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価格高騰の「金」、傷がついたら価値は下がる?初めて購入時の注意点は?

  • 2020.6.22
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安全資産として人気の「金」
安全資産として人気の「金」

4月に円建て価格が約40年ぶりに最高値を更新するなど、近年、価格が高騰し続けている「金」。戦争や金融危機の際にも価値が暴落しにくいことから、「有事の安全資産」といわれており、今後、資産形成のために購入しようと考えている人も多いのではないでしょうか。

しかし、いざ購入するとなると、どのように保管すればいいのか、保管している間に傷ついたら価値が下がらないかなど、さまざまな疑問があります。もし、金に傷がついたら価値は下がるのでしょうか。また、どのように保管するのが適切なのでしょうか。

貴金属製品の製造・販売などを手掛ける、田中貴金属工業(東京都千代田区)貴金属リテール部の加藤英一郎部長に聞きました。

通常の保管で問題なし

Q.そもそも、金は傷がつきやすい金属なのでしょうか。保有している金に傷がついた場合、価値は下がるのですか。

加藤さん「金は酸やアルカリに強く、非常に安定しており、最もさびにくい金属ですが、とても軟らかい金属です。一般的に、資産用として流通している金の地金(バー)やコイン(金貨)は、落としたり、引っかいたりすると傷がつきます。しかし、傷がついた場合でも金としての価値は変わらないため、通常の保管状態であれば、ほぼ問題ありません。

ただし、地金やコインの品質を証明する刻印やデザインを故意に傷つけた場合や、大きく変形させたり、削ったりした場合、通常の地金やコインとしては買い取りしてもらえない場合があります」

Q.近年、金の価格が高騰し続けていますが、どのような要因が考えられるのでしょうか。また、金を購入する人は増えているのですか。

加藤さん「各国の金融緩和政策や政情不安、2018年ごろから始まった米中の貿易摩擦などがきっかけです。以前は、金相場が上がれば、保有者が売却して利益を得るケースが圧倒的に多かったのですが、ここ数年は、相場が上昇する中でも『安全資産』として購入する人が増えています」

Q.地金(バー)とコイン(金貨)、それぞれのメリットは。また、初めて金を購入する人が気を付けるべきことはありますか。

加藤さん「地金は主に(1)まとまった資産で大きい『金』が購入できる(2)サイズが豊富なので予算によって選びやすい――といったメリットがあります。コインはデザインが美しく、記念品や贈り物にぴったりというメリットがあります。

品ぞろえや手数料などは各社によって違いますが、金の地金もコインも数種類のサイズがあり、予算に応じて選ぶことができます。一般的には、金貨のほか、100グラム以下の地金がとても人気があります。

金は『確かなもの』を入手し、いざとなったら売却できることが最も重要です。そのため、金地金の健全な取引と正しい知識の普及活動を行う『日本金地金流通協会』登録店など、個人情報をしっかり守り、信頼できる店で購入することが大切です」

Q.金を保管する際の注意点はありますか。銀行預金のように、どこかに預けて保管する人もいるのでしょうか。

加藤さん「自宅で保管する人もいれば、銀行の貸金庫を利用する人もいます。当社では、当社で購入した地金を対象とした預かりサービスも行っています」

Q.貴金属には、金のほかにプラチナもありますが、金と比べて硬さに違いはあるのでしょうか。また、プラチナは金よりも採取量が少ないと聞きますが、本当ですか。

加藤さん「金よりもプラチナの方が硬いですが、金もプラチナも一般火災程度の温度では溶けないとされています。そのため、資産用の地金やコインを保管する上では大きな差はありません。プラチナが金よりも採取量が少ないのは事実です。プラチナは採掘できる場所も限られており、1年間に市場に供給される量は、リサイクルも含めて、金の約20分の1です」

Q.プラチナの方が金よりも希少性が高いにもかかわらず、最近、プラチナの価格は金の半値ほどにとどまっています。なぜでしょうか。

加藤さん「2014年以前は、プラチナの方が価格が高い時期が続きました。プラチナの方が埋蔵量、供給量が少なく、採掘のコストが高いため、本来であれば、プラチナ価格が高い方が理にかなっています。

しかし、プラチナは主に自動車産業などの工業製品に多く使用されるため、産業界の状況が価格に大きく影響します。プラチナは主にディーゼル車に使用されており、ディーゼル車の不振などから価格が低迷し、2015年以降は金の価格の方が高い状態が続いています」

Q.金を購入後、値上がりした段階で売却して利益を得た場合、課税対象となるのでしょうか。

加藤さん「給与所得者など個人が金やプラチナの売却によって利益を得た場合、通常は『譲渡所得』とみなされます。譲渡所得には、年間で50万円の特別控除があり、地金の売却益とその他の該当する譲渡益を合わせた金額が50万円を超えた分が課税対象となり、他の給与所得などと合算して総合課税の対象となります。

なお、購入された際の『計算書』など金額が分かるものは大切に保管してください。個別の事例、詳細は所轄の税務署か税理士に確認してください」

オトナンサー編集部

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