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『風と共に去りぬ』のオリヴィア・デ・ハヴィランド、104歳で逝く。

  • 2020.7.28
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フランス現地時間26日、オスカー女優のオリヴィア・デ・ハヴィランドが老衰のため、パリの自宅で亡くなったことが明らかになった。享年104歳だった。

英国人の両親の間に、第一次世界大戦中の1916年に東京で誕生したオリヴィアは、1935年に公開された『真夏の世の夢』で映画デビュー。数多くの作品に出演したが、オリヴィアの名前を世界的に知らしめたのは、『風と共に去りぬ』(1939年)であろう。清純なメラニー・ハミルトン役で、オリヴィアはアカデミー女優賞にノミネートされている。役のままに純情で可憐なイメージが強いオリヴィアであるが、実際は骨のある人物として知られている。

ワーナー・ブラザーズと7年間の契約を結んでいたオリヴィアは、1943年に半年の契約延長を告げられたが、オリヴィアは頑なにこの申し入れを受け入れなかった。

40年代当時の法律では、契約中の俳優が製作会社から提示された配役を拒否した場合、その作品の撮影期間を契約期間に加算延長することを認めており、いかなる俳優もそれに従わざるを得なかったわけだが、オリヴィアはワーナーを相手取り、出演拒否に対する契約期間延長処置について訴訟を起こしたのだ。カリフォルニア州最高裁判所は、オリヴィアの勝訴とする判決を下し、以後、俳優たちはより自由な雇用形態を得られることとなった。この判例はいまでも「デ・ハヴィランド法」として知られており、オリヴィアは俳優仲間から賞賛と敬意を得ることとなった。

いつまでも可憐な乙女役ばかりに甘んじてはいられない。オリヴィアのキャリア後期は、シリアスな役柄志向に。重厚で存在感のある役柄を演じ、『遥かなる我が子』(1946年)、『女相続人』(1949年)では、ともにアカデミー主演女優賞を獲得。70年代後半に女優業を引退したものの、2000年代にもアカデミー賞授賞式にプレゼンターとして登場するなど、いくつかの式典において姿を現している。

またオリヴィアは、『風と共に去りぬ』の主要キャストにおける唯一の存命者としても知られていたが、ここにきて『風と共に去りぬ』は、人種差別撲滅のための「Black Lives Matter」運動の影響を受け、「奴隷制度を正当化し、当時の南部を美化している」と、やり玉に挙げられたのは記憶に新しい。

ワーナーメディアの動画配信サービスHBO Maxは一時期配信をストップさせていたが、時代背景として作中に登場する黒人や奴隷制の描写について、新たに説明動画を加えた上で配信を再開した。

動画のひとつでは「発表から80年を経ても、『風と共に去りぬ』のもつ文化的な重要性は否定できない。過去のハリウッドの人種差別的慣行を描いただけではなく、現代社会およびメディアの業界にも根強く残る人種間の不平等を伝える不朽の名作だ」と説明している。

そのような注釈がついた上で見直すと、古典的な名作といえど新たな感じ方が生まれるに違いない。オリヴィアを偲びつつ、いま改めて『風と共に去りぬ』に触れてみてはどうだろうか。

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