1. トップ
  2. おでかけ
  3. この夏はどこに旅行すべきか、星野リゾート代表が提示する2つのチョイス

この夏はどこに旅行すべきか、星野リゾート代表が提示する2つのチョイス

  • 2020.7.22
  • 2320 views

夏休みシーズン到来。でも新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、遠くに出かけるのは控えたいと考える人も多いのでは。星野リゾート代表の星野佳路さんが、Withコロナ時代でも楽しめる2タイプの旅を提案してくれました。

これからの旅行の中心になる「マイクロツーリズム」とは
星野リゾート代表 星野佳路さん
星野リゾート代表 星野佳路さん(撮影=強田美央)

新型コロナウイルスで、日本人の旅行のスタイルは大きく変わりそうです。まず、しばらく海外旅行には行きづらくなるでしょう。また、ワクチンや治療薬が完成するまでは第二波第三波のリスクがあり、そのたびに県境をまたいだ移動を自粛する動きが出るはずです。おそらく新幹線や飛行機といった公共交通機関の利用も敬遠されます。そうなると、国内でも遠くに行く旅が元に戻るのは時間がかかると思います。

最初に戻ってくるのは、自家用車で片道1~2時間くらいの旅ではないでしょうか。自家用車なら同乗者以外の人と接触はなく、公共交通機関の利用と比べると感染リスクは低い。また、1~2時間なら途中にレストランに寄らなくても目的地に行けます。近距離の旅を“マイクロツーリズム”といいますが、Withコロナ時代はこれが旅行の中心になると思います。

テレワーク時代に、手軽に味わえる「非日常」

マイクロツーリズムそのものは昔から存在していました。1960~70年代は、むしろ大半がマイクロツーリズムだったと言っていい。当時は新幹線が東海道新幹線と山陽新幹線しか開通していなかったし、高速道路網もいまほど発達していませんでした。また温泉旅館へのニーズが高く、“上げ膳据え膳”で何もしなくていいことが魅力でした。50年60年前の日本では、地元の人が地元の温泉旅館に宿泊してくつろぐスタイルが一般的だったのです。

その後、交通網の発達でマイクロツーリズムを楽しむ人は減りましたが、今回のコロナで人気は再燃するに違いありません。日帰りの観光も人気が出ると思いますが、注目は、やはり温泉旅館への宿泊でしょう。温泉保養は、コロナで溜まった疲れやストレスを癒すのにぴったりです。また、テレワークで自炊の機会が増えているので、上げ膳据え膳はありがたい。献立を考えなくていい、買い物に行かなくていい、料理をしなくていい――。この非日常を手軽に味わえるのが、地域の温泉旅館に宿泊する魅力といえます。

まずは地元のガイドブックを購入しよう!

マイクロツーリズムに関心があっても、どこにどう遊びに行けばいいのかわからない方もいるでしょう。情報収集にお悩みの人は、まず地元のガイドブックを買ってみてはいかがでしょうか。台湾に旅行に行くときは、みなさん台湾のガイドブックを買いますよね。マイクロツーリズムも同じ要領でいい。東京に住んでいる人は、東京のガイドブックを買ったことが無いという人が案外多いのではないでしょうか。ガイドブックを開くと、自分ではよく知っているつもりのエリアに意外な観光スポットがあったりして、地元の魅力を再発見できます。

観光事業者も、地元の魅力を地域内に向けてもっと積極的に発信したほうがいいと思います。星野リゾート自身がそうでしたが、これまでは情報発信というと、遠くの大都市や世界に向けたものになりがちでした。しかし、足元に目を向ければ、長年親しまれているタウン誌やコミュニティFMなど地域に根ざしたメディアがいろいろあります。そういうところでコーナーをつくってもらえれば、地域の魅力を地元のみなさんにお伝えできるはずです。

地元民も知らない新しい“地産地消”を味わう

もちろん、観光事業者が頑張らなくてはいけないのは情報発信だけではありません。昔の温泉旅館は、山間部にあっても伊勢海老が食べられる贅沢さが求められました。現代の上げ膳据え膳は違います。いまは地産地消が観光の重要なテーマで、お客様もその土地でしか食べられないものか、その土地のおいしいものを求めて旅館にいらっしゃる。ただし、マイクロツーリズムの場合、お客様は地元の食材を普段から食べ慣れています。同じ地産地消でも、お客様が食べたことのないような調理や提供の方法を工夫する必要があるのです。

ここは各宿泊施設の腕の見せどころでしょう。たとえば浜名湖畔に建つ「星野リゾート 界 遠州」では、浜名湖名物のウナギをご提供しています。しかし、地元の方にとってウナギという食材は珍しくありません。そこでアボガドと組み合わせた一皿をお出ししています。地元の方が召し上がっても、「こんな組み合わせもあるのか」と新たな発見をしていただける自信の一皿です。旅行を検討している方は、宿泊施設のこうした工夫に注目して宿を選ぶといいかもしれません。

ワーケーションで広がる連泊の可能性

Withコロナ時代に増えてくるだろう旅行スタイルが、もう一つあります。ワーケーション、つまり宿泊先でテレワークをしながら旅を楽しむスタイルです。

イメージしやすいのは、木曜日にポツンと祝日があるケースでしょうか。従来は金曜日に出社しなければいけないため、木曜の宿泊は困難でした。旅行に行きたければ、その直後の土日で1泊2日の日程にするか、金曜日に有休を取って3連泊という日程になっていたはずです。しかし、テレワークが認められるなら、木曜から遊びに来て、金曜日の日中だけテレワークで出勤して、土日もまた旅を楽しむ日程が可能になります。もちろん通常の土日に1日テレワークを足して、2泊3日にするという楽しみ方もできます。ワーケーションは、有休を取らなくても連泊で旅の可能性を広げることができるスタイルなのです。

観光事業者も、ワーケーションに対応したサービスを充実させることになるでしょう。つながりやすいWi‐fi環境を整備するのはあたりまえ。夫婦やご家族でいらっしゃるお客様のために、お部屋以外でテレワークができる空間も整備しなくてはいけません。周囲がうるさいとビデオ会議ができませんから、静かな空間であることが必須です。

ご家族の場合、お父さんお母さんがテレワークしているあいだにお子さんをお預かりするようなサービスも必要です。すでに「星野リゾート リゾナーレ」では、日中にお子さんが参加できるアクティビティを以前より行っています。そして夜はまたご家族で合流して、コロナ対策を徹底した「新ノーマルビュッフェ」を満喫してもらう。こんな過ごし方ができれば、旅が一層思い出深いものになるのではないでしょうか。

構成=村上 敬 撮影=強田美央

星野 佳路(ほしの・よしはる)
星野リゾート代表
1960年、長野県生まれ。83年、慶應義塾大学経済学部卒業後、米国コーネル大学ホテル経営大学院へ留学。91年、現職に就任。「星のや」「界」「リゾナーレ」の3つのブランドを中心にホテル・リゾート施設を展開。

元記事で読む
の記事をもっとみる