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アメリカGDP大幅悪化!日本への影響はどうなる?

  • 2020.9.11

アメリカの2020年第2四半期(4-6月期)のGDPが、コロナで過去最悪の32.9%減※1(年率換算)になったと報道されました。1947年の統計開始以来の数字で、過去5年間の経済成長がたった3か月で失われたことになります。GDPというと、統計の数字なので難しく感じるかもしれませんが、一度理解してしまえば、経済の動向に興味が持てるようになるでしょう。
※1:JIJI.COM「欧米、急激な景気悪化 新型コロナの傷跡深く―4~6月期」

GDPってどんなもの?

GDPは、簡単にいうと1年間に国内で生産されたモノやサービスの合計額で、「国内総生産」と呼ばれています。GDPには「名目GDP」と「実質GDP」の2つがあります。名目GDPは物価変動を反映していない数値で、その時の市場価格で評価したものになります。一方、貨幣価値の変化を考慮した上で補正したものが「実質GDP」になります。補正することで、過去とくらべてどのくらい成長しているかを正確に測ることができます。

GDPの内容を詳しくみると、消費と投資を合わせた民需と政府支出に貿易収支(輸出額から輸入額を差し引いたもの)を加えたものになります。

GDP=民需(消費+投資)+政府支出+貿易収支

GDPは、景気を判断する代表的な指標であり、投資判断の材料にもなります。GDPの伸び率は「経済成長率」を示しています。

アメリカ2020年第2四半期の経済状況

2020年のアメリカ経済は、1-3月期がマイナス5.0%、4-6月期がマイナス32.9%の成長率になりました。2008年のリーマンショック後の10-12月期がマイナス8.4%※2だったことからすると、衝撃の大きさがわかるでしょう。コロナの感染者拡大が景気を圧迫しています。
非常に深くて暗い穴が開いたような落ち込みなので、抜け出すには長い時間がかかるだろうといわれています。

特にコロナの感染拡大を受けた外出禁止措置で、ヘルスケア、飲食・サービス・宿泊、娯楽サービスは大きな痛手を受け、個人消費が34.6%も減少しています。過去には1950年10-12月期がマイナス11.5%でした※3から、個人消費についても記録を更新する結果となりました。

次のグラフは年単位でのGDPの推移です。2009年の落ち込みは、リーマンショックによるものです。

GDP成長率の推移

資料:外務省「米国経済と日米経済関係」2020年より引用

輸入や輸出についても、統計開始以来最大の減少幅になっています。輸出はマイナス98.5%、輸入はマイナス95.3%となりました。

IMF(国際通貨基金)によれば、2018年の世界の名目GDPにおいて、アメリカは約20兆米ドルで世界第1位です。2位は中国、3位は日本※4となっています。全世界に対するアメリカのGDPの構成比率も世界の23.9%※5を占め、世界でダントツの地位にあります。今や経済活動は地球規模なので、経済大国アメリカの景気動向は他の諸外国にも国境を越え、簡単に波及してしまいます。
※2、3:日本経済新聞「米GDP、コロナで過去最悪の32%減 4~6月期年率」 ※4:GLOBAL NOTE「世界の名目GDP 国別ランキング・推移(IMF)2018年 ※5:外務省「米国経済と日米経済関係」2020年

日本のGDPもコロナの影響で戦後最悪

内閣府の発表によれば、日本の2020年4-6月期のGDPは、年率換算でマイナス27.8%になりました。実質GDPの減少幅が大きかった四半期は(前期比年率)

実質GDPの減少幅が大きかった四半期

表:筆者作成

となっており、今回の発表は戦後最大の下げ幅になりました。

GDPのうち、個人消費は約6割を占めます。その個人消費は前期比8.2%減、設備投資は1.5%減りました。
個人消費はモノとサービスに分けられます。過去には、モノの消費の方がサービス消費にくらべ変動率が大きかったのですが、外出自粛のため、旅行や外食などのサービス消費が前期比12.7%(年率換算42.0%)もの落ち込みでした。モノの消費減少率は前期比で3%台の減少率ですので、過去にはない状況です。コロナの感染リスクを考えると、以前のような人出の回復は難しいという意見が大半です。

輸出は18.5%減り、下げ幅はリーマンショックに次ぐ大きさで、自動車の輸出減に加え、訪日客の消費がなくなった影響が大きく響いています。

コロナ感染症による急激な経済の落ち込みとなったため、GDPがコロナ前の水準に回復するのは、2022年以降との意見もあります。

日本の経済成長率の推移

資料:GD Freak!「GDP(暦年系列)」をもとに筆者作成(基準年は2011年)

日米の経済関係はどうなっている?

2017年にトランプ政権が誕生して、「強いアメリカ」を目指す政策がとられてきました。アメリカ国内産業の中でもヘルスケア分野やインフラ投資に力をいれて、史上最長の好景気となりました。

しかし、アメリカ第一主義を掲げる中で問題なのは、貿易赤字です。国別の割合で最も多いのは、対中国との貿易で47.7%※6を占めています。アメリカと中国で行われた関税の引き上げは、「米中貿易戦争」と呼ばれ、世界経済の拡大を阻む要因になったと指摘されています。
中国は日本の輸出相手国でもあります。中国経済が減退してくれば、日本企業へのマイナスの影響は避けられません。

では、日本とアメリカの経済関係を見ていきましょう。2019年財務省の「貿易統計」※7によれば、

日本の輸入相手国

1位 中国 18兆4537億円(23.5%)
2位 米国 8兆6402億円(11.0%)
3位 オーストラリア 4兆9578億円(6.3%)

日本の輸出相手国

1位 米国 15兆2545億円(19.8%)
2位 中国 14兆6819億円(19.1%)
3位 韓国 5兆438億円(6.6%)

というように、アメリカは日本の貿易国として重要な位置を占めてします。

また、アメリカへの主要な輸出品を品目別にみると、

アメリカへの輸出品目

1位 自動車
2位 原動機
3位 自動車部品
4位 半導体等製造装置
となっています。

企業活動もグローバル化しています。かつて日本の製造業は、日本で製品を作って海外に輸出することが多かったのですが、今では同じ企業でも、生産拠点を海外に持って製造を行っています。そのため製品の他にも、製品を作るための部品を輸出しています。また、部品や製品の組み立ては、人件費の安い中国や東南アジア諸国で行っている会社も多くなっています。

製造業では、そうした国際分業を行っているため、コロナの感染が拡大し、海外で製造された日本のメーカーの住設機器が日本に入ってこないので、大幅に住宅建築の工期が延びたという話もよく聞かれました。また、部品が1つ足りなくても製造ができないので、自動車工場が休業にもなりました。それくらい何かの要因でバランスが崩れてしまうと、経済活動に支障をきたすことになります。
※6:外務省「米国経済と日米経済関係」米国の貿易赤字の国別額(物品のみ) ※7:財務省「貿易統計」

アメリカ経済の日本への影響は?

アメリカ経済が下振れすることによって、海外向けの輸出が多い業種では需要が落ち込み、生産が弱含みになってしまいます。生産が落ち込めば、当然のことながら設備投資を手控えます。大企業の製造業では、輸出が増えれば設備投資も増え、輸出が下振れすれば設備投資も減る相関関係※8にあります。

輸出割合が多い国のGDPほど、相手国のGDPと連動しやすくなっています。日米の経済関係は、自動車などの輸送機械や電気機械を輸出していることから、その相関関係が顕著に表れることになるでしょう。

アメリカ市場の好景気に支えられて、日本企業はアメリカでの直接投資を増やして※9きました。過去10年間で約2倍になっています。アメリカの好景気の恩恵を日本も受けてきました。トランプ政権下での輸入規制もありましたが、両国は会談を重ね2020年1月には、日米貿易協定等も発効しています。貿易関係が強まったことによって、輸出の多い日本は、アメリカのDGP成長率の連動性が高まることになるでしょう。

企業による直接投資

資料:外務省「米国経済と日米経済関係」2020年より引用
※8:内閣府「令和元年度年次経済財政報告」令和元年7月 ※9:外務省「米国経済と日米経済関係」令和2年4月

今後の経済動向は、ワクチンが鍵?

日本経済は、アメリカの影響を強く受ける経済関係にあります。2020年第2四半期のGDPのマイナス成長は、コロナショックによるもので大打撃を受けています。ワクチンの開発に至っていないので、「ウィズコロナ」が長期化するのではとの観測がされています。アメリカ経済が下降すれば、世界不況が発生するという説まであります。
しかし、V字回復はできなくても、ワクチンの実用化の目途が立てば、経済は上向くのではないでしょうか。

執筆者:ファイナンシャルプランナー(AFP)池田幸代

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