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二階堂ふみ、「エール」で見せる“少女漫画のヒロイン”感 コミカルな演技&繊細な乙女心を両立

  • 2020.5.2
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「エール」第24回より (C)NHK
KADOKAWA

【写真を見る】「エール」第25回では、伸びやかな歌声も披露!

2020年度前期の“朝ドラ”こと連続テレビ小説「エール」(毎週月~土曜朝8:00-8:15ほか、NHK総合ほか)。古山裕一(窪田正孝)と関内音(二階堂ふみ)の恋が一気に進展した第5週、フリーライターでドラマ・映画などエンタメ作品に関する記事を多数執筆する木俣冬が注目したのは、二階堂ふみの“女優力”だ。(以下、第5週までのネタバレが含まれます)

いつもは元気で陽気だけれど、恋をすると乙女に

「エール」第23回では結婚宣言からキスまで一気に話が進んだ
「エール」第23回より (C)NHK

朝ドラ「エール」、5週めにしてついに裕一と音が対面した。

一気に恋が燃え上がり、浴衣で祭りデート、プロポーズ、接吻まで進んでしまう展開は、それはもう気持ち良いほどの高速。

最初は反対だった光子(薬師丸ひろ子)も、三郎(唐沢寿明)もあっという間にふたりの味方に。

それだけ裕一も音も純粋にお互いのことを必要としていることが、ひしひしと伝わってきて悪い印象はない。

むしろ、何かとおどおどしていた裕一が音の前では極めて紳士的で頼りがいのある人物と化し、人は出会った人によってこんなにも変わることができるのだという感動のほうが大きかった。

突然、天才作曲家然となる、窪田正孝の変身っぷりもすばらしいが、それを支える二階堂ふみが第5週では大健闘。コミカルな演技には目を見張った。

裕一と初対面のとき、お魚くわえたどら猫ならぬ、アジフライを箸でつまんで外に飛び出して空高く掲げるアクション。

「エール」第21回より (C)NHK
KADOKAWA

裕一に手紙の返事を書いたのは音さんだけと言われて「キャー」と声に出して舞い上がる表情、お化け屋敷でこわがる仕草、三郎に「一見かわいいがすぐに慣れる顔」と言われ「人を美醜で判断するな」と立ち上がって力説する仕草、演奏会当日、出なくなった声に効くからと生の長ネギをもらい「生はきつい」とボソリと言う口調や表情。

すべてが小気味良い。絶妙な間のとり方でおもしろアクションを次々こなす。

その合間、恋する女性の揺れる繊細な心も滲ませるだけでも手練であるうえ、週の終わり(25回)には、海で裕一作曲、妹・梅(森七菜)の作詞による歌「晩秋の頃」まで披露した。吹き替えなしのその歌声は伸びやかな透明感があり、ミュージックティ(ーチャー)こと御手洗(古川雄大)なら「パーフェクト!」と賞賛するであろう。

二階堂演じる音は、いつもは元気で陽気だけれど、恋をすると乙女になってしまう少女漫画のヒロインのようである。

この少女漫画のヒロインっぽさはとても重要で、視聴者が自分を投影して物語に没入することを後押しする力になる。

例えば、「フランケンシュタインの恋」(2017年、日本テレビ系)で二階堂が演じたヒロインは、綾野剛演じる不思議な人物を好きになり、どんな困難も乗り越えて彼を守り続ける。健気な雰囲気と、お帽子とトラッドスタイルの衣裳も相まって、こういうファンタジー漫画が実際にあるのかとも思ったが、オリジナルで驚いた。

「エール」も昭和初期のお嬢様スタイルが、昭和の少女漫画のようなのである。

「エール」第18回より (C)NHK
KADOKAWA

全力でぶつかりながら相手役を輝かせる

少女漫画の実写化はよくある。いわゆるキラキラ、スイーツ映画やドラマと呼ばれるものだ。実は二階堂はその手の作品にはほとんど出ていない。どちからというと少年漫画原作ものに多く出ている。

ヴェネツィア国際映画祭の新人賞マルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞した代表作「ヒミズ」(2012年)や「日々ロック」(2014年)、「いぬやしき」(2018年)など。

また、「リヴァース・エッジ」(2018年)などのサブカル系漫画や「生理ちゃん」(2019年)などのコミックエッセイ系などがあり、公開待機作、手塚治虫の「ばるぼら」は大人向けの漫画。

キラキラ少女漫画ものは「オオカミ少女と黒王子」(2016年)がある。ドS王子に翻弄される恋愛経験なしの女子高生を、相手役の山崎賢人(※「崎」の字は正しくは「立つさき」)を最高に立てて演じていた。

少女漫画は男の子がどれだけ素敵かが大事であることを理解して、余計な自意識を出さないところが二階堂のかっこよさだと思う。ひたすら相手役のことを思って一喜一憂するヒロインの感情を揺るぎなく演じ続けるのである。相手役がリードギターだとしたら、二階堂ふみはベースかドラムかもしれない。

「エール」第25回より (C)NHK
KADOKAWA

求められる役割を確実に演じきる職人性が二階堂にはあって、だから少年漫画であろうと大人向け漫画であろうと、なんでもござれなんだろう。

その才能が大いに生きた作品が、大ヒットした映画「翔んで埼玉」(2019年)であった。少女漫画雑誌に連載されたギャグ漫画の主人公を原作にかなり寄せて演じた。

原作者・魔夜峰央の漫画は主人公もその恋人も美少年ばかり。少女漫画ならではの倒錯的な世界で、二階堂の役は見た目は美少女な少年で、生徒会長というカリスマ性があり、夢のように繊細で、でも性格はちょっとキツイというところを二階堂はみごとに演じきった。

金髪できつくパーマがかかったヘアスタイルが様になるだけでも凄いが、キャラがわーっと喚いても美少年ぽさはキープ。ハイテンションで攻撃的だが、恋をしたときの可愛げは徹底的に。

ここでもやっぱり、相手役であるGacktの輝きを決して損ねない。三歩下がって相手を立てるのではなく、有り余る彼のパワーをさらに増幅するように自身も全力でぶつかっていくのである。

まさに、音が第4週の見合いの席で宣言した「私は男の後ろを歩くつもりはないから 結婚したとしても私は一緒に歩きたい」みたいな感じであろうか。ただ、三歩下がる役を演じることになったら、それすらしっかりやれるのだと思う。

相手役を魅力的に見せる役割は、大河ドラマ「西郷どん」(2018年、NHK総合)で演じた愛加那もそうだった。

西郷隆盛(鈴木亮平)が奄美大島にいたときの妻・愛加那は、衣裳やヘアメイク含め、しっかり設定画が描かれた歴史漫画のキャラのように、奄美大島に暮らす人物の背景と、西郷への愛情とが力強く伝わってきて、彼女の大きな愛と生命力が、島流しにあって絶望した西郷を復活させたように見えた。

また、「ストロベリーナイトサーガ」(2019年、フジテレビ系)の姫川玲子も。原作では姫川が圧倒的に主人公で、同僚の菊田はひたすら彼女を見つめる役なのだが、サーガの場合、姫川は最初のうち、群像劇の登場人物のひとりになっていて、菊田(亀梨和也)の主体性も際立ってくるようになっていた。

もちろん、脚本や演出がそう狙っているわけだが、二階堂はきちっとその狙いにハマってみせるのである。いわゆるスター・システムと言われる、スターありきのドラマや映画の作り方ではなく、あくまで物語に奉仕する“職人俳優”として二階堂は存在しているように思う。

「エール」22回で、関内家の馬具工場の職人・岩城(吉原光夫)が裕一を「極める目をしている」と言っていたが、二階堂ふみも「極める目」をしている。(文・木俣冬)(ザテレビジョン)

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