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デザイン会社勤務からパン職人へ。日本橋浜町〈Boulangerie Django〉に並ぶ、アートのようなパンたち。

  • 2020.5.15
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パンラボ・池田浩明さんによる、Hanako本誌連載「まちをつなげるパン屋さん」を掲載。今回は、東京都中央区にある〈Boulangerie Django〉をご紹介します。

舌が記憶したパンの正解を追い求めた味がヒット。

普通のパン職人となにかちがう雰囲気をまとう川本宗一郎シェフ。いうなれば「こじらせ系」。「25、6歳の頃、勤めていたデザイン事務所を逃げ出して、軽く鬱になってひきこもった。お金がなくなって、じゃあパン屋にでもなろうかって。血迷ったんだよね」

父親の仕事の都合で、海外暮らしが長く、舌が肥えていた。「その頃の日本のバゲットは、パリのバゲットとあまりにも差があった。有名店だって、僕には不満。うぬぼれだけど、僕の中にはじめから『正解』があった」正解は見えていたが、それを作る技術を身につけるまでは遠かった。Macで仕事をしていた人が25キロの粉袋を持って、先輩に怒られながら仕事をするようになるのだ。辛さに耐えかねて、挫折もしたが、パン職人の妻と巡り会い、江古田で開業を果たした。

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「鶏とカリフラワー」470円。ビーツ入りパンに、厳選したつくね、ローストしたカリフラワー、ナスをはさみ、自家製ゴマドレで味付け。パンも具材もすべてクミンでまとめあげる。

なにしろこじらせ系だけに、普通のパンは焼かない。どれもアートの気配がにじむ。代表作は、パープルレッドが異彩を放つ「ビーツ」。ビーツをオーブンで焼き、ミキサーで混ぜこむと生地はみるみる美しい色彩に染まり、厨房に満ちていたビーツの香ばしさを吸いこんでいく。

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「パテ・ド・カンパーニュサンド」470円、「コーンパンサンド」470円。〈ジャンゴ〉のパンはランチ、朝食だけではなく、夕飯やお酒にもぴったり。
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オリーブを入れた「パン・オ・ゾリーブ」200円、「フォカッチャ」200円。

ほかに、コーンのパン、じゃがいものフォカッチャ、セーグル、種類のバゲット...。個性的な食事パンは、ほかの食材と合わせるとますますおもしろい。手軽に体験するならサンドイッチ。コーンパンサンドには、回転寿しにヒントを得たという炙りサーモンにズッキーニ、ディルをたっぷり。ちょっと記憶にないほどおいしいのは、コーンパンの甘さが具材をまとめあげるから。

手仕事の町、日本橋をチョコレートで味わう。

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ベトナムの契約農家から仕入れた原料を、バーだけでなく、ボンボン、パフェなどさまざまに表現。「チョコレートプリンと和紅茶のセット」900円。和紅茶もサイフォンで淹れている。
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村田友希シェフ。

昨年、移転した日本橋浜町の水が合っていたのだろう、次々とパンが売れていく。40代も半ばを過ぎての、大ブレーク。老舗が軒を連ねる「本物を愛する町」が川本さんのオリジナリティを熱狂的に迎え入れたのだ。ご近所の〈ネル クラフトチョコレート トーキョー〉も昨年開業の新店で、「パンにかけるチョコ」を〈ジャンゴ〉で販売する間柄。浜町にとがった店が集まりつつある。

〈nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO〉
東京都中央区日本橋浜町3-20-2 HAMACHO HOTEL内
03-5643-7123
10:00〜20:00(カフェ19:30LO)休みはホテルに準ずる
22席/禁煙

〈Boulangerie Django〉

川本宗一郎シェフによる遊び心いっぱいの店。目移りするほどたくさんのサンド、大きく焼いたハード系、お酒のアテになるしょっぱい系のパン、クロワッサンやデニッシュも色とりどり。

東京都中央区日本橋浜町3-19-4
03-5644-8722
8:30〜18:00水木休

池田浩明 いけだ・ひろあき/パンラボ主宰。パンについてのエッセイ、イベントなどを柱に活動する「パンギーク」。著書に『食パンをもっとおいしくする99の魔法』『日本全国 このパンがすごい!』など。 パンラボblog

(Hanako1184号掲載/photo:Kenya Abe)

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