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蜷川実花の目に映る東京の今。新作個展がオンライン・オフラインで同時開催

  • 2020.6.16
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写真家という枠を超え、映画監督としても活躍の幅を広げる蜷川実花。その色あざやかな世界観や、つくりこまれるデカダンスなセットに熱心なファンも多い。そんな蜷川実花の新作個展が、渋谷パルコミュージアムで開催中だ。テーマは彼女が生まれ、育ち、そして今を生きている『東京の街』。蜷川実花の過ごす日常の東京、コロナ禍の東京のリアルも含めて“東京の今”を切り取った個展となっている。外出が未だポジティブでない人のためにも、とオンライン展示も同時開催中なので要チェックだ。

過去、東京を舞台にした映画は撮ってきたものの、東京の街そのものは向き合ってこなかったという蜷川実花。いつもは完璧にセットアップされた高性能なカメラで作品を撮り、つくり続けてきた。しかし今回の個展では写ルンですや携帯のカメラを利用し、テーマも自分のプライベートと定めたのだという。

映画を2本撮り終えたタイミングでふと、東京を撮ろうと決めたとのこと。「今ならチャレンジできると思ったんです」と蜷川実花は語る。

実はいつもはカメラを持ち歩かない蜷川。今回東京で自分のプライベートを撮ると決めてからは、写ルンですを常に持ち歩くようになったのだそう。

「写ルンですは日頃使っている一眼レフなどのカメラと違い、機能の大部分は削られているので、自分の“得意技術”を封印せざるを得なかったですね。だからこそ、リアルな日常が出ています。改めて撮った写真を並べると、映画の撮影でスターと会ったり、でも家に帰れば子供がいたり……など、非現実と現実の世界を行き来しているんだなぁと思いました」

確かに蜷川が撮った写真にはさまざまな業界のさまざまなスターがそこかしこに登場する。そんな華やかな世界と、自身の子供たちの笑顔など生活感あふれるショットが混在しているのだ。

そして生活に大きな影を落とした新型コロナウイルスの存在も見え隠れしている。切り取ったのは蜷川の生活だが、それはまさに東京の街のカオス感そのものでもある。

田根剛が手がける会場構成は、その東京のカオス感がうまく表現されている。

壁紙を無造作に剥がしたような板に、大小さまざまなサイズの写真がプロットされており、床には渋谷の交差点の写真などを全面に落とし込んでいる。誰もが東京だとわかるランドマークと、きらびやかな側面と、リアルなシーン。そのミックスされた感じがまさに東京そのものであり、蜷川が「あらためて、東京って面白いと思いました」と語るポイントだろう。

そのカオスさを体感するにはやはり、会場に足を運ぶのが一番だが、「今回は会期も短いし、やっぱりまだ外出するのも憚られる人も多いはず。そんな人たちにも楽しんでもらえるように」と蜷川が語るように、PARCO MUSEUM初の試みとして「オンライン展示」も同時に開催される。こちらはなんと無料だ。

「今はみんな気持ちが塞いでしまう時期でもあるので、間口を広げて作品を公開することで、明るい気持ちを共有したい」

こんな時代だからこそ、本質を見つめ直すことは多い。改めて、自分の生きる街や世界を切り取り、愛おしい世界を再確認した蜷川実花の新作個展。あらためて自分たちの生きる“東京”を考えてみるいい機会になるに違いない。

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