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異常すぎて上映禁止だった「非娯楽」映画『アングスト/不安』が37年の時を経て劇場公開へ

  • 2020.5.14
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1983年にオーストラリアで公開されるも、その異常すぎる猟奇性や危険性から世界各国で上映禁止となった実録スリラー映画『アングスト/不安』が7月3日より日本全国順次公開となる。(フロントロウ編集部)

正気を保てるか?恐怖の映画『アングスト/不安』

映画『アングスト/不安』が、2020年7月3日より日本全国順次公開となることが決定した。

1983年にオーストリアで公開された本作は、あまりにも異常かつ、あまりにも危険な傑作映画と呼ばれており、1980年に同国で実際に起きた殺人鬼ヴェルナー・クニーセクによる一家惨殺事件を映画化した実録スリラー作品。

刑務所出所後の殺人鬼が感じる不安やプレッシャーによる異様な行動と心理状態を凶暴かつ冷酷非情なタッチと斬新なカメラワークを用いて表現しており、犯人自身のモノローグで綴る構造や全編にわたる陰鬱なトーンなど、類を見ない芸術性を発揮した衝撃的作品でもある。

米映画サイトTaste of Cinemaが選ぶ「史上最もダークなシリアルキラー映画」では、映画『ヘンリー』、『セブン』、『ハウス・ジャック・ビルト』などを抑え、堂々の第1位を獲得。広義で“おそろしい映画”としては、『悪魔のいけにえ』が放つ存在感と同次元で語られ、世界的に唯一無二の傑作として捉えられている。

しかし、公開当時はそのショッキングすぎる凄まじい内容により本国オーストリアでは1週間で上映打ち切りに。さらに、ヨーロッパでも上映禁止、イギリスとドイツではビデオの発売も禁止。アメリカでは「成人向け」を表す「X指定」のさらに上をいく「XXX指定」を受けて配給会社が逃げだしたほど。実際に発生した事件を描いている上に、倫理的に許容しがたい設定、描写が含まれており、「本作は娯楽を趣旨としたホラー映画ではありません」という注意が書かれるほどの「非娯楽」映画。

日本でも当時は劇場公開されず『鮮血と絶叫のメロディー/引き裂かれた夜』というタイトルで1988年にレンタル用VHSが発売されたものの、世の中に出回った数はごくわずか。ほぼ誰にも観られることなく地下に埋もれ、以降観たくても観られない作品となり現在に至る。

映画『アングスト/不安』のスタッフは?

この「早すぎた傑作」でメガホンをとったのは、殺人鬼の心理を探るという崇高な野心のもと全額自費で本作を制作したジェラルド・カーグル。本作は彼の唯一の監督作品。また、観る者を冷徹な世界へ誘う、不穏なエレクトロサウンドを手掛けたのは、元タンジェリン・ドリーム、アシュ・ラ・テンペルの作曲家クラウス・シュルツ。犯人が内に秘めた”不安“をアーティスティックなカメラワークで映し出したのは、アカデミー賞最優秀短編アニメ賞を獲得した『タンゴ』やジョン・レノン、ミック・ジャガーらのMVで知られる世界的な映像作家ズビグニェフ・リプチンスキ。

今回、解禁となったビジュアルは、映画『U・ボート』、『アンダーワールド』の俳優アーウィン・レダー扮する殺人鬼K.が眼も口も大きく広げ、暗闇で何かを叫ぶ顔をアップで捉えている。その異様な表情から、本作の凄まじさを伝えるこの日本オリジナルのビジュアルをジェラルド監督もたいそう気に入り、特に色合いを絶賛、「素晴らしい。見事だ」と表現した。

画像: 映画『アングスト/不安』のスタッフは?

映画『CLIMAX クライマックス』や『カルネ』のギャスパー・ノエ監督は、自身の作品にて本作へのオマージュを捧げ、映画『ファニーゲーム』のミヒャエル・ハネケ監督の初期作品とも類似性が高いと語られる本作。世界各国で上映禁止となった映画史上最も恐ろしい映画でありながら、このまま隠しておくわけにはいかない、異様で危険すぎる唯一無二な傑作『アングスト/不安』は、7月3日より日本全国順次公開。

※配給元のアンプラグドによると、以下のような注意喚起がされているので、鑑賞する人は注意して。「本作は、1980年にオーストリアで実際に起こった事件を描いております。当時の司法制度では裁ききれなかった為に発生した事象であり、本映画をきっかけとして以降大きく制度が変わりました。劇中、倫理的に許容しがたい設定、描写が含まれておりますが、すべて事実に基づいたものであります。本作は娯楽を趣旨としたホラー映画ではありません。特殊な撮影手法と奇抜な演出は観る者に取り返しのつかない心的外傷をおよぼす危険性があるため、この手の作品を好まない方、心臓の弱い方はご遠慮下さいますようお願い致します。またご鑑賞の際には自己責任において覚悟して劇場にご来場下さい。」

(フロントロウ編集部)

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