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中学受験の初テストで「偏差値27」の衝撃! 塾では最後尾……「息子は優秀だと思っていた」母の焦燥

  • 2020.9.14
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“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

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写真ACからの写真

「中学受験あるある」の一つに、「我が子の模試の偏差値が思っていたより低くて、衝撃を受ける」というのがある。中学受験では、模試の結果が「偏差値30台」ということは、特に珍しくもないのだが、中学受験経験がない親にとっては“衝撃の数字”に見えてしまう。

偏差値は、テストを受けた集団の中で自分がどれくらいの位置にいるかを表す数値であると共に、その平均は「50」であるということを、親はこれまでの我が身の実体験で理解しているが、意外と「母集団の違い」には気が付かないものだ。

当然のことだが、偏差値はテストの規模、地域、時期、受験層によって大きく数値が異なるので、つまり異なるテストの偏差値というのは、一概に比較できないのである。

さらに言えば、誰もが受けるわけではない中学受験は母集団が少ない。その上、小学校でも成績の上位層が受験しているので、もともと“できる集団”の中での指標なのだ。

もちろん模試にもよるが、中学受験の偏差値50は、高校受験の偏差値60~65相当であると言われている。それゆえ、中学受験の偏差値は親が期待するよりも低く出がちになり、時に親の度肝を抜いてしまうことがあるのだ。

「偏差値72の間違いでは?」と思った母

大手企業に勤める総合職の裕子さん(仮名)も、一人息子である弦君(仮名)の“ファースト偏差値”に驚いた一人だ。

夫婦ともに地方出身者で、大学までオール公立で過ごしてきたという裕子さんいわく、「中学受験の“ち”の字もない地域で育った者」にとっては、先輩社員が口にする「中学受験」は、他人事であったそうだ。しかし、弦君が小学校に上がる頃から、だんだんと感化されるようになり「弦も中学受験をしたほうがいいのかな?」と思うようになったという。

裕子さんは受験当時を振り返りながら自嘲気味に、こう話してくれた。

「自慢に聞こえるかもしれないんですが、受験塾に入れるまで、弦のことは『優秀な子』だと思い込んでいました。小学校のテストでは常に満点かそれに近い点数しか取ってきたことがないので、当然、受験塾に入ったら、最上位クラスは間違いないと思っていたのです……」

ところが、ふたを開けてみたら、偏差値27、最後尾クラス。裕子さんは、「真面目に『72』」のプリントミスではないか?」と思ったという。

「まず、偏差値に20台があるのか!? ってことに衝撃を受けました。私自身は『いつも偏差値は60台くらいだった』という記憶があるので、そもそも母集団が違うという発想にはならなかったです」

これは、小学校のテストで出題される問題と、実際の中学入試問題の難易度が桁外れに違うということを如実に示す出来事。小学校で優秀なら、受験塾でも優秀ということにはならないのだ。

「『弦が優秀ではない!』と知り、正直、慌てました。親のミスと言われれば、それまでですが、小学校の成績なんかまったく当てにならないってことが、よくわかったんです」

勉強熱心な性格である裕子さんは、それから塾のテキストを自らひも解いて、弦君に解るように丁寧に解説をしていったという。

「受験はテクニックということもあるので、問題に慣れるにしたがって、弦の偏差値は面白いように伸びました。偏差値50までは順調でしたね。ところが、55の壁が超えられない。主人も、頭では母集団の違いなども理解しているんですが、どうしても偏差値50=平均という意識が抜けなくて、『金かけてまで、平均の学校に行くことはない! 上位校に行けないなら、やめてしまえ!』って怒っていましたよ……」

偏差値は50前後のまま、怒っていた父はその後……

やがて、偏差値50前後のまま、弦君は小学校6年生の晩秋を迎える。

「さすがに、その時期まできたら、それ以上は難しいなと思い始めました。上位校は主人の希望なので、とりあえず受ける。けれども併願校は弦の実力に見合う、弦にとって居心地の良い学校を探そうと、私は説明会に行きまくりました」

参考までに書くと、中学受験の偏差値は、難関校で60以上、中堅校で50前後から60の間になるので、中堅校といえど競争は厳しい。

結果的に弦君は中堅校ではあるが大学合格実績も目覚ましく、先進的な教育を行うことで有名な学校に入学した。

「『受験するなら、偏差値60以上の学校に行くべき!』という主張を変えなかった主人は、最初、この結果に不満のようでしたが、実際、難関校には不合格だったわけで、今の学校に行くしかなかったんです。でも、今は主人の方がこの学校に夢中です」

弦君の中学には、「お父さんの会」があり、今ではその集まりに積極的に参加しているという。

「主人は去年の文化祭で、焼きそばを腕が上がらなくなるまで焼いたっていうのが自慢みたいです。『弦は本当にいい学校に入ったなぁ……』なんてしみじみ漏らすので、私が『どの口が言う?』と言い返しているほどです(笑)」

弦君は今、中学3年生。文化祭実行委員会のメンバーの一人として、「コロナ禍で、どのように文化祭を開催できるか」に頭を悩ませながら、日夜、仲間や先生と協議の最中なのだそうだ。弦君の充実した学校生活の話を聞くと、親が偏差値に踊らされないことの重要さを実感する。

鳥居りんこ(とりい・りんこ)
エッセイスト、教育・子育てアドバイザー、受験カウンセラー、介護アドバイザー。我が子と二人三脚で中学受験に挑んだ実体験をもとにした『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などで知られ、長年、中学受験の取材し続けている。その他、子育て、夫婦関係、介護など、特に女性を悩ませる問題について執筆活動を展開。

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