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がんばり過ぎるすべての人へ…優しく心に響く猫の人生相談で癒されよう

  • 2020.3.29
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とあるきっかけで「話ききます」屋を始めた猫と相談に訪れる人々とのじんわり心に沁みるやりとりを描いた漫画『ねこでよければ』①(ホーム社/集英社)

猫が街頭で出会った多くの人々の悩みを通して、さまざまな人間模様を垣間見る1話完結型のストーリーです。

誰もが心の奥に抱える闇や苦しみを否定することなく、あるがままに話しを聞いてくれる関西弁のおっちゃん猫の人生相談。心に響くパンチラインの連続に思わず涙がボロボロあふれ、読み終わった後は心すっきり前向きな気持ちになれる一冊です。

■やまもとりえさん
インスタグラムのフォロワー18万の大人気のコミック作家。著書『Aさんの場合。』『Aさんの恋路。』(いずれも祥伝社)『本当の頑張らない育児』『30歳女子、ネコを飼いはじめました。』(いずれも集英社)など発売中。
●Twitter:@yamamotorie
●Instagram:@rinpotage
●ブログ:ヒヨくん あっくん育児日記
■視点を変えたら世界も変わる。他人との比較からの解放

人生とは、ときにしょっぱく、“理想と現実”のギャップに思い悩まされることもしばしば。自分よりも恵まれた境遇の誰かを羨んだり、なりたい自分になれない自分に失望したり、ないものねだりに苦しんだりすることも、人生にはある程度つきものなのかもしれません。

本書に登場する美大生の女の子もまた経済的に余裕のない家庭に生まれた自分とお金持ちで才能にも恵まれた同級生とを比較し、人生のままならなさを感じるようになります。



恵まれていない自分は“世の中の選ばれし人間ではない”と夢を諦めようとする女の子に、猫はその同級生と「友達になること」を提案します。

そして実際友達になってみると、何でも持っているはずと思っていた彼女もまた自分のなかの足りないピースに苦しんでいることを知るのです。



ないものねだりをしているうちは、自分がすでに持っているモノの価値に気付いていないもの。

他人の表層的なものばかりに目を向け、羨むだけで、物事の本質をちゃんと見れていないときでもあります。

しかし人は誰しも、一見評価されにくくてもそれぞれ光り輝くものを持って生きているもの。同時に、自分が羨む相手でさえも痛みや悲しみを心のどこかで抱えながら生きている面もあります。それくらい他人の本質とは見えにくく、かつ比較することで人生の優劣は本来つけられないはずなのです。

他人にはその人自身が持つ価値があるように、自分にも他人が持ち得ない価値がある。そしてそれは誰にも奪えない“あなただけのもの”。

そんなメッセージとともに、相談者の女の子も同級生の見えていなかった苦しみを知ることで、独りよがりな言い訳を捨て、夢と向き合う決意をきめる姿が清々しく描かれています。

■誰もが抱える心の膿。弱さも強がりも認めた先に見える希望の光

そして別ストーリーでは田舎嫌いの自意識過剰な青年が登場し、彼もまた今まで見えていなかった“かけがえのないもの”の存在に気付いていきます。

何者かになりたいばかりで都会に出て、目標を定められないままあっという間に15年。結局何者にもなれなかった彼が目にしたのは、夢を叶えた田舎の友人の姿でした。



小さい頃から田舎が大嫌いで、「退屈な場所でぼーっと暮らしている奴らとは自分は違う」。そんなつまらないプライドで自分を守り、ただ何者かになるためだけに必死だった時間を経て見えたのは、強がりの裏に隠していた自分自身の本心とかけがえのない友情でした。

理想と比べ、足りないことだらけの自分を認めることは痛みを伴う作業かもしれません。しかし、「足るを知る」ことでその先に続く人生の豊かさを味わうことができるのかもしれません。


■強くならなくちゃと思うのに涙が…。頑張りすぎるすべての人へ

さらに本書には、大切な誰かを守りたいと思うあまりに自分の心を削り、頑張りすぎてしまう人々の姿も描かれています。

そのなかの1人に、生まれてくる前の小さな命を失い、悲しむ妻を支えたいと心を砕く男性が登場します。

口下手な彼は考えに考えた言葉で逆に妻を傷付けてしまい、夫婦で心のすれ違いを起こしていました。あまりに深刻そうな男性を見て、「君のことも心配」と話す猫に対して「僕は男ですから」と返す男性ですが……。



“悲しみに男も女もない”けれど、妻を支えたいと心から願うからこそ、自分の気持ちを無理に押し込めてしまう男性。帰宅後、わが子の誕生を楽しみに購入していた子育て本を手に、たまらず涙があふれて出てきます。



人と人が完全に分かり合うことは難しいけれど、相手のことを分かりたいと強く願う気持ちはすごく尊いこと。

悲しみの当事者はそんな誰かの想いに気付けないこともあるけれど、人の心を救えるのはやっぱり大切な誰かの存在であり、お互いに支え、支えられながら生かされていることをつくづく実感するストーリーです。

そのほか弟の看病に忙しいお母さんに甘えられない男の子の悲しくて切ない姿を描いた話や「やりたいこと」と「求められること」の違いに悩むカメラマンの女の子の話など、その一人ひとりがまるで自分かのように共感するものばかり。

後半には相談者ごとのアフターストーリーが描かれいて、登場人物のその後の姿も楽しめますよ。

今回、発売を記念して、「ねこでよければ」①(ホーム社/集英社)の第8話をウーマンエキサイトで掲載します!
第8話
小さな命をきっかけに気持ちにすれ違いがおこってしまいますが、お互い支えあう気持ちが生まれ前に進む夫婦を描く「第8話」をご紹介します。




ねこさんが開いた「話聞きます」屋さん。人間関係に悩むサラリーマン、人の境遇と才能を羨む美大女子、小さな命と向き合う夫婦、田舎嫌いで都会へ出てきた青年…、モヤモヤした気もちをねこさんに少しだけ軽くしてもらって、私は私の、僕は僕の、自分だけの人生を歩んでいこうと思える前向きな気持ちになれる一冊です。

(倉沢れい)

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