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第37話:ピリオドの向こうへ / 三羽の蝶々話 連載【誰かの話】

  • 2020.6.5
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第37話:ピリオドの向こうへ / 三羽の蝶々話 連載【誰かの話】
出典 FUDGE.jp

外山夏緒さんの物語の連載【誰かの話】37話めは、「蝶々たちの最後のファン活動」のお話です。

 

 

37. ピリオドの向こうへ

 

三羽の蝶々が

夜のハイウェイをぶっ飛ばしている。

 

今夜、蝶々たちが大好きなバンドの解散ライブがあって、

三羽はその会場に向かってるらしい。

 

本当はこのライブが行われるのは昨年のはずだったのだが、

残念ながらその年は天候の関係で中止になってしまっていた。

 

延期された一年後の今日、ついにライブが行われることになり、

三羽の蝶々は、はち切れんばかりにその羽をフル回転させ、

間も無くはじまるライブの会場に向かっている。

 

この蝶々たちの通常の平均寿命は

どんなに健康に生きていても「一年」と言われていた。

なので今頃はとっくに死んでいるはずだった。

 

予定では、昨年のライブを見納めてから

その生涯に終止符が打たれる予定だったのに、

想定外にライブが延期になったものだから、

三羽の蝶々は、通常の寿命からさらに一年の間、

あらゆる手段を用いてその寿命を必死に延ばし続け、

今夜、改めてライブに向かっている。

 

「このメンバーで、

彼らの最後の音楽を聴けることが生涯最大の誇り」

と、三羽の蝶々は最後の力を振り絞りながら、

夜のハイウェイをぶっ飛ばしてる間、

この日まで生き延びたことを互いに讃えて合っている。

 

すでに羽もボロボロである。

最後のライブの開演時間が迫っている。

 

第37話:ピリオドの向こうへ / 三羽の蝶々話 連載【誰かの話】
出典 FUDGE.jp

 

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絵をはじめ、詩や物語の制作、それらで展開したインスタレーションを行うなど、多岐にわたって活動をしている、gungulparmanの外山夏緒さん。この連載は、彼女が自身のWEBで発表していた「誰かの話」を「ラジオと火星人とコーヒーフロート篇」として、新たにグラフィック作品を加えてお届けしていきます。この世界のどこかにいるかもしれない「誰か」の日常を切り取ったお話を、お楽しみください!

 

Text & Illust_Toyama Natsuo

 

第37話:ピリオドの向こうへ / 三羽の蝶々話 連載【誰かの話】
出典 FUDGE.jp

外山夏緒

2015年より、絵や詩、物語で展開したインスタレーションなどの美術活動をスタート。他、イラストレーション、空間装飾、グラフィックデザインなどで活動中。その他、自身のプロダクトブランドgungulparmanでの商品制作やアートワークなども行う。

WEB:gungulparman.com

Instagram:@gungulparman

 

 

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