1. トップ
  2. ライフスタイル
  3. 悩める女性のために選んだ一冊とは?/木村綾子の『あなたに効く本、処方します。』

悩める女性のために選んだ一冊とは?/木村綾子の『あなたに効く本、処方します。』

  • 2020.6.3
  • 4266 views

木村綾子さんがさまざまな業界で活躍する「働く女性」に、今のその人に寄り添う本を処方していくこちらの連載。前回に引き続き、今回もハナコラボ・パートナーから寄せられたアンケートをもとに、木村さんがご自宅の本棚からピッタリの一冊を提案してくれました。

今回も、木村さんのご自宅からお届け!

前回に引き続き、ハナコラボ・パートナーから寄せられた、ちょっぴりプライベートなお悩みをもとに、木村さんがご自宅の本棚からピッタリの一冊をセレクト。今回は『Hanako.tokyo』でも連載を持つ “あの人” や、Hanako本誌にもよく登場する “あの人” からのお悩みが届きました。担当編集・植村とのZoom会議の様子をどうぞご覧ください~!

undefined
前回に引き続き、自宅から“本処方”に臨んでくれた木村綾子さん。
undefined
担当編集の植村。前回紹介された『女がそんなことで喜ぶと思うなよ(鈴木涼美)』を読んで、最近女性に対しておどろおどろしい気持ちになっているんだとか。

お悩み その1「プレゼントにぴったりの一冊を知りたい」

編集・植村(以下、植村)「1人目は、フリーランスでPRをされている児島麻理子さん。前回に引き続き、面白いリクエストをいただきました」
木村綾子さん(以下、木村)「Bar連載の方だよね。あれから私もつい見ちゃうようになったんだけど、先月の回、動画レシピついてなかった?!」
植村「そうなんです、僕も驚きました!今回もなかなかのイケメンバーテンダーが登場してましたね(笑)前回は “お酒のお供になる本” とのことでしたが、今回は “お友達へのプレゼント” ということですね」
木村「相手のことを思いながらする本選びって、幸せだよね。今回は画家のお友達だから、彼女の創作に何かインスピレーションを与えられるような本を贈れたら、最高だね!」

処方した本は…『祝婚歌(谷川俊太郎 )』

undefined
書肆山田出版/1981年初版刊行
undefined
『祝婚歌(吉野弘)』
undefined
『祝婚歌(吉野弘)』
undefined
「著名な詩人が「愛」をテーマに紡いだ言葉に触れられる」(木村さん)

木村「この本には、詩人の谷川俊太郎さんが選んだ、結婚にまつわる詩が27収められているの。谷川さんの序詩からはじまって、室生犀星、茨木のり子、田村隆一、金子光晴、佐藤春夫…、著名な詩人が「愛」をテーマに紡いだ言葉に触れられるから、結婚祝いとしてじゃなくても、私はけっこう贈り物として選ぶこともある一冊なんだ。絵を描く人が、詩を読んでどんな感想を抱くかも、気になるなぁ!」
植村「装丁も素敵ですね。たしかにプレゼント向きかも。ちなみに木村さんは文章を書くとき、何かからインスピレーションを得ることはありますか?」
木村「うーん。そうだなぁ…。直接のインスピレーションとは違うかもしれないけど、私は原稿に行き詰まったときは料理をすることが多いかな。私、料理ってあんまりレシピとか見ずに感覚でやっちゃうんだけど、これとこれ組み合わせてみようとか、あれも入れてみようとかやってるうちに、不思議と頭の中が整理されていくんだよね」
植村「おもしろいですね!」
木村「今回あらためてこの本のタイトルにもなっている吉野弘さんの「祝婚歌」を読み返してみたんだけどね…。「正しいことを言うときは 少しひかえめにするほうがいい 正しいことを言うときは 相手を傷つけやすいものだと 気付いているほうがいい」っていう言葉がすごく響いたなぁ。自粛期間中、SNSにものすごく言葉が飛び交ったでしょう? たとえそれが正しかったとしても間違っていたとしても、言葉の威力は凄まじくって、人を救うし傷つけもする。私自身、このタイミングでこの詩に再会できてよかったよ。児島さんに感謝しなくっちゃ」

お悩み その2「年齢にあったお洒落を楽しみたい」

植村「続いては、大木南さん。主婦の方からです。彼女は今まで着ていた洋服が、急に自分と合わなくなってきているみたいで悩んでおられます」
木村「これ、私も経験があるんだけど、30代ってこういう時期が何度か訪れるんだよ! 何年も着れてた服や、好きで毎シーズン買ってたブランドの服が、あれ?なんかしっくりこない!どうして!? みたいな」
植村「読んでいた雑誌や、好きだったお店とかも変わってくる感じですか?!」
木村「変わるというか、変えざるを得なくなるっていうか…。ファッションってときに残酷なまでに現実を突きつけてくるから、すごいよね。もう似合わなくなっちゃったのに、「でも私はこういうのが好きだから!」って意固地に変化を認めないでいると、いわゆる “イタい” 人になっちゃう訳で…。年齢にあったお洒落っていうのはすごく大切なことだと思うな」

処方した本は…『40歳までにオシャレになりたい!(トミヤマユキコ)』&『オシャレな人って思われたい!(蜂なゆか)』

undefined
ともに扶桑社出版/2018年初版刊行
undefined
「オシャレを通して自分と向き合っていく、痛快で実用的でもあるエッセイ」(木村さん)

木村「お悩みメールからでは、大木さんのファッションの傾向がどういうものなのかまでは分からなかったから、今回は2冊紹介してみよう! タイプは違うんだけど、どちらも、オシャレにまつわる悩みや葛藤を赤裸々に綴りながら、オシャレを通して自分と向き合っていく、痛快で実用的でもあるエッセイです」
植村「たしかに、表紙のイラストを見ても、お二方の ”オシャレ” のニュアンスは少し異なりそうですね」
木村「トヤマユキコさんの本には、“おもしろい服好き”を自認している彼女が、個性的なファッションを選んで「オシャレ圏外」に出ることで、世間のファッションチェックをかわし続けてきた過去を乗り越えるべく、試行錯誤を重ねる様が描かれているの。野暮ったく見えないグレーのパーカーの着方、とか、素敵女子の肩掛けカーディガンはなぜズリ落ちない!?とか、結婚式のたびにタンスに死蔵されるワンピース問題、とか…。雑誌を参考にしたり、自腹切って買い物をしたり、プロの手ほどきを受けたりしつつ、自分で自分の見た目をコントロールする術を身につけていくから、同志を得たような気持ちで読めるんじゃないかな?」
植村「ご自身が試着している写真やイラストも満載で、実用的ですね!」
木村「いっぽう、峰なゆかさんの本は、過去の経験から、非オシャレな人がオシャレを頑張ろうとすればするほど、オシャレからは遠ざかってしまうことは理解した。それならせめて、オシャレな人って錯覚されるような人を目指そう!って観点が斬新で面白いんだよね」
植村「峰なゆかさんって『アラサーちゃん』の作者でもありますよね。あの鋭い視点がオシャレにフォーカスしたとしたら…。想像するだけでもう面白いです!」
木村「「峰さんは本体がもう雌ヒョウ!って感じだから、これ以上ヒョウ要素足しじゃダメですよ!」って言われたことをきっかけに、自分に似合う服を見つめ直していく話とか、好んでヒールを履いてるのに、男性から「俺はスニーカー“で”いいんだよ」って言われたときの違和感とか…。かかと角質との戦いや、アンチエイジング、デリケートゾーンのケアについてまで…! ファッションはもちろんだけど、ライフスタイルそのものの美学を観察&分析しているから、普段あんまり人に聞けないような情報も得られると思うな」

お悩み その3「弱音や悩みを人に言いにくい」

植村「最後は菅原草子さん。職業は弁護士!『Hanako.tokyo』で4月から、お悩み相談の連載をスタートさせた方ですね」
木村「見た見た!『テイクアウトで注文したけど、会計後にイートインにしたくなった…これって大丈夫?』ってやつでしょう?!」
植村「そうです!ハナコ版の “ギョーレツ” みたいな感じですよね」
木村「彼女もきっと面白い方だよね。だって、武装のために、あの最難関試験とも呼ばれる司法試験をクリアして弁護士になっちゃうなんて!(笑)」
植村「僕も、そのモチベーションでそこまで行ってしまえるのか!って感心していました。いま興味がすごいです…」

処方した本は…『漂うままに島に着き(内澤旬子)』

undefined
朝日新聞出版出版/2016年初版刊行
undefined
「いろんな偶然の重なりに身を任せて人生の大きな決断をしてしまえる姿に、さっぱりした気持ちよさを感じる」(木村さん)

木村「著者の内澤さんとは、何度か一緒におしゃべりをしたことがあるんだけど。本当に素敵で、強い芯を持ったしなやかな方なんだよね。でも実はそんなに常に自信持って生きてきたわけじゃないよってことを、この本の刊行イベントのときに話してくれたことがあって」
植村「まさに、今の菅原さんですね」
木村「この本には、文筆家・イラストレーターとして東京で生活されていた内澤さんが、乳がん治療と離婚を経験されたのち、40代で単身、小豆島に移住すること決めた顛末が描かれているの」
植村「どうして、小豆島なんですか?!」
木村「それがまさにタイトルにある通り、“漂うままに”で、そんな風に、いろんな偶然の重なりに身を任せて人生の大きな決断をしてしまえる姿にも、さっぱりした気持ちよさを感じるんだよ。でも実際には、外見や性格のイメージからかけられた、「内澤さんが地方で暮らせるわけがない」っていう呪いの言葉と戦っていたり、それこそ、またいつ再発するかも分からない病気への不安を抱えていたりもして…。それでも島での生活を始めた彼女は、初めて出会う人との付き合いを通して、改めて自分を知っていくの。場所が変わっても変えられない部分や、変えられないと思ってたけど思いの外簡単に変えられた部分、それから、まったく新しい一面も…」
植村「お悩みを寄せてくれた菅原さんは、弁護士さんなので、今の場所や職を離れられない理由もたくさんあると思いますが、内澤さんの生き方を通して、彼女自身も自分を見つめ直せるかもしれないですね」
木村「そうね。資格を取ったり、キャリアを築いたり、年収を上げたり…。努力して得て、磨き続けてきた武器はもちろん自分の強みになるけど、自分がどんな仕事をしていようとどんな過去を持っていようと「ここにいていい」って受け入れてくれる人の存在ほど頼もしいものはないもんね。菅原さんにとってのそういう存在が見えてくる一冊になったらいいな」

ちょっとだけ、ひと言(ゆるめ)。

この連載用の、ZOOMを使っての撮影(スクリーンショットのこと!)も今回で2回目。「照明はないし(いっつもないか!)画像は荒いしで大丈夫かな」とか心配していたけど、案外これもこれで盛れているような気がしてきて、楽しくなってきている今日この頃。
本にまつわる他のお仕事状況はというと…。オンラインという場所で本と人とを繋げる方法にももいろんな可能性が見えてきて、現地でのイベントができるようになったらこりゃ、リアル+オンラインで更に賑やかになっちゃうじゃんと相変わらず前向きに、ひらめきを形にするべく日々奮闘中。
この連載も、次回はどんな形でお目にかかれるのでしょうか兎にも角にも引き続き、お楽しみに〜!

元記事で読む
の記事をもっとみる