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外見主義は母親の一言が原因? 犬山紙子×長田杏奈が“ルッキズム”を鋭く分析

  • 2020.4.7
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“エシカル”とは環境のことだけでなく、人に、そして自分にもやさしい世界を目指すこと。“多様性”が時代のキーワードになっているけれど、まだまだ生きづらさを感じている女性も多いのでは? ここでは生きづらさの要因のひとつである“ルッキズム=外見主義”に疑問を感じ、メッセージを発信しているイラストエッセイスト、コメンテーターの犬山紙子さんと美容ライターの長田杏奈さんのお二人にお話を伺いました。

――今回のテーマは、ルッキズム、いわゆる“外見主義”と女性の自尊心の関係について、です。まずはそれぞれ、ルッキズム的な価値観に触れた経験があれば、お聞かせいただきたいのですが…。

犬山:まず、私の目って奥二重なんですが、一般的に美容雑誌などでは、“奥二重の人は、こうすると小さな目がぱっちり見えますよ”って書かれることが多い。特に前はそんな記事が多くて。それを読んで、“そうか、奥二重はダメなのか”と思い、奥二重がコンプレックスになってしまった。そんな小さなコンプレックスの積み重ねで、昔は自分の顔が本当に嫌いだったんです。

長田:二重のモデルばかり起用されて、一重や奥二重が取り上げられるのはコンプレックス特集ばっかりだもんね。おかしいから変えようって、今言っているところ。

犬山:長田さんはルッキズムを実感させられた経験ない?

長田:高校に入ったとき、私わりと真面目なタイプだったから、学校の〈生徒募集〉みたいなポスターに写真が載ったのね。そうしたら通りすがりの先輩に「もっとかわいい子がいるのに」って聞こえよがしに言われたり、友だちのお母さんに「写真を加工して脚を細く見せてる」とか難癖つけられたりしたの。私のこと何も知らないのに、外見をジャッジしてくることが、気持ち悪かったしムカついた!

犬山:そういうケース、いまでもまだまだあるよね…。

長田:あと、大学までエスカレーターの女子校だったんだけど、春先になると他大の男子学生が通学路に車で乗り付けて、じろじろ女の子を品定めして勧誘する文化があったのね。女の子側にも「見初められたらラッキー」みたいなキャピキャピした空気が無きにしもあらずで。本当に失礼だと思った。

犬山:うんうん。そういう経験が、ルッキズムを内在化させちゃうんだよね。内在化させる原因はいろいろあるけれども、大きいもののひとつは、親からの呪い。私は仕事柄、女性たちから話を聞くことが多いんだけど、自分のルックスのコンプレックスがどこから来たかについて話していると、「母親からかけられた言葉だった」と言う人が、結構多いって感じる。

長田:わかる! 血縁由来はめちゃ多いよ。

犬山:「あなたは目はかわいいけれど、鼻はおブスよね」とか言う母親の話を、本当によく聞くし。あと「うちの子はホントダメで~」って、他の子や親の前で謙遜するとか。子どもはそれを聞くたびに「私は鼻がダメなんだ」と刷り込まれ、コンプレックスになってしまう。

長田:「見た目がいまいちだから、勉強しておきなさい」とか、サラッと言うよね…。愛ゆえに言うんだろうけれども、愛と一緒に渡される呪いって受け取らざるを得ない。心の奥底に刻まれちゃうのも当然だと思う…。

犬山:クソバイス(編集部注・求めていないのに繰り出されるアドバイスのこと)なのに一見愛の言葉に聞こえるから余計タチが悪い。

長田:あと恋愛がらみ。好きな相手から外見を揶揄された経験は、頑固なコンプレックスの芽になりやすい気がする。初恋でも、大人になってからの恋でも。

犬山:本当に。日本はまだまだ、“女性は男性に選ばれる性”という意識が強くあるよね。だから“男性ウケするルックスじゃないとダメ”って思っている人、男にも女にも多いと思う。自分の見た目がいわゆる男ウケのいいそれと違ったり、あるいはルックスを理由に男の人から選ばれなかったり、という経験が重なれば、“私は外見がダメだから…”ってなり、それが自己否定に繋がっちゃう…。

長田:“通学路で見た目ジャッジされる”って、まさにそれ。大奥か!

犬山:でもね、私が’11年に『負け美女』って本を書いたのは、そういうルッキズムへの皮肉から、だったの。「美人だったら人生イージーモードだろ?」って言ってくる人たちに、「そうではない!」と、あの本を通じて言いたかった。ただ、人に“負け”っていう言葉を使ったのは良くなかったと反省しています。

長田:あぁ~、私、犬山さんのオープンに反省するところ大好きだし、心から尊敬してる。人間は生きていればマイナーチェンジもするし、考え方も進化するでしょ? 犬山さんは、その経緯や反省を、律儀にSNSだったり、こういう取材だったりで、「私はこう変わりました」って宣言する。その勇気とまっすぐさ、すごいと思う。

犬山:そ、そうかな…。でも私も、長田さんの著書『美容は自尊心の筋トレ』で書いているような考え方に、いつも励まされているよ?

長田:ありがとう(笑)。私、褒められたら、ありがとうがモットーなんだ。

いぬやま・かみこ イラストエッセイスト、コメンテーター 弊誌の連載「SanPakuちゃんのわがまま気まま愛のRoom」も大好評。著書も多数。『スッキリ』(日本テレビ系)、『大下容子ワイド!スクランブル』(テレビ朝日系)でレギュラーコメンテーターを務める。

おさだ・あんな 美容ライター メイクアップアーティストの吉川康雄さん、写真家の前康輔さんとコラボで制作した書籍『あなたは美しい。その証拠を今からぼくたちが見せよう。』(大和書房)が5月に発売予定。

※『anan』2020年4月8日号より。写真・小笠原真紀

(by anan編集部)

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