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婚前契約は必要? 弁護士が教える“結婚前にしておくべきこと”<財産編>

  • 2015.4.15
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結婚するときは、一生、この人と添い遂げようと思っていても、残念ながら、いつしか2人の関係が変わってしまうことも…。「自分は大丈夫!」とタカをくくらず、いざというときのことも考えておきましょう。離婚時のトラブルを防ぐために、「結婚前にしておくべきこと」をアディーレ法律事務所の弁護士正木裕美先生に聞ききました。「借金編」に続き、「財産編」をお届けします。

●婚前契約は“2人の約束事”

――少し前に、女優の遠野なぎこさんが婚前契約を作ったことが話題になりましたが、具体的にはどういう内容なのでしょう。また、作っておいたほうがいいのでしょうか。なんだかはじめから離婚を考えているようで抵抗があるのですが…。

「法律では、夫婦の財産に関する取り決めである『夫婦財産契約』の定めがある以外、内容や形式に決まりはありません。通常の契約と同様に、社会的な妥当性に欠けるような内容でないかぎり、どのような内容でもかまいません。一般的には、財産や生活費の取り扱い、結婚中の家事や育児の分担、介護などに関する取り決め、離婚の条件など、夫婦間の約束事を定めることが多いですね。『結婚記念日は一緒に過ごす』といった内容を入れることもできます」

――「契約」というとカタイ印象ですが、“2人の約束事”ととらえればいいのかもしれませんね。

「そうですね。海外では『プレナップ』とも呼ばれる一般的な制度ですが、日本ではまだまだ浸透していません。ただ、日本では、結婚後の夫婦間の約束は、夫婦関係が破綻していないかぎりいつでも取り消すことができるとされているので、結婚前に契約しておくのは重要なポイントになります。

現代では家族の姿は多様化し、夫婦それぞれが自分のライフスタイルや生き方を重視するようになりましたが、離婚の原因で最も多いのは、性格の不一致。婚前契約書を作るなかで、結婚後のビジョン、価値観などをお互い冷静に見つめることができるので、むしろ結婚後に円満な夫婦生活を送りやすくなるメリットもあるんです。

また、円満な関係のときであれば公平な取り決めができ、離婚時のトラブルを防止できます。また、離婚したときのデメリットもよく理解したうえで結婚生活を送れるので、結婚後に軽率な行動にも出にくいとも思われます。

いまは内縁・事実婚関係、同性婚、再婚、高齢者婚など、夫婦の形も多様化しています。法律上の保護が十分でない場合は、婚前契約をすることで、お互いの希望をかなえやすくなる面もあります。

婚前契約書は、2人だけで『覚え書き』として作ってもよいですが、後日、効力に争いが生じたり、不明確な点が出てきたりすることもあるので、専門家に依頼して、『公正証書』という公式な書類で契約書を作成することもできます。証明力の高さが違いますので、検討してみてもよいかもしれませんね。

●「共有財産」と「特有財産」をハッキリさせておく

――でも、相手が乗り気じゃない場合はどうすればいいでしょう。

「離婚するときに、とくに熾烈な争いになるのが財産分与です。法律上、結婚後に取得した財産は、『共有財産』と推定されますので、離婚のときには、改めて夫婦で持っている財産をすべて整理し、共有財産の範囲を明らかにする必要があります。

一方、結婚前に貯めていた預貯金など、結婚前から持っている財産や、相続・贈与で取得した財産など、結婚後に夫婦の協力に関係なく取得した財産は、『特有財産』と呼ばれています。特有財産は、原則として財産分与の対象外とされていますので、それぞれの名義人のものになります。

特有財産かどうかは、それを主張する側が証明しなければいけないので、立証できないときは、共有財産と扱われてしまう危険性があります。結婚する前に、お互いに結婚前から持っている財産は何があるのか明確にしておき、自分が結婚前からその財産を持っていたことを証明できる書類は大切に保管しておきましょう。

ただし、結婚前から持っていたものであっても、結婚後に夫婦の協力により価値が維持・増加したものは、財産分与の対象となります。また、形式的にどちらかの名義になっていても、生活費を貯めた預貯金、マイホーム、マイカー、家財道具、生命保険解約返戻金、有価証券、退職金など、実質的に結婚後に夫婦の協力で築き上げたと評価できる財産は共有財産となり、財産分与の対象になります。

幸せな結婚生活を夢見ていても、小さい不満や価値観の相違が積み重なれば、お互いに信頼や愛情をなくすきっかけになることもあります。相手に言いにくいこともありますが、万一、離婚することになってしまったときのトラブル防止としてだけでなく、円満な結婚生活を送るためにも、結婚前に夫婦間での約束をしっかり話し合っておくことが何より大切ですね」

「借金編」はコチラ
プロフィール/正木 裕美(まさき ひろみ)
愛知県出身。愛知県弁護士会所属。
男女トラブルをはじめ、ストーカー被害や薬物問題、ネット犯罪などの刑事事件、労働トラブルなどを得意分野として多く扱う。身内の医療過誤から弁護士の道へと進む。2012年には衆議院選挙に愛知7区より日本未来の党の公認候補として出馬し、「衆院選候補者ナンバーワン美女」とインターネットや夕刊紙で大きな話題を呼んだ。
・公式ブログ「弁護士正木裕美のまっさき通信」:http://ameblo.jp/masaki-hiromi/
・アディーレ法律事務所の新刊『マンガでわかる「愛と慰謝料の掟(ルール)~請求されたら…編~』:http://www.adire-isharyou.jp/media/book/isharyou_2.html
<取材・文/斉藤サブロー 取材協力/アディーレ法律事務所

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