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「女の敵は女」にしないために、いま私ができること

  • 2020.4.14
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「泣かないなんて反省していない証拠」「若いから相手にされてるだけ」。仕事をするなかで言われた、理不尽なひとこと。その連鎖を引き継がないために心がけていることは。 蜷川聡子さんのコラムです。

■「これだけ言われて泣きもしないなんて!」

私が社会人になって間もない頃の話です。一緒に仕事をしている先輩に、会議室に呼び出されました。普段から厳しい先輩でしたが、かなりきつい口調でいくつかのことを注意されました。

すみません、気をつけますと答えて部屋を出るとき、彼女にこんな言葉を投げかけられたことが忘れられません。

「これだけ言われて泣きもしないなんて、反省していない証拠ね!」

■男なら「若いから相手にされてる」なんて言われないのに

正直、叱責の内容は誤解と思う部分もあったので、悔しくて泣きたいくらい。でも、仕事だから泣いてはいけないと思っていたのに……。むしろ泣いたら「泣けば済むと思って、だから女はダメなんだ」と言われかねません。男性に対しては、おそらくこんな発想はないでしょう。

「あなたなんか、若くてかわいいから相手にしてもらっているだけよ」

他の先輩から、こう言われたこともあります。これだけ書いていると、すごく嫌われている性格の悪い子だったみたいに見えますけど(笑)。確かに悪気はないのですが、どちらかというと無表情なので生意気に見えたのかもしれません。

当時の私は、頑張っていたつもりでも、まだまだ未熟で仕事ができるとはまったく言い難かったと自覚しています。もっとしっかりしてほしい、ちゃんとしてほしいと思う先輩の気持ちもわかります。

でも、「若くてかわいいだけで相手にしてもらっている」なんて言われるのは、女性だけじゃないですか? 男性がオフィスで「お前なんて、若くてイケメンなだけだろ!」と叱られている姿なんて想像もできません。

■“女性”を持ち出さずに叱ってくれた先輩

「若いだけで」と言われたときは、本当にショックでした。そんな表面的なことで評価されたくないと反発し、髪を切り、フリースのトレーナーとジーンズで会社に通いました。打合せもスカートはやめて、パンツにノーメイクで参加しました。

でもある日、かなり上の別の先輩社員に呼ばれました。

「蜷川さん。うちの会社はコンサルティングが仕事なの。しかもファッションの会社よ。あなたと会ったお客さんに、素敵だな、と思われないと。素敵だと思えない人にファッションのコンサルティングはお願いしないでしょう? 見た目をきちんと整えるのは、悪いことじゃないのよ」

いま考えると、方向性を間違っていました。その先輩は私を叱ってくれましたが、女性らしくとか、女性なら、というようなことは一切言いませんでした。

そこから私は吹っ切れて、ためらいなく自分に似合う格好を考えるようになりました。その後はファッションの会社からメディアの会社に移ったので、なんとか外見だけでも「知的」に見えるように目いっぱい装っているつもりです。

■せめて私は“女の敵”にならないように

もちろん、いまだに嫌な思いをさせられるのは、年配の男性の場合が多いです。彼らが就職するころは、まだ女性が主体的な仕事をさせてもらえなかった時代だったので、その印象が強いのかもしれません。

ときには悔しくて「男に生まれたかった」と思うこともあります。ただ、この方たちを変えようとしても現実的には難しい。時間が必要です。

変えられないものを変えようともがき続けるだけでなく、まずは自分たちで改められることに着手してみるのはどうでしょう。せめて私を含め女性たちは、上で書いた先輩たちのようなことをしていないか、自分自身を見直す必要があるのかもしれません。
若い後輩たちの足を引っ張っていないか。「名誉男性」のようなポジションを守るために、女性差別を増長させるような言動をとっていないか。

男女平等になってきたといっても、まだ悔しい思いをしている女性もいます。せめて自分は後輩たちにとって、敵ではない、魅力的な先輩でありたいものです。

ただ、男性社会で仕事をしているうちに「若くてかわいい女性でないと相手にされない」「女は仕事でもすぐ泣く」という価値観を内面化してしまった先輩も、差別の被害者であるのかもしれないと今では思います。

私もこの連鎖を引き継がないように頑張るので、男性も、性別で相手を判断してしまっていないか、悪気のない一言が相手を傷つけていないか、自分の価値観を見つめ直してもらえればうれしいです。

Text/蜷川聡子

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