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【梨泰院クラス】が描く新時代の【ヒロイン】たち♡韓国ドラマ大人気のワケ徹底解剖!【後編】

  • 2020.7.11
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「韓ドラ」嫌いにこそ観てほしい新世代韓ドラ『梨泰院クラス』

VOCE
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『冬ソナ』以来、それを上回るブームになりつつある韓国ドラマ(以降、韓ドラ)。その大ムーブメントを牽引するのは、ともにNetflixで配信中の『愛の不時着』と『梨泰院クラス』の2作品だ。特に「新たなファン層を開拓」することに成功した『梨泰院クラス』は、韓ドラというだけで敬遠してきた人こそが断然ハマる、”韓ドラの常識破り”がてんこ盛りのドラマなのだ。

主人公パク・セロイをめぐる「恋愛」に”今”そして”未来”を見る

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主人公パク・セロイをめぐる「恋愛」に”今”そして”未来”を見る

『梨泰院クラス』は、米軍基地を持つソウルの街、梨泰院(イテウォン)を舞台に、韓国のフードビジネスのトップを目指す主人公パク・セロイの恋と仕事、仲間との友情、人生を描く物語だ。その中で敢えて本筋を2つに絞れば、「復讐」と「恋愛」となる。前回の「復讐」編に続き、後編ではもうひとつの見どころである「恋愛」について。

メインの女子キャラは「こじらせアラサー」と「IQ160超えのソシオパス」

初恋相手のオ・スア
初恋相手のオ・スア

『梨泰院クラス』が描く恋愛もまた、既存の韓ドラパターンをほとんど踏襲していない。内容的な詳細はネタバレするので避けるが、たとえば主人公パク・セロイと、彼を奪い合う二人の女子たち--初恋相手のオ・スアと、セロイだけを愛するチョ・イソ--のキャラクターはその典型である。

セロイだけを愛するチョ・イソ
セロイだけを愛するチョ・イソ

セロイが高校以来ずっと思い続ける孤児のオ・スアは、セロイの父の世話で高校を卒業。だがその恩人を殺した外食最大手「長家(チャンガ)」のチャン会長親子の援助で進学&就職し、ただいま絶賛隷属中。セロイを「キープ」しつつ、自分で道を切り開く姿に嫉妬もしている「こじらせアラサー」である。一方、セロイのもとで働くチョ・イソは、IQ160の天才のソシオパス(反社会性パーソナリティ障害)。セロイ以外の人間を屁とも思っておらず、合理のみの暴言を連発する「無邪気な悪魔」である。韓ドラが描きがちな「男に望まれる女性像」的ヒロインがどこにもいない。そしてこの二人組が奪い合うセロイは、中卒(高校中退)の前科者で、そういうタイプの数少ない魅力とも言える世慣れた器用さや腕っぷしもない。

VOCE
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意図的にベタを狙った『愛の不時着』--北朝鮮の高官の子息で実はピアノの天才であるジュンヒョクを、南北の高飛車ではあるがしっかりものの美人お嬢様2人が奪い合う--と、その設定は天と地ほども異なる。だが絶対に信念を曲げず、絶対に挫けず、絶対に仲間を捨てず、ふとした瞬間に寂しげな照れ笑いをするセロイを見るうち、ジュンヒョク派からセロイ派へ鞍替えする女子は少なからずいるはずだ。そして「社長を傷つけるヤツは、すべて私が潰す」と、セロイのためならどんな無謀もやってのけ、時には敵にぶん殴られたりもするイソも、応援せずにはいられなくなる。

第十二話の号泣エピソードで、辛い人生を生きる誰もが”セロイ堕ち”

第十二話の号泣エピソードで、辛い人生を生きる誰もが”セロイ堕ち”
第十二話の号泣エピソードで、辛い人生を生きる誰もが”セロイ堕ち”

こうした一般的でないキャラクターは、ドラマの多様性のほんの一部でしかない。セロイが最初に出す店「タンバム」に関わる人物は、トランスジェンダー、元いじめられっ子、元ヤクザ、黒人などバラエティに富み、在韓米軍の本部があるがゆえにダイバーシティな梨泰院の縮図となっている。韓国ドラマでここまで攻めたキャラクター設定はあまりお目にかからないのだが、さらにそこに切り込んだエピソードも盛り込んでくるのが『梨泰院クラス』のすごさだ。

特に印象深いのは、トランスジェンダーのヒョニが、「アウティング(性的指向を他人に公にされること)」の被害に合う第十二話だろう。他人の前に立つことを恐れるヒョニに対し、これまでの韓ドラの「カッコいい兄貴」であれば「逃げるな」と勇気づけるに違いないが、「新しい時代の兄貴」であるセロイが言うことは全く違う。「ここで出ていかないことは、逃げなんかじゃない。お前がお前であることを、周囲に証明する必要なんてない」。老若男女が号泣とともに「セロイ堕ち」する瞬間である。

タイトルに込められた”クラス”の意味を知る、爽快感溢れるラスト

タイトルに込められた”クラス”の意味を知る、爽快感溢れるラスト
タイトルに込められた”クラス”の意味を知る、爽快感溢れるラスト

そして結末にまったく暗さがないところも、これまでの復讐者とは完全に一線を画す。それはセロイが刑務所で一緒だった親分--出所時に「困った時は相談に来い」と別れた--との関係において、特に象徴的だ。チャン・デヒ会長によるメガトン級嫌がらせ百連発のさなか、視聴者は誰もが「今こそあの親分に!」と考える。これまでの韓ドラでは、そうした関係が「ここぞ!」という時に主人公を救うのが常道だったのだ。だがセロイは、ダークサイドの連中とは決して組まない。だからこそ、復讐するほど復讐者自身も辛くなるという「人を呪わば穴2つ」的展開にならない。そしてだからこそ結末は、復讐モノにはありえないほどに爽快さなのだ。

もちろんセロイは復讐を完遂する。自分がずっと夢に見た光景を目の前で実現させる--のだが、それはもはやセロイの中で何の意味もなくなっている。彼はすでにチャン・デヒ会長を遥かに凌駕する、スーパークールなビジネスマンへと成長しているからだ。中卒の前科者だったパク・セロイと、ハズレものだった仲間たちが、辛いことだらけだった人生にもある喜びを学んでゆく--タイトルの「クラス」の意味は、その一点に他ならない。

前編はこちらからチェック▼
韓ドラ【梨泰院クラス】大人気のワケ徹底解剖!主人公【パク・セロイ】の圧倒的今っぽさ【前編】

韓ドラ徹底解剖シリーズ<【愛の不時着】編 も公開予定!

Netflixオリジナルシリーズ『梨泰院クラス』独占配信中

文/渥美志保

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