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「明日やろう」の無限ループを断ち切ろう! 先延ばし防止のための5つの科学的アプローチ。

  • 2020.7.22
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Photo: Cavan Images

英語で「先延ばし」を意味する単語「procrastination」は、「明日に先送りする」という意味のラテン語「procrastinare」を語源としている。いますぐ取りかかるのが最善とわかっていながら、不必要に先送りしてしまう……これは明らかに人間の不合理な一面が現れた行動であり、無自覚であるケースも多い。悪い習慣を断ち切るためにも、まずはそうした心のクセがあること認識することが大切だ。

自覚がないままにこの習慣を引きずっていると、受け入れがたい結果を招くこともある。最愛の人を亡くした人に、「いちばん後悔していることは何か?」と尋ねたところ、先延ばしがトップだったという調査結果もあるほどだ。愛する人が存命の間にやるべきことをやっておかないと、死別後に大きな心の痛みとなって残ってしまうのだ。

ではなぜ、私たちは物事を先延ばしにしてしまうのだろう? ケンブリッジ大学公衆衛生学研究所のオリビア・レメス博士によると、先延ばしグセは、気が散りがちで衝動に左右されやすい性格や、「どうせ自分には計画をやり遂げられない」という自己評価の低さと密接な関連があるという。

それでも、科学の裏付けがあるステップを踏むことで、先延ばしにしたい気持ちを克服し、望ましいライフスタイルに近づくことができる。早速、レメス博士がオススメする5つの対策を紹介しよう。

1. 取りかかる前の「気の重さ」をやりすごす。

Photo_ Aleksandr Davydov/123RF
Rear view pensive thoughtful woman sitting on sofa, lost in thoughtsPhoto: Aleksandr Davydov/123RF

タスクに取りかかろうとすると、気が重くなったり、上手くいかないのではと気後れしたりしがちだ。そこから不快な感情や、その原因であるタスクから逃れたいという気持ちが生まれ、先延ばしにつながる。

先延ばしで一時的に気が楽になったとしても、長い目で見ると悪い影響がある。先延ばしが当たり前になると、人は遠くにある成果や未来の目標よりも、その場の満足感を優先するようになるからだ。こうした先延ばしは、後悔や心理的苦痛、さらには心の病を引き起こすリスクをはらんでいる。

先延ばしの誘惑に打ち勝ちたいなら、不快な感情から逃げるのではなく、少しの間それを受け止めてみよう。仕事にとりかろうとする時に心の中に湧き上がってくるネガティブな感情を自覚しつつ、粛々とタスクを消化することが大切だ。最初のうちに感じていた不快な感情は一時的なもので、そのうち消え去る。このような束の間の不快感をなだめる術を身につければ、自制心が身につき、自己認識も変わってくるはずだ。「自分は有能だ」と思えるようになり、これがやる気の源泉になる。

2. ポジティブな感情にフォーカスする。

先延ばしを克服するためには、どんな感情にフォーカスするかが鍵を握る。タスクに取りかかろうと思うと、苛立ちやストレスを感じるかもしれない。でも、心がそうしたネガティブな感情に塗りつぶされているかといえば、実はそうではないことも多い。新しいことを学びたい、さらなるスキルを身につけたい、昇進したいといった前向きな願望もあるだろう。こうした気持ちは、どんなにささやかでも確かに心のどこかに存在しているのだ。

私たち人間はみな、どんなときも多様な感情を抱えている。その中から、どの感情にフォーカスするかはその人次第だ。プロジェクトに取り掛かりたくないと考えるのではなく、心を豊かにしたいとか、専門技術を磨きたいといった願望に目を向けて見よう。こうした考え方をすれば、物事に取りかかりやすくなるだけでなく、自分の価値観やモチベーションを意識しているがゆえに、もっと意義ある仕事ができるようになる。

3. 修正はいつでも可能。完璧を目指すのはやめよう。

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Woman in deep depressionPhoto: Katarzyna Białasiewicz/123RF

先延ばしグセを克服し、やる気を高めるためには、「完璧を目指さない」ことも有効だ。やるべきことを前に動けなくなってしまうのは、「完璧にやらなければならない」という思いがあるせいかもしれない。あるいは、「自分には能力が足りない」と感じているのかもしれない。それで、つい先送りしてしまうのだ。

心の準備が整うまで待つのではなく、至らない点には目をつぶってまずは始めてみよう。これは仕事だけでなく、人生の選択を迫られた時にも有効な方法だ。完璧を目指さなければ、行動を起こしやすくなり、ずっと楽にやり遂げられる。一度取りかかってしまえば、修正はいつだって可能だ。このモットーを実践すれば、タスクに対する嫌悪感がワクワクする気持ちに変わり、身構えずに取り組めるようになるはずだ。

4. 行動あるのみ。実は「やる気」は必要ない。

先延ばし行動の奥底にあるのは、「明日の自分はもっとやる気があるはず」という心理だ。だが、未来の自分の感情を予測することの不毛さは、複数の研究で証明されている。

カフェインを断つと決めたのに、「最後に1杯だけ」と自分に言い訳をして、つい手を伸ばしてしまった経験はないだろうか? これを飲み干した直後は、決めたことを守る大変さは実感できないかもしれないが、次の「飲みたい」という衝動が湧き上がってくるや否や、スタート地点に逆戻りだ。

私たち人間には、今の感情がずっと続くと思い込む性質がある。先延ばしについても、やるべきことを今しないことでハッピーな気分になり、明日再びタスクに取り組もうとする時も、この幸福感が続くと思ってしまうわけだ。だが、その甘い予想が当たることはない。

自分の未来の感情など予想できるわけがないと自覚すれば、今すぐに行動するのも簡単になる。というのも、感情を棚上げすることで、やる気の有無にかかわらずタスクに取り組めるようになるからだ。そして一度手をつけてしまえば、勢いが出てくる。勢いがつけば、やる気のタネは徐々に芽吹くはずだ。人は何かに取りかかる前提条件として、やる気や意欲が必要だと考えがちだが、これは間違っている。実際はその真逆で、やる気は行動の後からついてくるものだ。

5. 無意味な空想は時間の無駄。

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Girl Using Smartphone on Bed Before SleepingPhoto: Vadim Guzhva/123RF

先延ばしによる時間の無駄を減らしたいなら、とりとめのない物思いにふけったり、空想に逃げ込んだりするのはやめておこう。日中の私たちが考えていることの中で、3分の1から半分近くは、目の前にあるタスクや周囲の状況と全く関係がないという。

私たちは脇道にそれたり、目的もなくソーシャルメディアのフィードをスクロールしたりして、時間をずいぶん無駄にしている。だが、空想に多くの時間を費やしていると、現実の目標に再び取り組んだり、注意力を保ったりするのが難しくなることが研究で明らかになっている

しかも、空想には習慣性がある。ぼーっと空想をめぐらせる時間が増えるほど、自分でもコントロールが効かなくなり、さらには鬱を引き起こすことすらあるのだ。空想している時、私たちの意識は自分の内面や達成できない目標に向かいがちだ。あるいは、現実の自分とはまるで違う、理想化された自分の姿にうっとりすることもある。このような妄想は否定的な思い込みにつながり、鬱の温床となる。

対策としては、「いま、ここ」に意識を集中させることが効果的だ。手元のタスクなど、いま自分が取り組んでいることに意識を向けよう。実はこれはマインドフルネスの本質であり、健康に生きるための極意でもある。

Text: Dr Olivia Remes

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