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買い手市場に一転、それでもWithコロナ時代に転職成功できる人の特徴2つ

  • 2020.6.30
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今回のコロナショックで、転職市場は「売り手市場」から「買い手市場」に変化しました。しかし、転職サービス「doda(デューダ)」編集長の喜多恭子さんは「転職活動がしやすくなったうえ、将来性のある会社を見極める絶好のチャンスとも言える」と語ります。転職に成功するための条件は、そして自分に合った企業を見極める方法は――。喜多さんに、コロナショック後の転職の傾向と対策を聞きました。

売り手市場から買い手市場へ転換

──コロナショックによって、企業の中途採用にはどんな変化が起きているのでしょうか。

ここ数年、中途採用市場はとても活況で、いわゆる「売り手市場」が続いていました。しかし、今年3月の求人数は前年同月の約86%に落ち込んでいます。これに対して求職者数は横ばいで、去年の3月からあまり変わっていません。

【図表1】コロナ前に比べ、求職者数はほぼ横ばいだが求人数は減少

その結果、求人倍率は2017年以来の低水準となり、今年3月の時点で1.43倍にまで低下しています。中途採用市場は、「買い手市場」へ転じていると言えるでしょう。

これを業界別に見ると、コロナを機に採用数が大幅に減ったのはやはり宿泊業や飲食サービス業。そのほかの業界も皆減ってはいるものの、減少幅にはあまり差がありません。どの業界も、中途採用を同程度に絞っていると見ていいと思います。

【図表2】宿泊・飲食サービス業の求人数は大幅減、ほかの業界は減少幅に差がない
働き方の柔軟性を重視する転職希望者が急増

──転職希望者のほうはどうでしょうか。会社選びの基準や希望職種などに変化はありますか?

パーソルキャリア 執行役員で転職サービス「doda(デューダ)」編集長の喜多恭子さん
パーソルキャリア 執行役員で転職サービス「doda(デューダ)」編集長の喜多恭子さん

はい、転職希望者にも変化が現れています。より柔軟に働ける環境を求める傾向が見られ、dodaの検索ワードランキングでもそれまで下位だった「在宅勤務」や「テレワーク」が急上昇しました。

以前は、まず仕事内容や年収などで検索する人が大多数でしたが、今は転職先選びのポイントとして「働き方の自由度」を重視する人が増えています。これはかなり大きな変化です。

また、転職活動に慎重になる傾向も出てきました。職種選びも同様で、売り手市場の時にはジョブチェンジを希望する人も多かったのですが、今はこうした人が減り、経験を生かして同じ職種へと考える人が増加しています。これは未経験者歓迎の求人が減っていることも影響しているのではと思います。

応募数も活動期間も昨年の2倍をイメージして

──企業も転職希望者も変化しているのですね。その結果、転職活動にはどんな影響が出ているのでしょうか。

1人あたりの応募企業数が増え、それに伴って転職活動の期間も長くなっています。現職の経験を生かして転職する人は採用決定も早いのですが、志望職種のスキルがない人は専門学校などで学んでからチャレンジすることも。また、子育て中の女性の中には、コロナによる休校の影響で転職活動を一時中断した人もいますから、それも長期化の原因になっているようです。

現在転職活動中の人や、これから転職を考えている人は、応募数も転職活動の期間も、昨年までの2倍ぐらいをイメージしておいたほうがよさそうです。ただ、ご自身のキャリアの道筋に合った職なら、時間はかかっても必ず見つかります。何社か受けてダメだったとしても、決して悲観しないでいただきたいですね。

今は、優秀な人でも時間をかけてたくさん受けなければいけない時期。もしそれで友人が落ち込んでいたら、私なら「今は皆そうなんだよ」と声をかけてあげたいです。途中で息切れしないように気楽に構えて、この状況下でのサバイブを楽しむ気持ちで取り組んでいただけたらと思います。

今武器になるのは年齢や資格よりも「経験」

──サバイブするにあたって、今だからこそ狙いめの業界や職種などがあったら教えてください。

採用数はどの業界も同程度に落ち込んでいる状況ですが、EC系・通信販売系や通信サービス・IT系の一部大手企業は、ほかの業界に比べて積極的に中途採用を行っています。メディカル系や物流系も強く、こちらもコロナで需要が伸びた結果と言えるでしょう。

ただ、どの企業も今は経験を重視する傾向にあります。そのため、新たに資格を取ってジョブチェンジしようとするよりも、経験を生かして同じ職種を狙ったほうが圧倒的に有利。今の時代に武器になるのは、資格や年齢よりも「経験」なのです。

自分の経験やスキルを棚卸ししておく

──自分の経験を振り返る際に、心がけるべきことはありますか?

どんな仕事をどんな工程で、どれぐらいの裁量を持ってやってきたか。転職活動を始める前に、この3点を細かいレベルまでしっかり棚卸ししておきましょう。自分だけでは客観的に見られないという場合は、友達や同僚に聞く、コーチングを受けるなど第3者の声を求めてみてください。

私は仕事柄、転職希望者とお話しさせていただく機会も多いのですが、「経験と言えるほどの経験がなくて……」と言われる方がたくさんいます。でも、よく話を聞くと、しっかりした経験を積んでいることがほとんど。せっかくの武器を把握しないままではもったいないなと感じます。

──経験の棚卸しは、転職活動の基本とも言えそうですね。

その通りです。それをすることで将来の展望も見えてきますし、自分の武器や足りないものに気づくこともできます。今転職すべきなのか、もう少し経験を積んでからにすべきなのかも見えてくるでしょう。転職先を比較検討する上でも、大いに役立つのではないでしょうか。

経験やスキルはその人の資産です。これさえしっかり把握していれば、何が起きてもサバイブしていけるはず。後は自分の展望がかなう会社を見つけられるかどうかだけなので、明確な意図を持って転職活動できるのではと思います。

転職先の選択肢は広がっている

──その「展望がかなう会社」はどう見極めればいいのでしょうか。転職後のミスマッチに悩む人も多いようです。

例えば、現在勤務中の会社がコロナで業績不振になったという理由で転職するのなら、変化に強い企業を選ぶのがおすすめです。コロナに際してすばやくリモートワークやオンライン面接に切り替えた企業は、この先不慮の事態が起こっても対応できるだけの力があると見ていいでしょう。

また、柔軟な働き方を望む人は、そうした制度や風土があるかどうかも確認して。こうした働き方を望む声は、コロナ以前からライフスタイルの変化がある女性などから多く上がっていました。当時は、この願いに応えられる企業はそう多くはありませんでしたが、コロナを機に在宅勤務や時差出勤を導入するところが増え、転職先の選択肢も広がりつつあります。

コロナショックは、企業の対応力や柔軟性だけでなく、「本気度」を見極める上でもチャンスかもしれません。女性活躍推進や働き方改革推進も、現在の企業の取り組み状況で本気度がわかるように思います。

自社に新しい価値観をもたらそうと本気で取り組んでいた社は、引き続き女性活躍や働き方改善の施策を採用していくはず。その意味では、転職先の体質や実践力は以前より見えやすくなっていると言えそうです。

「本当にいい企業」を見極めるチャンス

──転職希望者は今動くべきか、それとも動かざるべきか。ズバリどちらだとお考えですか?

動くべきです。なぜならコロナは長期化が予想されるからです。終息してから活動しようと思っても、それがいつになるかは不透明です。さらに、今採用に動いているのは逆境に強い企業。採用数を絞って真の戦力を求めている場合が多いので、入社後に活躍の場を得られる可能性も高いでしょう。

ですから、ある程度の経験値があって、かつ転職の目的や展望が明確な人にとってはチャンス。一方、ただ漠然と転職したいという人には、まず棚卸しから始めてみることをおすすめします。

──最後に、転職を考えている方々にアドバイスをお願いします。

Withコロナ時代の転職を成功させる秘訣は、経験を生かせる企業を選ぶこと、たくさん受けることの2つ。今はオンライン面接も普及しつつあるので、移動時間や交通費といった負担も少なくなっています。このメリットを生かして、ぜひ多くの企業を受けてください。

リーマンショック、東日本大震災、そしてコロナ──。危機が起こるたび、働く人の価値観は大きく変化してきました。転職希望者も、ネームバリューや給与ではなく、安定性や将来性、ワークライフバランスなどを重視して企業を選ぶ傾向が強まり、企業もそれに応える努力を始めています。

コロナショック後の転職市場は、売り手市場から買い手市場へと変化しています。しかし、採用率が急激に悪化したリーマンショック時のような絶望感はありません。転職希望者のニーズを満たすような「本当にいい企業」は採用活動を続けており、真の戦力になる経験者を求めています。この機会をチャンスととらえて、ぜひ積極的に転職活動に取り組んでいただけたらと思います。

構成=辻村洋子

喜多 恭子(きだ・きょうこ)
パーソルキャリア 執行役員 doda編集長
1999年、インテリジェンス(現・パーソルキャリア)入社。派遣・アウトソーシング事業、人材紹介事業などを経てアルバイト求人情報サービス「an」の事業部長に。中途採用領域、派遣領域、アルバイト・パート領域の全事業に携わり、2019年に執行役員・転職メディア事業部事業部長に就任。20年より現職。

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