1. トップ
  2. 恋愛
  3. 遺族年金受給者を扶養家族にできる?条件・控除の仕組みをFPが解説

遺族年金受給者を扶養家族にできる?条件・控除の仕組みをFPが解説

  • 2020.3.27
  • 1329 views

配偶者に先立たれ、【遺族年金】を受給しながら生活している親御様をお持ちの方で、特に遠方の故郷にお一人住まいの場合は何かと心配ですよね。働き盛り世代であれば尚更、お仕事の都合やご家庭の事情ですぐにご実家に通える方ばかりではないのではないでしょうか。

このような場合、実は、お独り住まいの親御様にとっても、離れて暮らすお子さんにとっても、両方にとってメリットのある税法上の仕組みがあります。

これは、遠方に離れて暮らす場合だけでなく、同居の親御様でも同じメリットがあります。また、必ずしも親だけでなく、結婚した子供が配偶者を亡くし【遺族年金】を受給している場合も考えられます。

今回のテーマは「【遺族年金】をもらっている人を扶養家族にできる?」という内容です。遺族年金を受給している親族の方をお持ちの方は、是非今回のテーマをお読みいただき、今後の選択肢の一つとしていただければ幸いです。

扶養家族になるとどうなる?

ご親族の中で【遺族年金】を受給している方がいる場合、その方を扶養家族にするとどういう効果があるのでしょうか。別居している親族の中に、対象となる方がいる場合でも扶養家族にすることができるのでしょうか。

冒頭で「メリットがある」と紹介しましたが、具体的にどのようなメリットがあるのか、以下簡単にまとめますね。

①税法上のメリット

【遺族年金】を受給している方と、扶養家族として迎え入れる方が、どちらもそれぞれの条件を満たせば、扶養親族の控除が発生します(これを扶養控除と言います)。つまり、該当する家族を扶養に入れたことで、その世帯主の住民税や所得税が安くなるということですね。

なお、メリットを受けるのは【遺族年金】をもらっている方ではなく、その方を迎え入れる方です。【遺族年金】を受給している方は、特にメリットもデメリットもありません。

②健康保険上のメリット

扶養家族になることによる健康保険上のメリットは、【遺族年金】を受けている方が受けることになります。

簡単に言うと、おひとりであれば国民健康保険などの健康保険に加入して、ご自身で保険料を負担しなければいけませんが、どなたか家族の扶養家族になれば、【遺族年金】を受けている方は健康保険料を払わなくてよくなります。

ただし、健康保険上のメリットは、家族の加入している健康保険が社会保険である場合に限られます。国民健康保険加入の家族の扶養家族になっても、結局ご自身で保険料負担することになるので、この場合は扶養家族になる意味がありません。

国民健康保険と社会保険についての詳細は、この後の「健康保険上のメリット」の項目でまとめますね。

  • 税法上のメリット→【遺族年金】受給者を扶養家族として受け入れる側のメリット
  • 健康保険上のメリット→【遺族年金】受給者本人のメリット

扶養家族の条件

扶養家族(扶養親族)は、家族なら誰でもなれるわけではありません。以下のいくつかの項目に該当する必要があります。

  • 配偶者以外で、16歳以上の親族(血族なら6親等内、姻族なら3親等内)
  • 世帯主(納税義務者)と生計を一にしていること
  • 年間の合計所得が38万円以下であること(令和2年分から48万円に変更されます)
  • 事業専従者ではないこと

事業専従者とは、親族が営む個人事業(白色申告)などで給与をもらって働いている人のこと。

生計を一にする、とは

年金などの社会保険制度の話をするときに、よく耳にするのが「生計を一にする」というキーワードです。基本的には同居している親族は生計を一にしている、とみなされます。

別居の場合でも、常に生活費を仕送りしている等で、納税義務者の資金によって生活をしている状態を証明できれば「生計を一にしている」と判断され、扶養家族にすることができます。

別居の親族を扶養家族に入れるには、実際に別居親族に対して銀行振込をした通帳のコピー等、何か証明できるものの提出を求められる場合もあります。遠方の親族に対する援助は、なるべく証拠の残る形でしておくと良いでしょう。

遺族年金は非課税

【遺族年金】は、基礎、厚生いずれであっても全額非課税です。【遺族年金】以外に収入または他の年金収入がある場合は、【遺族年金】以外の部分について課税対象となりますが、【遺族年金】のみが収入源である場合は収入がないとみなされます。

補足・遺族年金は確定申告不要

【遺族年金】と【障害年金】が非課税であるということは、これらの年金だけが収入源である場合は確定申告は不要ということです。ただし、【遺族年金】以外に収入がある等の場合は、【遺族年金】以外の収入に対して確定申告をしなければいけません

また、同じ年金であっても【老齢年金】に関しては、課税対象となります。

税法上のメリット

【遺族年金】を受給している方を扶養家族にすると、迎え入れた側にとって税法上のメリットがあります。《扶養控除》という控除が適用されるので、その分所得税や住民税が安くなるということになります。

どなたが【遺族年金】を受給しているかによって、控除額が違います。それぞれのパターンに分けて見ていきましょう。

[adsense_middle]

父母・祖父母の場合

【遺族年金】を受給していて、これから扶養家族に迎えようという方が父母、祖父母の内いずれかである場合、以下の額の控除が発生します。

  • 70歳以上の同居親族(父母・祖父母)である場合…58万円
  • 70歳以上の別居親族(父母・祖父母)である場合…48万円

70歳に満たない親などの場合は、一般の扶養親族として一律38万円の控除額となります。

子供や孫の場合

【遺族年金】を受給している方が、納税義務のある方の子どもや孫である場合、その方を扶養親族にすると以下の控除が発生します。

  • 19歳以上23歳未満の場合…63万円(特定扶養親族控除)
  • 上記以外の年齢の16歳以降の人の場合…38万円(一般扶養親族控除)

健康保険上のメリット

健康保険上のメリットがあるのは、【遺族年金】を受給している人です。本来は何らかの健康保険に加入し、その保険料は自分で負担しなければなりませんよね。しかし、家族の健康保険に扶養親族として加入できると、この保険料を負担しなくてよくなります。

親族の扶養に入ることで、【遺族年金】を受給している人が被扶養者となり、本人名義の保険証から、被扶養者としての家族保険証に変わります。つまり、【遺族年金】受給者にとって康保険料の負担の軽減になります。

健康保険上の被扶養者に関するお尋ねは、加入している健康保険の団体(協会けんぽ等)のHPで確認するか、問い合わせ窓口に尋ねてみましょう。

被扶養者の条件は以下の通りです。

  • 主に被保険者(健康保険の本人)の収入で暮らしている
  • 被保険者と同一世帯である
  • 年間収入が130万円以下で、被保険者の年収の半分以下
  • 別居の場合では、年収が被保険者の仕送り金額以下である

健康保険の用語として、世帯主など、その健康保険に加入している本人を「被保険者」と呼び、その家族を「被扶養者」と呼びます。

扶養に入れない場合もある

先に紹介した《税法上のメリット》の場合における扶養親族の定義として、【遺族年金】と【障害年金】は非課税扱いなので収入に含まれません、とご紹介しましたよね。

このことから、【遺族年金】や【障害年金】だけが収入源である場合、無収入であるとみなされてほとんどの方が税法上の扶養家族になることはできるということになります。

一方、健康保険上の扶養親族の収入制限においては、【遺族年金】も【障害年金】も収入とみなされます。つまり、年金額によっては年収の上限に抵触してしまい、健康保険上の扶養親族にはなれない場合もあるということです。

必ずしも、どちらのメリットも受けられるということでは無さそうです。事前に確認しておきましょう。

税制上の扶養親族と、健康保険上の扶養親族は、必ずしも一致しないということ。

国民健康保険の場合

受け入れる側の被保険者本人が、自営業者などで「国民健康保険」に加入している場合、【遺族年金】を受給している親族を扶養親族にするメリットはほとんどありません

結局は、扶養親族になったとしても、その方の分の保険料も発生しますので、生計を一にしている親族であったとしても、割引になったり、払わないで良いということにはなりません。

健康保険上のメリットがあるのは、被保険者本人が社会保険に加入している場合だけであるということ。

遺族年金受給者を扶養家族にする場合・まとめ

【遺族年金】をもらっているご親族ということは、身近なご家族を亡くした方ということです。メリット、デメリットではなく、同じ家族として励まし助け合って暮らしていくのは当然の事ではありますよね。

しかし、冒頭にも書きましたが、社会人になると仕事や家族のことなどで、特に遠方に住んでいる親族の場合、こまめに往来することもままならない場合もあると思います。

今回取り上げたテーマでは、遠方で別居している場合でも扶養親族とすることもでき、受け入れる側も、扶養親族に入れてもらう側も、どちらにとってもメリットがあるということがお分かりいただけたかと思います。

一見複雑に見えるので、あまり知られていない内容ではありますが、これは法の抜け道などではなく、正当に認められているルールです。

もし本記事を読んで、該当するかもしれないと思った場合は、加入している健康保険実施団体にお問い合わせしてみてはいかがでしょうか。なお、税法上の控除に関しては、サラリーマンであれば年末調整の時期に申告することになります。

家族として共に支えあっていく手段として、本記事の内容について、前向きに検討しても良いのではないかと思います。

元記事で読む
の記事をもっとみる