商店街に残るレトロな空間へ。大人の社交場のような喫茶店「サロン・ド・マルイチ」

100年近い歴史を持つ商店街、岐阜・柳ケ瀬。碁盤の目のように通りが広がり、劇場や喫茶店、商店などさまざまなお店が軒を連ね、昭和30年代には日本随一の繁華街として知られるまでになったエリアです。そんな商店街にあった歴史ある喫茶店を復活させ、かつての常連さんと共に若い世代も訪れるようになったというお店を訪ねました。

歴史と新しい雰囲気、両方を兼ね備えたお店

明治時代からその歴史が始まったと言われている、岐阜市・柳ケ瀬商店街。JR岐阜駅から徒歩10分ほどの場所にあり、劇場や遊技場、飲食店など、さまざまなお店が軒を連ね、かつては昼も夜も賑わう繁華街でした。時代と共に街は変遷し、歴史あるお店が次々と閉店していくなか、町の歴史を物語るお店を残したい、そんな思いから生まれたお店が、今回紹介する「サロン・ド・マルイチ」です。

2019年夏にオープンした「サロン・ド・マルイチ」のルーツは、2014年に閉店した70年以上の歴史を持つ喫茶店「マルイチ」。
「お店のオーナーからなんとかお店を残したい、と相談を受けたのがきっかけでした。サロンのように人が集っていた、街の歴史の一つとなっているお店だったので、その雰囲気を残しながら、新しいお客様にも訪れてもらえるようなお店として復活させたいと考えました」というのは店長としてお店を切り盛りする奥岡さんです。

壁を塗り直したり、椅子を張り替えたりした以外はほとんどそのままという店内。エントランスには大理石のオブジェがあり、カウンターには巨大な鏡の装飾。店内中央を見上げると吹き抜けになっていて、アートなセンスを感じさせる意匠があちこちに残っています。豆電球と間接照明だけの店内は、商店街の賑やかさを忘れてしまうほど落ち着いた雰囲気です。

カクテルのように作り上げられる、フレッシュジュース

お店の名物は注文を受けてから果汁を絞って作る、フレッシュジュース。まずは「マルイチ」時代にも使われていたというクラシックなジュサーで果汁を絞ります。この果汁をシェイカーでカクテルのように氷と撹拌。シェイカーで冷やすことで果汁が氷で薄まることもなく、フルーツそのものの味わいが楽しめ、しかも酸味がまろやかになるのだとか。

「かつての常連さんから話を聞いたりして、マルイチで作られていた味を再現しました。地元の果物店から厳選したフルーツの味わいをストレートの楽しめるジュースです」という奥岡さん。
店内にシェイカーの音が響くと、暗めの照明なので、まるでバーにいるような感覚に。オレンジやグレープフルーツがあり、ジュースですが、大人も味わいたくなる一品です。

先代の頃から人気のシュークリームやプリンも再現

かつての「マルイチ」では洋菓子も作っていて、シュークリームはいろいろな種類があったのだとか。「サロン・ド・マルイチ」でも、ナッツがアクセントになった「3種のナッツのシュークリーム」が名物となっています。濃厚だけれど口どけのよいカスタードクリームがたっぷり入っていて、コーヒーと相性抜群。ほかにも昔懐かしいプリンやおしゃれなエクレアなど、10種類ほどのケーキがあり、テイクアウトもできます。

オリジナルパンで作るサクサクトースト＆サンドイッチ

フードメニューも充実していて、人気は発酵バターを使い風味豊かに仕上げたイギリス食パンで作るサンドイッチやトースト。シンプルなバタートーストのほか、同じ商店街で人気を集める和菓子店「ツバメヤ」のあんこを乗せた「あんトースト」などもあります。

サンドイッチも人気で、平飼い卵で作る玉子サンドはケイパーやコルニッションなどがアクセントになった、大人の味わい。クロックムッシュやラタトゥイユのピザトーストなど、喫茶店とは一線を画したフレンチスタイルのトーストが楽しめます。

2階にはギャラリーがあり、アート＆カルチャーも発信

吹き抜けから見えていたお店の2階部分はギャラリースペースになっていて、地元にゆかりのあるアーティストのイベントを不定期で開催しています。店内の一角にはそんなアーティストたちの作品も販売されていて、地元のワッペン作家とのコラボしたお店のオリジナルワッペンもありましたよ。

レトロな空間はそのままに、材料や製法にこだわったメニューを生み出して新たな歴史を刻み始めている「サロン・ド・マルイチ」。柳ケ瀬商店街には古い空きビルをリノベーションしたお店がほかにも数多くあります。ぜひのんびりと散策をしながら、古くて新しい、街の魅力を発見してみてくださいね。