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出社する管理職は不満?「テレワーク」は今後も続くのか、現場社員たちの声

  • 2020.6.1
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テレワークは今後も続いていく?
テレワークは今後も続いていく?

5月25日に緊急事態宣言が全面解除されましたが、宣言中は新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、「テレワーク」を新たに導入する企業やこれまで以上にテレワークを活用する企業が増えました。現在、多くの企業でテレワークは「臨時」という位置付けですが、宣言解除後も各企業でテレワークは続けられるのでしょうか。実際に現場で働く社員の、予想の声を拾ってみました。

「テレワークは不公平」と上司が冗談

電子機器メーカーの法務部に勤めるAさん(36歳、男性)の職場では昨年から、週に1日のテレワークが導入されていました。現在は社員が交代して出社し、残りの社員はテレワークという態勢を取っています。

「(今後、テレワークが増えていくかは)正直、分からないです。テレワークをする環境は、新型コロナウイルスの感染拡大前からすでに整っていたので、戸惑いがなかったのは幸いでした。しかし、さすがにテレワークの日が一気に増えすぎたので、各所で業務に滞りが出ているのが目につきました。

『業務フローをもっと、しっかりとテレワーク用に構築しておけば、テレワークの日が増えたとしても問題ない』という声がある一方で、特に役職が上の人は『(テレワーク日の増加によって)業績がどう変化していくかが重要なので、慎重に判断すべきだ』と考えているようです。

そのため、テレワークの日が増えることは試験運用として一時的にあるかもしれませんが、本格的に導入される可能性があるとするなら、もう少し先の話になりそうです。私の直属の上司(課長)は『(ハンコを押す権限がある中間管理職は一般社員に比べて出社する機会が多いため)不公平だから、テレワークはなしにして、みんなで出社するべきだ』と冗談交じりに主張しています」(Aさん)

社内の役職によって立場や業務内容が違うので、そこから出てくる意見もそれぞれ違うものになります。社員の間で要望が対立している場合は、不満をなるべく少なくするために折衝が必要です。経営サイドとしてはそこにも配慮しつつ、慎重に決定を下していくのでしょう。

東京五輪を見越していた企業では…

システムエンジニア(SE)のBさん(38歳、男性)の会社では新型コロナの前から、育児や介護など家庭の事情があれば、週に1~2日のテレワークが認められていたそうです。今回の新型コロナの感染拡大を受けて、こちらもAさんの勤め先と同じく、交代制で出社する態勢となりました。

Bさんは「経営陣がどう判断するかなので、分からないけれども…」と前置きした上で、「おそらく増えると思う」と話します。

「会社の最寄り駅が都内の主要駅のため、今年7月に東京五輪が開幕する想定で、そのときは出社規制が実施される予定でした。出社規制の内容は『限定的なフレックスタイム制によるピークオフ』と『テレワーク拡大』です。

そのための準備が社内で進められていたので、テレワークの環境がほとんど整っています。私の周りでは(テレワークが増えた現在の臨時態勢の)評判がよいので、今後も特に大きな問題が出なければ、増えるのではないかと思います」(Bさん)

あえなく、2021年7月開幕(予定)に延期になってしまった東京五輪ですが、そのために行われてきた各方面での準備は無駄になりません。五輪の年と新型コロナの感染拡大が重なったのは不幸な偶然でしたが、Bさんの勤務先のように“五輪時の出社規制”を準備してきた企業にとっては、感染拡大がテレワーク増加のきっかけとなり得ます。

「交代制か、挙手制か」議論進む

家電メーカーで営業職のCさん(33歳、女性)の勤務先も、Aさん、Bさんと同様、交代出勤制のテレワークが導入されました。

「現場社員のテレワークに対する評価は『よいところもあれば悪いところもある』です。普段は、オフィスで周りの社員とコミュニケーションを取りながら仕事しています。具体的には『商談の方向性を相談し、うまくいったら褒める、褒めてもらう。うまくいかなかったら、励ましたり、改善点を指摘したりする』などです。

自宅でも、商談は電話で滞りなくできますが、1人で黙々と仕事をすることになるため、特に商談がまとまらないことが続くと気分がふさぎがちになります。そのため、同僚は口をそろえて『普段の周りとのコミュニケーションがいかに大切かを知った』と言っています。

出社する必要がないのは楽で、その点は大いに気に入っていますが、今はすっかり、ほとんどの日がテレワークという日常に慣れてしまい、『週5の出勤に戻ったとき、きちんと出社できるのか心配』とみんな話しています」(Cさん)

Cさんの勤務先では、「今後は9割の人が出社で、1割の人がテレワーク」という話になっていて、テレワークをする人の決定を「交代制にするか挙手制にするか」の議論が進められているそうです。

「挙手制なら、やりたいと思っている社員は多いと思うので結構な倍率になりそうです。ただ、うちの会社は見栄えを結構気にするので、『育児などで大変な人にとっても、働きやすい会社です!』というアピールとして、テレワークを運用しそうな雰囲気があります。その場合は挙手制でも、事情が認められた人に限ったテレワークということになりますね」(Cさん)

今後、テレワークを導入していく企業がどれくらい増えるかは分かりませんが、少なくともコロナ禍以前よりは多くなりそうです。そして、テレワークが導入された企業では、経営者と従業員が新しい勤務形態の中で、新しい“仕事との向き合い方”を模索していくことになります。そうした現場では、今回の取材で聞けた話を参考にするなら、「新しいことが始まる期待感」と「慣れない業務フローによる戸惑い」のせめぎ合いが予想されます。

テレワーク導入の成果を判断するには、各企業とも今しばらく様子見が必要で、「吉」と出るか「凶」と出るかというところですが、2020年が“日本人の働き方の転換期”となる可能性は十分あり得そうです。

フリーライター 武藤弘樹

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