分泌されていることを発見したとき。この脳の領域におけるエンドルフィンの分泌量が多ければ多いほど、ランナーの陶酔感は高かった。

ランナーズハイを経験するコツ:無理のない範囲で自分を追い込むこと。カルガリー大学ホチキス脳研究所(カナダ)の准教授、マシュー・ヒル博士によると、エンドルフィンは体が辛いときに分泌される鎮痛剤。でも、だからといって耐え難い苦しみを経験する必要はなく、無理のない範囲で体に負荷をかければいい(テンポランなどを使ってみよう)。

先のドイツの研究に参加したのは、10~11km/1時間のペースで2時間走り続けるのが楽でもなければ苦でもないベテランのランナーだった。「体を追い込むとエンドルフィンが分泌される人は多いですが、必ずしも全力を出す必要はありません」と話すのは、米ミネソタ州立大学スポーツパフォーマンス心理学センター長のシンドラ・S・カンフォフ博士。ちょっと走るくらいでは、エンドルフィンの大放出を引き起こすほどの身体的苦痛が生じない。その一方で、ペースや距離に無理があれば精神的に参ってしまう。パワフルではあるけれど、エンドルフィンにケガのリスクやトレーニング不足を帳消しにする力はない(だからランニングを始めたばかりの状態で陶酔感が得られることは滅多にない)。

グループで走るのも効果的。米オックスフォード大学の論文によると、集団で練習をしたボート選手は、単独で練習をしたボート選手よりもエンドルフィンの増加率が著しく高かった。1人で走るならヘッドフォンを装着しよう。好きな音楽を聴くことでエンドルフィンの分泌量が増加することもある。

トリガー:内在性カンナビノイド

エンドルフィンばかりに目が行きそうになるけれど、私たちの体は内在性カンナビノイドという物質も分泌する。内在性カンナビノイドは、天然のテトラヒドロカンナビノール(マリファナの陶酔感をもたらす化学物質)。ヒル博士によると、最も有名な内在性カンナビノイドのアナンドアミドは、平穏感をもたらしてくれる。エンドルフィンは特別なニューロンでしか作られない。でも、内在性カンナビノイドは体中の細胞で作られるものなので、エンドルフィンより大きな影響を脳に与える可能性がある。

ランナーズハイを経験するコツ:エンドルフィンは痛みに対して分泌されるけれど、内在性カンナビノイドはストレスに対して分泌される。でも、身体的なストレスとランニング中の体の痛みは酷似しているので、エンドルフィンの分泌を引き起こすメカニズム(ハードなワークアウト)が内在性カンナビノイドの分泌も引き起こすことがある。ライクレン博士によると、最大心拍数の70~85%(30歳なら1分あたり142~161回)で走れば、ストレスホルモンのコルチゾールが急増し、それに反応する形で内在性カンナビノイドが分泌される。

ヒル博士の論文によれば、軽度の精神的ストレスも内在性カンナビノイドの分泌量を増加させるので、レース前の緊張が役に立つこともある。でも、慢性的なストレスは逆効果。

米ウィスコンシン医科大学神経科学研究所長のセシリア・J・ヒラード博士は、内在性カンナビノイドの分泌量を最適化するためには1日8時間の睡眠が必要であることを突き止めた。ヒラード博士の研究結果は、起床時の内在性カンナビノイド量は就寝時の3倍多いことも示している。科学的な証拠はないけれど、午後や夜に走るより早朝に走った方がランナーズハイは得られやすいのかもしれない。目覚ましをセットして、実験してみる価値はある!

※この記事は、ランナーズワールドから翻訳されました。

Text: K Aleisha Fetters Translation: Ai Igamoto

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