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プロが教える、オンライン会議でコミュニケーション不全に陥った職場への処方箋3つ

  • 2020.8.9
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オンライン会議に切り替えて、生産性が上がったという意見と同時に、職場のコミュニケーションが悪くなったという声もよく聞きます。ファシリテーターのプロが示す、オンライン時代の会議の開き方とは――。

※本稿は堀 公俊『オンライン会議の教科書』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。

ラップトップを使用して女性
※写真はイメージです(写真=iStock.com/miya227)
【悩み1】リーダーがファシリテーターを兼ねざるをえない

ファシリテーターは中立でないといけないと聞きます。リーダーがファシリテーターを兼ねてもかまわないのでしょうか。そのときは、自分の意見を言ってもよいのですか。よいのなら、どんなことに気をつけたらよいでしょうか。

【解決策1】2つの信頼が見極めのポイント

原則から言えば、中立な人がファシリテーターをすべきです。とはいえ、国会の議長をするわけではなく、会社の会議では全員が利害関係者(当事者)です。

大切なのはファシリテーターが信頼できるかどうかです。

社会心理学者の山岸俊男によると、信頼には大きく2つあると言います。ひとつは能力への信頼です。「ファシリテーターとして適切に振る舞うことができるかどうか?」です。

ここで気をつけてほしいのは、リアル会議とオンライン会議の違いです。前者で多いのが、以心伝心を駆使した調整型のファシリテーターです。

これが後者では通用しないのです。誤魔化しが利かないオンライン会議では、ホンモノのファシリテーション能力を持った人が求められます。

もうひとつは、意図や目的に対する信頼です。「誰の何のためにファシリテーターをするのか?」です。

自分や特定の誰かの利益のためだと信頼できません。みんなやお客様のためなら、信頼して任せても安心できます。候補となる人の胸の内を探ってみてください。

2つの条件を満たすなら、ランクの上下にかかわらず誰でもOKです。本来は、リーダーとファシリテーターを分けたほうがよいのですが、うまくスイッチを切り替えられるなら、兼ねるのは問題ありません。

【解決策2】迷ったときはみんなに尋ねる

自分の意見を絶対に言っていけないことはありません。少人数の会議はもとより、自分が専門家や利害関係者のときは、意見を言わないと始まりません。

ただし、意見を出すタイミングは気をつけてください。なるべく最後に言うようにして、落とし所に誘導する疑念を持たれないようにしましょう。特に、ランクが高いときは注意が要ります。

意見を言うとみんなが飛びつくような状況では、客観的に伝えることも必要となります。「○○を知っていますか?」と事例、定説、理論、専門家の意見などを引用して、間接的に伝えるやり方です。

また、あらかじめ用意した意見よりは、その場で思いついた意見のほうが、抵抗感が薄れます。会議という名の共同作業の結果生まれた、みんなの意見を代弁したに過ぎないからです。

それでも心配なときは、「意見を言っていいですか?」「答えが分かったので、話していい?」と了解をもらうようにします。どんな場合でも、迷ったときはみんなに尋ねるのが、一番安全な方法です。

【悩み2】時間が予定より延びてしまう

オンライン会議をやると、どうしても予定より時間が延びてしまいます。何度やっても、時間通りに終わらせることができません。定められた時間内にちゃんと収めるには、どうしたらよいのでしょうか。

【解決策1】できないことはやらない

まず、お尋ねしたいのは、「時間内に終わる議題になっていますか?」という点です。議題が多すぎる、問題が難しすぎる、結論を出すだけの材料が不足している、といった状況では、誰がやっても時間通りに終わりません。

少々の無理はよくても、無茶は禁物です。オンライン会議に慣れないうちは、リアル会議よりも少しボリュームを減らさないと、尺に合わなくなります。身の丈にあったゴールを設定するのが一番の対処法となります。

それが難しければ、話し合いにメリハリをつけるしかありません。

大事な話に時間を割く代わりに、瑣末な話は端折るようにします。確認だけに留めたり、別の手段で意見を集めたりして。そうすることで時間短縮をしながらも、議論の質を落とさないようにします。

人数にもメリハリをつけてはどうでしょうか。いつも全員で議論するのではなく、テーマによっては小グループやペアになって話し合うようにするのです。

もちろん、タイムキープは重要です。タイマーがみんなから見えるようにしておき、「3分で説明をお願いします」「○○について5分だけ議論しましょう」と常に時間をコールするようにします。一番話の長い人にタイムキーパーをお願いする方法もあります。

【解決策2】オンライン会議ならではの楽しいルールを

「オンライン会議だとおしゃべりが増えて時間が延びる」という話を耳にします。雑談が必ずしも悪いわけではなく、情報交換や緊張緩和に役に立ちます。

しかしながら、時間を忘れて馬鹿話をしたり、脱線ばかりするのは、単に集中力がないだけです。これは引き締め直す必要があり、おしゃべりの質を見極めることが大切です。

オンライン会議で時間が延びる原因として、もうひとつよくあるのが堂々巡りです。相手に真意が伝わらず、何度も同じ話を繰り返してしまうのです。ファシリテーターが仲介に入るか、誰かに解説をお願いをすれば、不毛な時間が短くてすみます。

あとは、どうやってみんなに終了時間を守らせるかです。リアル会議と同様、立ってやると時間が短くなるかもしれません。試してみる価値はあります。

あるいは、「ミーティングが時間通りに終わらなかったら、リーダーが出席者全員におごる」「ミーティングが時間オーバーになったとき、最後に発言していた人が腕立て伏せを50回する」という秘策もあるようです(S.G.ロゲルバーグ『SUPER MTG スーパー・ミーティング』)。こんな風にオンライン会議ならではの楽しいルールをつくるのも面白いのではないでしょうか。

【悩み3】発言しない人がいる

会議がオンラインになって若手も参加させるようにしました。せっかくの機会なので、時々発言を求めるのですが、「特にありません」「大丈夫です」で終わってしまいます。話を引き出すよい方法はないものでしょうか。

【解決策1】安心安全の場になっているか

「会議なんて意味がない」と思っている若手は少なくありません。まずは、「何のために会議をするのか?」「なぜ、若手も参加するようになったのか?」「なぜ、時折意見を求めるのか?」など、意味をしっかり伝えるようにします。問題解決に若い人の視点が欲しいとか、若手にとって考える訓練になるとか。

その上で、「思いつかなかったら後でもよい」「何を言ってもかまわない」と伝え、安全を担保してあげることです。発言できなくても、意にそぐわない意見でも、関係性において不利益を被らないのが、本当の心理的安全性です。

オンライン会議を「小学校の授業を思い出す」と言った人がいました。

雁首そろえて座り、先生から常に監視され、時折名指しで回答を求められるからです。しかも、学校時代のような「分かりません」は通用せず、妙なことを言うと心証が悪くなります。人によってはかなりの緊張が強いられる場となります。

ランクの高い人がフラットで民主的な場だと思っていても、低い人はそう受け取っていないかもしれません。「話すチャンスを与えている」と思っていても、「無理やり言質を取ろうとしている」感じているかもしれません。

「人権を尊重する」「多様性を歓迎する」といった、基本的な価値が共有されてこそ、オンライン会議の良さが活きてきます。そのことを肝に銘じておきましょう。

【解決策2】意見を言わなくても貢献できる

おそらくこういう状況では、気の利いた意見を述べるよりは、みんなの前で話す経験をさせることが先決だと思います。内容は何でもよいので。

たとえば、事前にネットや書籍を使った情報収集を頼んでおきます。あるいは、クライアントにインタビューをして生の声を集めるように言っておきます。そんな宿題を課しておいて、「どんなことが分かった?」「一番、印象に残った話は?」と質問するのです。

調査報告や情報提供だと自分の考えを述べる必要がありません。意見を言うより気楽に話ができます。その上で、「なぜ、そう思ったの?」「それは何を意味しているのかな?」と解釈や考察を尋ねるようにするのです。

こうすれば、会議に貢献できると同時に、考えるトレーニングにもなります。その場ですぐに話せないなら、レポートにしてから説明するのでもかまいません。

あとは、「勉強になった」「知らなかった」「さすが若手は違う」「君らしい報告だったよ」とポジティブなリアクションで勇気づけてあげましょう。そうすれば自己有能感が高まり、「またやってみよう」という気持ちが芽生えてきます。

【悩み4】オンライン会議でコミュニケーションが悪化

会議をオンラインに切り替えたところ、かえってコミュニケーションが悪くなり、ミスや手戻りが頻発するようになりました。会議のやり方が悪いのでしょうか。それとも、他のツールを使ったほうがよいのでしょうか。

【解決策1】そのままオンライン化してはいけない

ご質問にお答えする前にお聞きしたいことがあります。今までやってきたことをそのままオンラインに置き換えようとしていませんか。

堀 公俊『オンライン会議の教科書』(朝日新聞出版)
堀 公俊『オンライン会議の教科書』(朝日新聞出版)

私たち日本のサラリーマンは、職場の仲間と長時間一緒にいることで情報や思いを共有してきました。それがチーム力の源泉でもありました。

ところが、働き方改革とコロナ禍により、時間と場所を濃密に共有することが許されなくなってしまいました。密度の濃い関わりが苦手な人もどんどん増えています。かつてのようなコミュニケーションの取り方はもはやできないのです。

かといって、オンラインのツールにすべてを肩代わりさせるのは荷が重すぎます。リアルとオンラインとでは情報量や心理的効果に大きな差があるからです。もともと、日本の組織風土を前提につくられたものでもなく、過剰な期待は禁物です。

もはや時計の針を戻すことはできません。私たちがすべきことは、自分達の考え方を変えることです。オンラインを活用して、濃密な人間関係や非公式のコミュニケーションに頼りすぎない、新たなチームづくりをすることです。まずはそのことをしっかりと理解する必要があります。

【解決策2】オンライン化に乗じて仕事を変革する

「オンライン時代にどのようにチームの結束を図るか?」は喫緊の課題です。答えは誰も教えてくれず、自分達で見つけ出さないといけません。そのヒントはいろいろお話ししたつもりです。それができて初めて、「ビジネスツールをどのように活用していくか?」を考えられるようになります。

オンライン会議は万能薬でも魔法の杖でもありません。それは他のビジネスツールも同じです。できること/できないこと、得意なこと/不得意なことがあります。リアルな場でしかできないことも、まだたくさんあります。

私たちにできるのは、それぞれの持ち味を引き出すやり方を見つけることです。上手に組み合わせて相乗効果を発揮させるノウハウを培うことです。そうやって、新しい時代にふさわしいコミュニケーションのやり方を、自らつくっていかなければなりません。

お悩みに対する決定打はないかもしれません。でも、有効打はいろいろ考えられるはずです。できない理由を挙げるより、できることを考えるほうがよほど生産的です。

オンライン化の波に抗うことはできません。私たちに求められているのは、波の力を活かして仕事や組織を変革することです。そのためにオンライン会議を活用してもらえれば嬉しいです。

写真=iStock.com

堀 公俊(ほり・きみとし)
堀公俊事務所代表/組織コンサルタント
神戸市生まれ。大阪大学大学院工学研究科修了。大手精密機器メーカーにて商品開発や経営企画に従事。2003年「日本ファシリテーション協会」を設立。関西大学、法政大学、近畿大学で非常勤講師を務める。現在、堀公俊事務所代表、組織コンサルタント、日本ファシリテーション協会フェロー。

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