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産まなきゃダメ? 職場での「子なしハラスメント」から身を守る方法

  • 2015.4.30
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【女性からのご相談】

子どものいない、40代になったばかりの主婦です。パート勤務している職場の同僚は子どものいる女性がほとんどで、何となく肩身の狭い思いをしています。 お昼の休憩時間なんかも他の皆さんの共通の話題はどうしても子どものことになるため、皆さんが昼食休憩をとる大食堂ではなく、フロアの違う小食堂で食べたりしています。もちろん、子どもがいる人達がハラスメントしているわけではありません。あくまでも自分の気の持ちようだろうとは思っています。でも、同じ職場でも別部門で働いているアラフォーの同僚パートの人に聞くと、「あたしは“何で子どもつくらないの?”って、正社員の女性からモロに言われた」と言います。自分がもし明らかな「子なしハラスメント」にあったとき、どう身を守ればいいのでしょうか?

●A. 経済的に余裕のない人に対する「子なしハラスメント」は悪質ですし、特に子どもが欲しくない人に対する「子なしハラスメント」は“余計なお世話”です。

ご相談ありがとうございます。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。

2015年4月20日発売の『AERA』通巻1504号の『大特集・子どもがいないとダメですか?』では、『いまの日本には、“子どもを持たない”ことが肩身の狭さにつながる、「子なしハラスメント」とも言える空気が広がっている』といった趣旨の指摘をしています。

詳しい内容については記事を読んでいただければよろしいわけですが、ここでは主に“子なしハラスメント”の中でも特に悪質な、経済的な理由で子どもを持つことを躊躇している人に対するものと、これといって子どもを欲しいと思っていない人に対する“子なしハラスメント”からどう身を守るかについて、都内でメンタルクリニックを開業する精神科医にお話を伺いながら、考えてみたいと思います。

●正社員が収入面で恵まれていることを自覚せず非正社員に対し“子なしハラスメント”をしたら、場合によって職場のハラスメント対策委員に報告する必要もあります

『ご相談者さまの同僚の、別部門で働いていらっしゃるかたは、上司にあたる正社員でお子さんをお持ちの女性から、「何で子どもつくらないの?」と言われたということですよね。これは完全にハラスメント行為に該当します。言ったご本人は親しみを込めて言ったおつもりか解りませんが、その正社員の女性はおそらくご相談者さまの同僚のパート勤務の女性の(賞与も含めて)数倍の収入を得ているはずで、さらに退職時には退職金も貰えるはずです。職場における階級面で明らかに上位に居て経済的にも恵まれている正社員女性からそれを言われたら、子どもが欲しくても経済的な理由もあって子どもをつくることに踏み切れないできた同僚のパート勤務のかたは、いたたまれません。言ったご本人が後で気づいて、「しまった!」と反省しているようならまだしも、同じようなハラスメント発言を頻繁にくり返すようであれば、部門の管理職か場合によっては会社のハラスメント対策委員に報告する必要もあるかと思います。放置すると、別のかたがまたハラスメント発言の被害にあう怖れがあるからです』(50代女性/精神科医師)

●経済的な問題がなくても、子どもを持つかはその人の考え方であり、干渉無用です

仮に、言葉による“子なしハラスメント”を受けた側に経済的な問題はないという場合であっても、“子なしハラスメント”は許されるべきものではありません。子どもを持つかどうかはその人、その夫婦の考え方や価値観によるものであり、他人に干渉されるべきものではないからです。

『AERAの記事の中でも指摘されていますが、今は女性がバリバリ働いている程度では、もはや憧れの対象にはなり得ない。夫も子どもいて、仕事もできなければスゴくも何ともない。少子高齢化が進む中で世の中の空気が子育てする人を礼賛し大企業を中心にして各種の子育て支援制度も充実しつつある。イクメンが賛美される。独身の人や子どものいない人にとっては、男女を問わず、生きにくい時代になりつつあります。本来であればその人、その夫婦の価値観に任されるべき“子どもをつくる”という行為が、何だか戦前・戦中の“産めよ、増やせよ”のように、国策で強制された行為のように思えてしまうのは、他人の気持ちを思いやれる人であればみな感じていることだろうと思います』(前出・精神科医師)

●“子なしハラスメント”から身を守るには、子どもがいない本当の理由を隠すこと

『このような空気が蔓延しつつある中で、“子なしハラスメント”から身を守る方法は、“子どもがいない本当の理由を隠すこと”です。経済的な理由が本当の理由である人なら、「子どもは欲しいけど、お金の問題がちょっと……」などと、本音を言ってはいけません。“子なしハラスメント”をする人たちは、「女に生まれたからには借金してでも子どもは産んだ方がいいわよ」的な、わけのわからないことを言いだす怖れがあるからです。また、「子どもは欲しくない」が本当の理由である人も、そんな本音をゆめゆめ漏らしてはなりません。そんなことを言おうものなら、「その価値観、おかしい。絶対におかしい!」と強く否定されるからです。

AERAの記事の中でも30代後半の独身の女性医師の人が指摘していますが、そのような本音はけっして漏らさずに、「子どもが欲しいんだけど、できないの」と嘘をつくことです。ハラスメントをするような人たちから身を守るには、それしかありません。そう言っておけば、ハラスメントをする人たちが、「かわいそうな人ね」と思って、やがてご相談者さまへの関心を失って向こうへ行ってくれるはずです』(前出・精神科医師)

【参考文献】

・『AERA 2015年4月20日号(通巻1504号)』朝日新聞・出版

●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)

慶大在学中の1982年に雑誌『朝日ジャーナル』に書き下ろした、エッセイ『卒業』でデビュー。政府系政策銀行勤務、医療福祉大学職員、健康食品販売会社経営を経て、2011年頃よりエッセイ執筆を活動の中心に据える。WHO憲章によれば、「健康」は単に病気が存在しないことではなく、完全な肉体的・精神的・社会的福祉の状態であると定義されています。そういった「真に健康な」状態をいかにして保ちながら働き、生活していくかを自身の人生経験を踏まえながらお話ししてまいります。2014年1月『親父へ』で、「つたえたい心の手紙」エッセイ賞受賞。

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