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「仕事とプライベートは分けたい」小松菜奈が明かす等身大の自分

  • 2020.4.1
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高校3年生で映画『渇き。』で鮮烈な女優デビューを果たした小松菜奈さん。今年の日本アカデミー賞では、映画『閉鎖病棟―それぞれの朝―』で優秀助演女優賞を受賞し、女優としてのキャリアを積み重ねながら、シャネルのアンバサダーを務め、ファッションアイコンとしても注目されています。

強く、まっすぐな主人公・葵を演じた話題作『糸』の撮影秘話や、女優としてのキャリア、海外での活躍…など彼女のフィアレスな秘密に迫ります。

今回の映画は、平成元年生まれの男女の人生を描いていますよね。ご自身にとって「平成」ってどんな時代でした?

平成は私が生まれた時代。一番印象的なのはこの仕事を始めたことですね。高校3年生の時に『渇き。』という映画でデビューして、女優業を始めたのですがそれまでとくにやりたいことがなかったし、「○○になりたい」と言っても漠然としていたんです。でも女優業を始めてから「この仕事で頑張っていこう」と思えたから。それが「自分がやりたいことが見つかった」と思えた瞬間だったと思います。

元号が変わるって、なんか不思議な感じですよね。

不思議でしたね。テレビで「令和」という紙を出す、あの場面を見られると思っていなかったので、そういうタイミングに生きてるんだっていう感じで。

今回は葵という主人公の20代から30代までを演じていますよね。辛い幼少期を送ってきた人でもあります。どんな部分にご苦労がありましたか?

今回は20歳から30歳まで演じさせていただいて、30歳という年齢って今まで演じたことがなかったので、30歳ってどんな感じなんだろうな…というところから始まりましたね。

葵は幼い頃に親との関係に傷つき、その後天涯孤独で生きてきた女性なので、それを明るく話すのはおかしいし、かといってあまり暗くなりすぎるのも良くないし。素直に、夢や仕事を実現することに普通に頑張っている女の子として、まっすぐ見てもらえるようにしたいなと。

同時並行で描かれる、葵の初恋相手・漣(れん)の人生と最終的に交わった時に、観客の方に「こういう結末になってよかった」と思ってもらえるような葵にならないといけないなとも思いました。

漣に比べて、葵の人生は波乱万丈ですよね。助けてくれる人が現れそうで現れない…それでも真っ直ぐに生きる。そういった「強い部分」はご自身と似ていますか?

葵はすごく強い子でもあるし、正義感もありますが、私自身は、自分のことを強いって思ったことはないんです。誰かに助けてもらいたい、誰かになにかしてほしい、と思うこともあまりないかもしれませんね。もちろん時には頼ることも大事だとは思いますが、できることなら自分で全部どうにかしたいと思ってしまうタイプです。もちろん困っている人がいたら、力になりたいです。

でもそういう葵の人生を、葵が暗くとらえていないところが素敵です。

この映画を通じて、人間って強いなって思いました。人生は一人で生きてくものじゃないし、誰もが誰かに支えられて生きているとは思うんです。でもやっぱり人は自分で這い上がっていけるんだなって。悪いことも起こるけれど、良い方向にいく可能性もある。誰かに助けられることもあれば、誰かを助けることもできる。そうやって人生って巡っていくものだなと。大変じゃない人生なんてないんだなと、改めて感じました。

これまで演じた役で、自分に似ていると思った役ってありますか?

近いというか、好きだったのは『さよならくちびる』のレオという役です。あんなに暴れん坊ではないけれど、ぶっきらぼうで不器用な性格は、どちらかというと自分と似ている気もしましたし。そのせいか、演じていていろんなアイディアが出てくるんですよ。どうやって面白くしようかなとか、そういうのがすごく楽しかった。あれから自分のお芝居が自由になった気がします。

不器用な性格なんですか?

器用なほうではないですね。動きをつけられるお芝居とかだったりすると、全部いっぺんには覚えられなくて。自分も不器用だなと思うし、周りにもよく言われます。努力しなきゃいけないことがたくさんあります。

出演作を見ていると、不器用というより、度胸がある方だなと。

「とりあえずやってみよう。きっとなんとかなる」という部分はありますね。やってみないとわからないことって多いし、恥ずかしいことなんてない、別に恥をかいたって構わないと思えるんですよね。

今年で女優デビュー10年ですが、演技に対する考え方に変化はありますか?

変わってきてる気がしますね、ちょっとずつ。最初は感情的なものを表現するのに必死で、たとえば泣く芝居とか「どうやったら涙が出るの?」と思っていたんです。でもここ数年は、涙が出る出ないじゃなく、前後に起きたことや相手の言葉に集中することで、そこで表現すべき気持ちになっていきます。

そういった部分でゆっくりですが、ちょっとずつ変わってきてるのかなって思います。もちろん課題もたくさんあるので、今でも自分の作品を見るとすごく歯がゆいし、客観的には見れなかったりもするんですが。

コスモポリタンはあらゆる女性に強く美しく生きてもらいたいなと思っている媒体ですが、女性の強さとか美しさってどういうものだと思いますか?

自分の意見や考えを持っていることでしょうか。海外では「それであなたはどう思うの?」と意見を求められるし、答えられないと相手にされないとも聞きますよね。周りのことを見れるのは日本人の良さだなとは思うのですが、海外作品に参加すると、海外の方は自分から前に出ていくし、自分の意見を発信すること、自信を持つことも必要だなと。それが自立ということかなとも思うんです。自分にも「もっと変えていかなければ」という部分はいっぱいあります。

憧れる存在はいますか?

今、シャネルのアンバサダーをやらせていただいて、その歴史を勉強したんですが、ココ・シャネルの生き方には憧れます。女性には色々許されなかった時代に、すごく批判されながらも自分の意見を持ち、時代を巻き込んで変えてゆく。自分の力で「歴史を作り出す」という考え方が、とても素敵ですよね。

小松さんも何か作りだしたい?

作り出せたらいいなと思います。そんなに大きいことじゃなくても、 誰かが女優さんになりたいな思うような、希望を作れるような存在になれたらいいなと思いますね。

先日はご自身のコーディネートでシャネルのショーに出演したそうですね。こだわった点は?

スタイルがいい人や美しい人っていっぱいいるし、その部分では勝負できないので、自分らしさを出したいなって。毎回いろいろ考えて変化させているんですが、今回は「これを着てきたら今っぽいよね」という部分でデニムを取り入れました。今までなら中途半端な丈は絶対に選ばなかったんですが、それも今回はやってみようかなと。あとは古着が好きなので、私物の靴とかTシャツを組み合わせたいなと提案したり。アンバサダーを任せていただいたからには、私が着ることでブランドを素敵に見せることができればいいなと思っています。

被写体として自分をどう見せていくか、ということも考えますか?

撮られる側としては、スチールでもムービーでも慣れることがなくて。最初の頃よりは分かってきた部分もあるけれど、今も緊張してドキドキします。ただどう見せようか、みたいなことはあまり意識していないんです。今の時代って、自分を世の中に見せること、どう見せていくかが大事なのかもしれませんが、そこに囚われたくないなという気持ちもあります。プライベートなどをすべて見せてしまうと、仕事以外の自分の居場所がなくなってしまう気がして。

趣味で写真を撮ったりもしていますね。

裏方というか作る側にも、すごく興味があるんですよね。現場でもスタッフを「この人は何をやる人なのかな?」と考えながら見るのが好きで。実際にやってみたいな、という気持ちもあります。自分とは違う職業の方のことも興味を持って見ていられる人でいたいなって。

撮る側として考えること、撮ることの楽しさや刺激はありますか?

自由に撮っているからでしょうか、気になる視点や注目する点が変わりますね。誰に見せるわけでもなく、ただ自分の記録として残しておきたいだけなので。今ってスクリーンショットもできるので、自分が気に入った大切な写真はどこにも出さずにとっているんです。いつかなにかの形にできたらいいなとも思いますが。

「パーソナル」を大事にする考え方が素敵です。

そういうのがキープしにくい世の中、時代なのかもしれないですよね。でも女優として、そういうものを持っていることは絶対に大事だと思うんです。人それぞれだとは思いますが、私自身はすべて晒せばいいというものではないと思うし、仕事とプライベートを分けたいなと思うし。世の中には自分が知らなくていいことや見なくていいこともあると思うし、そうすることで精神的に保たれるものもあるのかなと思うから。

秘めることも大事。

でも別に隠してるわけじゃないんです。よく「ミステリアスキャラ」とか言われるんですが、性格的には全然そんなことないですよ(笑)。でも世の中にどう思われるかなんて、正直どうしようもないし、自由に思ってもらえばいいかなって。ただ自分はそれとは別に、そのまんまでいることが一番楽。イメージを作るのは大変だと思うし、そこで苦しくなるんだろうなと思うし。

年を重ねた時に、どんな女優さんになりたいなというようなことはありますか?

もっと「自分のこと」を見てみたいなと思いますね。今は目の前のことを頑張りたいと思っているけれど、先のことは全然想像がつきません。どんな仕事も同じだと思いますが、女優のお仕事ってちょっと特殊で、ひとつひとつの体験がすごく濃いんですよね。楽しく刺激的な分だけ、すごく大変なことも多い。

ただ女優の仕事が思ってみないところから始まったように、別の新しいことが始まるかもしれないなって。まだ23歳なので将来を決めずに、自分のことを見つめたいなって思います。

【info】映画『糸』4月24日 全国東宝系にてロードショー(C)2020映画『糸』製作委員会

Photo/Koichiro Inomata Styling/Ayaka Endo Makeup & Hair/Mai Ozawa(mod's hair) Model /Nana Komatsu Text/Shiho Atsumi

トップス¥30,000 パンツ¥32,000 共にG.V.G.V.(k3 OFFICE)リング¥9,000 Jouete バングル¥35,000 flake シューズ¥19,000 SENSO(THE WALL SHOWROOM)

<問い合わせ先>k3 OFFICE Tel. 03-3464-5357Jouete Tel. 0120-10-6616 flake Tel. 03-5833-0013 THE WALL SHOWROOM Tel. 03-5774-4001

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