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個人事業主は社会保険に加入できる?条件&手続き方法をFPがわかりやすく解説

  • 2020.5.12
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会社員から独立して開業するにあたり、注意しなければならないのが社会保険です。社会保険の取り扱いは会社員と個人事業主で違う点が複数あるので、間違えないようポイントを掴んでおく必要があります。

そこで本記事では、事務所やお店などを経営する個人事業主の方が社会保険に加入する際の注意点について詳しく解説します。

個人事業主でも加入が必須の社会保険&条件とは?

そもそも社会保険というと法人のイメージがあるかもしれませんが、個人事業主の場合の扱いはどうなるのでしょうか。

法人の場合は従業員の人数に関係なく、必ず社会保険に加入しなければなりません。対して個人事業主の場合は、常時雇用する従業員が5人未満であれば、社会保険への加入は任意です。

よって、常時雇用する従業員が5人以上の規模になると、個人事業主だとしても社会保険への加入が義務付けられているということになります。

義務化されている社会保険とは

社会保険とはいくつかの社会保険制度を総称した言い方で、実際は以下のような種類があります。

  • 国民健康保険
  • 介護保険
  • 年金保険
  • 雇用保険
  • 労災保険
国民健康保険

毎月一定の健康保険料を負担することで、医療費の自己負担割合が3割になるという制度です。残りの7割は健康保険組合などが負担します。会社員は健康保険に加入しますが、個人事業主の場合は国民健康保険に加入することとなります。

会社員の場合は健康保険料が給与から天引きされて支払われていますが、個人事業主の場合は自分自身で支払うため注意が必要です。

国民健康保険料の算定 国民健康保険料は、本人の前年の所得に応じて変動する形となり、高所得なほど保険料は高くなります。対して、国保組合に加入する場合は毎月の保険料が一定ですので、高所得の個人事業主に関しては国保組合の方が保険料負担が軽くなるのです。

また、国民健康保険は世帯ごとに加入する形となるので、世帯全体の収入に対して保険料が決まるという形になります。

介護保険

介護保険は2000年からスタートした社会保険の1つです。介護保険を適用することで、介護にかかる費用の自己負担額を1~3割程度に軽減できるという制度です。

高齢化が進んでいる日本において、原則40歳以上の人は介護保険料を負担しなければなりません。これは途中で定年退職するなどして収入がない人も支払う必要があるため注意が必要です。なお、個人事業主については会社員の場合と保険料の支払い方法が異なります。

個人事業主は全額自己負担 40歳以上65歳未満の場合、健康保険料と介護保険料は一緒に請求されて毎月支払うこととなります。

会社員の場合は労使折半なので、保険料のうち半分を会社が負担して、残り半分を本人の給与やボーナスなどから控除することで支払います。そのため、会社員の中には自分で負担している認識がない人も多いようです。

対して個人事業主の場合は全額自己負担となり、世帯のうち40歳以上の人の国民健康保険料と介護保険料を全員分支払うこととなります。

年金保険

いわゆる年金のことで、20歳以上の人が一定期間にわたって支払った保険料に対して、老後に年金が支払われるという社会保険制度です。年金保険は会社員と個人事業主で大きな違いがあります。

個人事業主は1階立て 個人事業主が加入できるのは国民年金のみで、それ以上の上乗せは原則としてありません。対して会社員の場合は、厚生年金と国民年金の2階建てになっているので、保障が厚く実際に受け取れる年金も多くなります。

さらに、会社員は保険料が会社と折半なのに対して、個人事業主の場合は全額自己負担なので、費用対効果で考えると会社員の方が有利なのは否めません。

ただし、厚生年金の掛け金は会社員の給料に比例して高くなりますが、国民年金の保険料については収入の多寡に関係なく一定で、年々経過するごとに徐々に高くなっていきます。

個人事業主が2階建てにする方法 厚生年金のない個人事業主でも年金を上乗せしたいという場合は、別途国民年金基金に加入するという方法もあります。

また、国民年金基金に積み立てるほどのキャッシュを準備できないという方については、毎月400円程度の負担で年金額を上乗せできる付加年金に加入することも選択肢の1つです。

個人年金も視野に入れよう 個人事業主は厚生年金に加入できないため、将来受け取れる年金額が会社員に比べるとどうしても少なくなってしまいます。

そこでおすすめしたいのが個人年金保険です。個人年金保険とは、将来まとまった保険金を受け取るために毎月保険料を支払うもので、保険金を一括で受け取る方法と、月ごとに分けて受け取る方法などがあります。

将来的に引退した時の年金を考えると、個人年金保険に加入するなど、何らかの対策は打っておいた方がよいでしょう。

雇用保険の加入義務

従業員が仕事を辞めた時の生活を保障するための保険制度です。雇用保険というと法人が加入するイメージですが、個人事業主であっても従業員を1名以上雇用している場合は加入義務があります。

この場合の従業員とは正社員に限らず、アルバイトやパートなどの方についても雇用保険の対象ですが、以下のいずれかに該当する場合は対象外です。

・雇用期間が30日以下 ・一週間の労働時間が20時間未満

負担割合については、原則として雇用主側の負担割合の方が高くなります。

労災保険の加入義務

仕事中や通勤途中に従業員が怪我をした場合に、給付金が受け取れるという社会保険制度です。雇用保険と同様に法人が加入するイメージがありますが、従業員を1名以上雇用していれば個人事業主でも加入が義務付けられています。

例えば通勤途中に交通事故に遭った場合、傷病手当金が支給されたりします。

最近では、新型コロナウイルス感染症で自宅隔離やホテル、病院への入院を余儀なくされるケースもありますが、症状が出ているなど一定の条件を満たす場合は傷病手当金の支給対象になるとされているようです。

個人事業主の社会保険加入における注意点

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個人事業主は保険料などが自己負担

個人事業主が加入できる社会保険のうち、自分自身のために加入できるものとしては以下の通りです。

  • 国民健康保険
  • 年金保険
  • 介護保険

対して、自分ではなく雇用している従業員のために加入できるものは以下の通りです。

  • 雇用保険
  • 労災保険

いずれも個人事業主の場合は保険料などが自己負担になるので、会社員の頃よりもキャッシュアウトする金額が高くなります。

社会保険料は経費にできない

個人事業主の方から節税について相談されると、必ず聞かれるのが社会保険料の経費化です。これだけ多くの保険料や掛金を負担する個人事業主からしてみれば、せめて経費として節税に活かしたいところですが、残念ながら経費にはできません。

社会保険料は、保険料や掛金を損金にするのではなく、確定申告の社会保険料控除として処理をします。

個人事業主が社会保険に加入する方法と手続き

個人事業主で従業員を5人以上雇用している場合は、その状態になった時点から5日以内に社会保険の加入手続きを完了させなければなりません。下記書類を準備するようにしましょう。

これらの書類を事務所の所在地を管轄している年金事務所に提出することで、個人事業主でも社会保険に加入できます。提出方法は持参するほか、電子申請や郵送による提出も可能です。

健康保険・厚生年金保険新規適用届

2枚構成の書類で、1枚目が事業所業態分類票、2枚目が事業所の地図を添付するようになっています。地図はヤフーやグーグルマップなどの地図を印刷したものを直接貼り付けても問題ありません。また、個人事業主の場合は下記書類も合わせて提出が必要です。

  • 事業主の世帯全員の住民票の原本(※発行90日以内のものが必要です)
  • 事務所の所在地が確認できる賃貸借契約書の写しや公共料金の領収書など
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届

雇用する従業員の基礎年金番号を記載します。年金手帳のコピーを本人に提出してもらうとスムーズです。また、以下に該当する場合は別途添付書類が必要になります。

  • 資格取得年月日の日付が、届書の受付年月日から60日以上さかのぼる場合
  • 60歳以上で退職した後に1日も空けずに再雇用された場合
  • 国民健康保険組合に引き続き加入していて、一定の要件に該当する場合

これらのケースに当てはまる場合は別途準備する書類がありますので、事前に年金事務所などに確認が必要です。

健康保険被扶養者(異動)届

加入する人に扶養者がいる場合に提出する書類で、以下の添付書類が必要になります。

  • 被扶養者の健康保険被保険者証
  • 高齢受給者証(ある場合のみ)
  • 被扶養者の非課税証明書
例外的に任意適用になる場合

社員などを5人以上雇用している場合でも、次の業種については例外的に社会保険に加入するかどうか任意で判断することになります。

  • 第一次産業
  • サービス業
  • 士業
  • 宗教業

また、社員などの人数が5人未満の場合は原則として任意加入となります。この際、個人事業主本人は人数に含めませんのでご注意ください。

個人事業主の社会保険加入に関するまとめ

今回は個人事業主の方が社会保険に加入する際の注意点について解説してきました。会社員の場合は会社が勝手に手続きをしてくれますが、独立して個人事業を始めると全部自分で手続きをしなければなりません。

保険料や掛金も全部自己負担なので、会社員の頃と同じ売上だと実質的に手元に残るお金は少なくなります。また、個人事業主は加入義務があるものと任意で加入できるものとがあるので、加入義務を満たしている状態で加入を忘れないよう注意が必要です

基本的には雇用する従業員が5人以上になる場合は、一度社会保険労務士や税理士などに相談することをおすすめします。

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