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「年金の早期受給」損か得か!? 今から知っておきたい注意点とは

  • 2020.9.12
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老後の生活を心強く支えてくれる「年金制度」。本来65歳まではもらえないはずの年金を、65歳になる前の早期に受け取る「繰上げ受給」を選択する方法があります。
さまざまなメリットとデメリットがあるといわれる年金の繰上げ受給ですが、結局のところ損か得かどっちなのでしょう。
年金の繰上げ受給について、今から知っておきたい注意点をお話しします。

「年金の繰上げ受給」とは?

本来65歳から受け取れる年金ですが、届け出をすることで60歳から65歳までの間の好きな時からの受け取りに変更できます。
通常定年を迎えて今までよりも収入が減ってしまう65歳までの間に、決まった額の現金を手にできるのはとてもうれしいですね。

繰上げすると損するって本当?

「繰上げ受給すると損する」という話を聞いたことがある、という方もいるのではないのでしょうか。
それは、受給を1カ月繰り上げるごとに0.5%減額されるというデメリットがあるからです。
例えば、5年繰り上げて60歳から受け取るとすると0.5%×12カ月×5年で、65歳まで待った額より30%減額されることになり、一生その減額率は変わりません。

元気なうちにもらっておくのも手

繰上げ受給の最大のメリットは、定年後の元気に活動できる間に年金が手に入ることです。ある程度の金額のお金が早めに手に入れば、老後の趣味などの計画も立てやすくなりますよね。
年を重ねて体の自由が利かなくなる前に、できるだけ多くのお金を受け取って、楽しく暮らすのも選択肢の1つです。
でも、繰上げ受給には注意しなければならないことがあります。

よく考えて!3つの注意点

繰上げ受給は、早くから年金がもらえる嬉しい制度ですが、年金額が生涯減ってしまうことに加えて、繰上げ受給したことで65歳になったとみなされてしまうため、次のような3つの注意点もあります。

注意点1:60~65歳の間に障害基礎年金が受給できなくなる場合がある

例えば、繰上げ受給をしたあとに、交通事故などで大けがをして、障害基礎年金に該当するような障害が残っても、障害基礎年金を受給することはできません。
障害年金は、障害の原因となった病気やけがで初めて医師の診察を受けた日(初診日)が65歳まででないと対象とならないからです。
この場合は、繰上げ受給の老齢基礎年金より障害基礎年金の方が年金額は多いので、生涯で考えると大きな損となります。

注意点2:65歳までは遺族年金か、繰上げた老齢年金かのどちらかしかもらえない

配偶者が死亡し、遺族厚生年金を受け取ることができるようになった時、65歳までは遺族厚生年金と繰り上げた老齢年金のどちらかしか受け取れません。
もしも遺族厚生年金の額が老齢年金より多ければ、繰り上げた意味が全くなくなって、65歳からの老齢基礎年金も減額されたままで一生涯受け取ることになります。

注意点3:10年以上婚姻歴のある妻が受給できるはずの「寡婦年金」が受給できない

寡婦年金は、第1号被保険者の夫が、保険料を10年以上納付していたのに老齢基礎年金をもらわずに亡くなったときに、10年以上婚姻関係があった妻が受け取ることができる年金です。
60歳から65歳までの間のみ受け取ることができるので、繰上げ受給すると65歳になったとみなされてしまうため、寡婦年金は受け取れませんし、すでに寡婦年金を受け取っている場合は繰上げした以降は寡婦年金を受け取る権利がなくなります。

繰上げ受給した方がいいケース

個人的には繰上げ受給はオススメしません。
特に女性は長生きのリスクがあるので、1カ月あたりの受給額が減ることはできるだけ避けないといけません。
それでも、「こんな人は繰上げした方がいいというケースを考えろ」といわれれば、
・どうしても65歳までにお金が必要で、他に用立てる方法がない人
・余命が65歳までだとわかっている人
ぐらいでしょうか。
それほど繰上げ受給はしない方がいいと思っています。

繰上げの反対、繰下げの場合のメリット、デメリット

繰上げ受給は、60~65歳までの間の好きな時に年金をもらい始めることですが、反対に66~70歳までの間の好きな時に、遅らせて年金をもらい始めることを「繰下げ受給」といいます。
この場合、1カ月繰り下げるごとに0.7%増額されるというメリットがあります。

例えば、65歳でもらわずに5年待って70歳からもらい始めれば、0.7%×12カ月×5年なので65歳でもらう場合より42%増額されて、一生涯42%増額された年金を受け取り続けることができます。

繰下げのデメリットは、待っている期間は年金がもらえないことと、繰下げて年金をもらい始めてから、数年で亡くなってしまったら、受給できた総額は65歳からもらった場合より少なくなってしまうので損となります。

繰上げ受給はよく考えてから選択しよう

年金の繰上げ受給にはメリットがあるのと同時に、デメリットもいくつかあります。また、一度繰上げをしてしまうと、変更や取り消しはできません。
体調や労働条件などで働いて収入を得ることができなくなってからは、生涯もらえる年金はとても心強い味方になります。
その年金が、繰上げしたことによって、本来の額より減ってしまっていることに後悔する方も多くいらっしゃいます。

保険などの加入歴や家族の事情なども考えて賢い選択をするためには、今のうちから年金の正しい知識を身につけておくことが大切です。
慎重に考えて賢い選択をしましょう!

執筆者:ファイナンシャルプランナー(CFP)小野みゆき

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