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口紅や着物の染料になる「最上紅花」の魅力とは?山形の伝統文化を世界農業遺産へ認定申請

  • 2020.4.13
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日本で唯一、染色原料として伝統的に農業生産されている、山形県特産の「最上紅花(もがみべにばな)」が、世界農業遺産に認定申請されることが決まりました。希少な染色原料の紅花がなぜ山形に根付いたのか、染料の使い道など「最上紅花」の魅力をご紹介します。

山形県特産品「最上紅花」

染色用として生産される「最上紅花」

山形県特産品「最上紅花」

食用の油として栽培されることが多い「紅花」ですが、山形県は日本で唯一、染色用として紅花の農業生産を行っていることで知られています。染色に使うのは、紅花の花弁に水を加えて酸化させて餅状にしたものを、平たく伸ばして乾燥して作る「紅餅」。この紅餅の生産方法は、江戸時代から続く伝統的な製法なのだそうですよ。

山形県特産品「最上紅花」紅餅

山形に定着した紅花産業

山形県特産品「最上紅花」

中近東が原産とされる紅花は、シルクロードを通ってアジアへ伝わりました。日本に渡ってきたのは3世紀頃で、室町時代末期頃に山形に伝わったとされています。昼夜の寒暖差や肥沃な土壌など、山形の気候や風土が紅花の栽培に適していたことや、最上川の舟運の発達によって、江戸時代には日本一の産地として知られるように。

当時、紅花の価値は米の100倍、金の10倍と言われたほどの高級品で、山形地方の経済を支えていたのだといいます。現在では、山形だけがこの伝統を受け継ぎ、紅花は山形県の花にも制定されています。

「花笠まつり」にも紅花

山形県花笠まつり

山形県で毎年8月に実施される有名な夏まつり「花笠まつり」で、踊り手が持つ花笠についている赤いフワフワは、「むしろに広げた紅餅」が表現されているのだそう。山形県民にとって、古くから親しまれている存在なんですね。

7月に咲き誇る紅花の絶景

山形県特産品「最上紅花」

紅花の開花時期は7月上〜中旬。この時期は、県民にとっての原風景と言える満開の紅花畑の景色が広がります。県内各地では毎年「紅花まつり」が開催され、紅花摘み体験や染め体験などの紅花に触れる機会が提供されています。

鮮やかな紅花の赤の使い道

山形県特産品「最上紅花」着物

独創的な方法で作られる染色用の紅花が発色する鮮やかな赤。神事の装束や着物、浮世絵の絵の具など、日本の伝統文化に幅広く貢献してきたそうです。現在も着物の染色や口紅の原料として使われています。

最上紅花から精製抽出される赤い色素で造られる「笹紅」と呼ばれる口紅は、最上紅花でしか出せない色と言われ、紅花の全色素量の1%でしか作れない希少なもの。玉虫色の艶やかな色合いが、水をつけると鮮やかな紅色に変化する不思議な口紅は、江戸時代の女性の憧れだったのだとか。昔ながらの「笹紅」は山形特産の工芸品として現在も作られているほか、紅花染料を使った口紅なども、いくつかの化粧品メーカーが生産しています。

世界農業遺産の認定へ向けて

山形県特産品「最上紅花」紅餅

世界農業遺産とは、国際連合食糧農業機関(FAO)が、世界的に重要な伝統的農業を営む地域を認定している制度。山形県と関係8市町及び関係団体で構成する山形県紅花振興協議会が、この世界農業遺産に「最上紅花」を認定申請することが決定しました。県民に親しまれる「最上紅花」の価値が、今後さらに広く世界に知られ、伝統文化が守られていくための一歩となりそうですね。

[参照]

[Kyodo News PR Wire]

[photos by 山形県]

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