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【芳麗・女と文化の話】漫画家ひうらさとるが語る〝アラサー干物女子〟の幸せの鍵とは?

  • 2020.8.12
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ここは、大人GIRL’Sを美しくする文化や思考を語り合う誌上café。今月のゲストは、今も女性たちに絶大な支持を得る『ホタルノヒカリ』シリーズの作者である、人気漫画家のひうらさとるさんです。リアルな婚活、40代の出産・子育てについて。そして、人生を豊かにする〝オタ活〟のお話までたっぷり伺いました。

■今月のゲスト:ひうらさとるさん

女子のみなさん、自分のことを〝干物女〟だと思ったことはありますか?〝干物女〟とは、映画化もされ、大ヒットした漫画『ホタルノヒカリ』の主人公、雨宮蛍のこと。一見、おしゃれで仕事ができる今時のアラサー女子だけど、家に帰れば1人ジャージでゴロゴロする時間が至福。どうにも恋愛には興味が持てない、その姿はまるで干物のよう・・・。『ホタルノヒカリ』には、そんな干物女である蛍が再び恋愛をして、運命のパートナーと結ばれるまでの悲喜こもごもが描かれています。現在は、蛍の結婚と子育てを描いた『ホタルノヒカリBABY』も連載中。本シリーズは、仕事に恋に結婚に・・・と人生の転換期について悩み多きアラサー女子にとっては、普遍的なバイブルとも言える作品です。

人間味にあふれるチャーミングな蛍同様、作者のひうらさん自身も、仕事に恋愛に結婚にと、たくさん迷って考えてきたと言います。

アラサー女子はみんなが 恋愛に興味があるとは限らない

芳麗 『ホタルノヒカリ』は今、読んでもアラサー女子のバイブルですし、主人公の蛍は心強い友人的存在です。私も「干物女って私のこと!」と当時から思っていました(笑)。

ひうら ありがとうございます(笑)。

芳麗 今でこそ、続編「ホタルノヒカリBABY」にて、最愛のブチョーこと高野部長と結婚して子育て中の蛍ですけど、元はアラサーなのに恋愛に興味が持てない〝干物女〟でしたよね。

ひうら 物語が生まれたのは、約15年前。当時は今みたいにネットとか本音をぶっちゃけられる場所もなくて。働く女性たちたちも会社ではではキレイに取り繕って仕事しつつも、家ではだらけているのを見せない時代でした。それからね、当時のアラサー女子に取材したら「恋愛はめんどくさい」という子が多かったんです。若い女子はみんな恋愛が好きなものだと思い込んでいたけど、メディアがそう煽っていただけ。本当は疲れているのかもしれないなと。

芳麗 わかります。私もそうでしたし、長年、この世代を取材していて思いますけど、実は時代を問わず、「アラサー世代は恋愛に疲れている」。恋も仕事も一周して、一息つきたい時期だけど、そろそろ結婚とか出産も考えなきゃと思うから苦しくて。

ひうら 30代は悩ましいですよね。

一方的に守ってもらうだけの結婚が 幸せなものになるとは思えない

芳麗 蛍の場合、1度はブチョーと結ばれたのに、すぐにハッピーエンドにはなりませんでした。29歳という焦りがちな時期に1度は別れ。5年後の34歳でブチョーと復縁して結婚するわけですけど。あのとき、蛍が1度は別れを選んだのはなぜですか?

ひうら 2人には年齢差もあるけど、人生の経験値や成熟度にも圧倒的な差がありましたよね。だから、恋人ならともかく、人生のパートナーになり得るには、そこの差を埋めてからじゃないと難しいだろうと思ったんです。

芳麗 それは作者として俯瞰で見て?

ひうら はい。もともと上司と部下だったし、2人の性格もあって。あのまま結婚したら、蛍が一方的に守って養ってもらうみたいな関係性になりかねない。それって、少し前までの恋愛のステレオタイプであり、いわゆる〝女の幸せ〟みたいにも思われていましたけど・・・果たしてそうなのかなと。

芳麗 上下関係を伴う夫婦関係が、必ずしも幸せとは言えないですよね。

ひうら ええ。やっぱり蛍は「家ではダラダラ」も含めて、素の自分をキープしつつも精神が成熟してからブチョーと結ばれるのが良いと思ったんです。自らアプローチしてね。

芳麗 なるほど。自力で幸せになろうとするというのがポイントですよね。だから、蛍もまずは仕事に邁進した。

ひうら 「全然恋愛できなかった女子が、棚からぼた餅だけで幸せになりました!」では、読者もリアルな希望は持てないですよね。

芳麗 シンデレラストーリーですもんね。

どうせモテないという思い込みは 男性を個々に観察していないから

芳麗 どうすれば、現実的なベストパートナーの人に出会えるのでしょう?

ひうら うーん。誰と出会うかより、自分がどう生きていきたいのかを先に決めると、それに必要な人と出会うんじゃないかな。これは私だけじゃなくて、いろんな人のパターンを見ても思います。

芳麗 ああ、そうかも。

ひうら つい最近まで婚活していた友人もそう。婚活アプリとかのツールを使っていたんです。ちなみに彼女は東大卒で持ち家もあってフェミニストでオタクで・・・とスゴい子なんですけど。婚活には不利な条件だからと、最初はその辺は隠して。手当たり次第、相手を求めていたときは上手くいかなくて疲弊していたんです。

芳麗 キャリア女子の婚活あるあるですよね。

ひうら だけどあるとき、自分を隠すのを止めて、プロフィール欄に長々と真実を書いたんです(笑)。すると、申込者は減ったものの、それでも来てくれたツワモノ5人とデートして。その中の1人と無事にカップルになりました。

芳麗 良い話!自分が確立していたら、ペアーズだってタップルだって良い出会いを見つけられる可能性が高い。ただ、何となく結婚願望や焦燥感は強いけど、そもそも自分がどうしたいか本心がわかってない人も多いと思いますね。そもそも、どんな人が好きなのか、何が欲しいのか・・・。

ひうら そうですよね。でも、自分の生き方や本心を知るといっても、そんなに大げさなことをしなくていい。「ランチは何を食べたい」とか、「この画面の色が好き」みたいな日常の些細なことから、好き嫌いや快・不快をはっきりさせてみるといいと思います。感覚って大事ですから。

芳麗 なるほど。一緒にいてしっくりくる人っていうのも、結局、感覚ですもんね。それから、自分の素を他者に見せることに慣れていない人もいますよね。フェミニストやオタクである自分は、他者に、特に男性には見せちゃいけないと思っちゃう。

ひうら でもそれって、女性側も男性をステレオタイプに見過ぎているのかも。「こういう女性が好きでしょ」とひと括りに見ている。それは男性を舐めているとも言えますよね。

芳麗 あ、なるほど。

ひうら 私も20代の頃はありましたよ。後々、男友達に聞いたら、当時の私は、男性をステレオタイプに見ていたと(笑)。そういう女性を男性は信頼できないし、彼女にしないですよね。

芳麗 ああ、私もかつては「男性なんてどうせモテ服が好きなんでしょ」とか思っていました。自分を卑下していたつもりが、実は男性を見下してもいたという。

ひうら ありますよね。

芳麗 多くの人が、異性を別の生き物として考え過ぎているというか。男性だから、女性だからと区切りすぎているところはあるのかも。年々思いますが、結婚って男女として惹かれ合うより、人間同士としてどれだけ認め合えるかだと思うから。

ひうら そうなんですよね。

40代で結婚・出産を経験!ひうらさんの結婚観とは?

早くても遅くても 結婚や出産は〝賭け〟だから
andGIRL©︎ひうらさとる/講談社

芳麗 蛍は37歳の出産ですが、ひうらさん自身も43歳で出産されています。もともと、子どもを持ちたい願望や計画はあったんですか?

ひうら 一生1人はイメージできませんでしたけど、すごく欲しいとも思ってなかったんです。だから、きちんと知識を持たないまま、あっという間に40歳を過ぎてしまって・・・。

芳麗 ご結婚も41歳のときですよね。

ひうら はい。結婚してから、パートナーとともに考え始めたという感じです。「子どもがいる人生も面白いよね」と話し合って。2度の流産を経験後、ありがたいことに授かって。今は子どもと一緒に生きられてよかったなと心から思いますけど。

芳麗 今、ひうらさんはさらりとお話してくださいましたけど、40代の出産はやはり葛藤も多いし、大変だという話を聞きます。

ひうら もちろん、私も葛藤はありました。まずは、妊娠中に出生前診断をするかどうかとかね。結局、私はしませんでした。主治医に、何歳で出産しようともリスクがないことはないと言われたことや、どんな子どもが生まれても育てていこうと夫婦で話し合ったこともあり、必要ないかなと判断したんです。

芳麗 覚悟を決められたんですね。

ひうら そうですね。結婚もそうですけど、出産もやってみないとわからない。いわば、〝賭け〟ですからね。私の場合、40代でも無事に出産できたのは体が健康だったおかげですし、産後の回復も周囲の協力があってこそ。出産後1ヶ月は、「外に一歩も出るな」と家族に靴を隠されるくらい(笑)、上げ膳据え膳してもらえて。完全に体をいたわれたことも大きかったと思います。それにね、人間、どれだけ大変なこともどんどん忘れていくんですよね(笑)。それは子育てについても同じですけど。

芳麗 ひうらさんの体験談もそうですが、『ホタルノヒカリ BABY』も子育ての大変さ以上に、その面白さが描かれていて希望が持てます。

ひうら 高齢出産やワンオペ育児が大変なのはたしかですけど、全ては通り過ぎていく大変さですから。オムツが外れないことも卒乳することもね。だから大変だけど、貴重ですし。子育ての大変さを伝える発信ははたくさんあるから、私は楽しさを多めに発信できたらいいなと思っています。

アイドルにハマって人生がより楽しく。 〝オタ活〟は婚活にも有効かも(笑)

芳麗 ひうらさんはカルチャーもお好きなんですよね。最後に、アラサー読者にオススメの本や音楽を教えてください。

ひうら 今日の話の流れで言うと、雨宮まみちゃんの『まじめに生きるって損ですか?』。なかなか白黒つけられないこととや、誰かに話したら「そんな些細なこと」って言われるような愚痴も、彼女が優しく聞いてくれているような・・・悩める女子に深く寄り添ってくれる1冊です。

芳麗 雨宮さんは文章でしかお会いしたことがないんですけど、そこにある優しさが深いなと感じます。

ひうら そうなんですよね。この本には彼女の繊細さや優しさとともにチャーミングさも出ているから、ぜひ読んでみてください。

芳麗 それから、ひうらさんといえば、ジャニーズ!KAT-TUNですよね!

ひうら はい。40過ぎてどっぷりハマりました(笑)。KAT-TUN、特に亀梨和也さんの担当です。

芳麗 アイドルにハマる楽しさや喜びは『ホタルノヒカリSP』にも描かれていますよね。読んでいて、すごく素敵だなと。私はオタク経験がないんですけど、人生をより楽しめそうだなって思いました。

ひうら すごく楽しいですよ!私も漫画以外の対象に、初めてこんなにハマりました。しかも、あんなに遠い存在の人たちに。KAT-TUNのパフォーマンスに熱狂したり、動向を見守って、喜んだり、心配したり、オタ仲間と熱く語り合ったり。こんなに真剣に応援しているのに、相手はこちらのことを知らないのもまた良いんですよ。自分たちの自由に妄想を膨らませたり、愛情を注いだりできるから。

芳麗 深い、興味深いです!

ひうら 10代の頃から漫画ばかり描いてきましたけど、オタ活動のおかげで、遅れてきた青春を味わえている感じです。

芳麗 オタ活動もそうですけど、何かや誰かにハマるって、自分らしさを取り戻させるし、人生を輝かせるんだなぁって。

ひうら だから、30より、40より、50代の今が楽しいです。そういえば、うちの夫は、オタ活動も含めて自由に楽しそうに生きている私のことを良いなと思ってくれたようなので(笑)。好きなものにハマって人生楽しむっていうのは、婚活にも有効かもしれません(笑)。

■今月のおすすめカルチャー

『ホタルノヒカリBABY』ひうらさとる(著)

干物女だった蛍は紆余曲折を経てブチョーこと高野部長と結婚。37歳という高齢出産も無事に乗り切り、念願の赤ちゃんが誕生してからの物語。相変わらず、マイペースで干物な蛍ときっちりしっかり者の部長の子育てとは?リアルな子育て事情やその楽しさ、面白さもたくさん詰まっている!

芳麗(よしれい)

NHK山形局のキャスターを経て、文筆業に。女性の生き方にまつわるコラムとインタビューを主軸に、本誌のほか、雑誌、WEBなど多くの媒体などで連載・執筆。著作に「3000人にインタビューして気づいた! 相手も、自分も気持ちよく話せる秘訣」(すばる舎)、「LOVEリノベーション」(主婦の友社)など。好きなものは、旅とご飯とカルチャー全般。

https://fafa-yoshirei.com

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