1. トップ
  2. 映画通スピードワゴン小沢一敬が語るロマンティック・コメディ『ラブソングができるまで』<ザテレビジョンシネマ部>

映画通スピードワゴン小沢一敬が語るロマンティック・コメディ『ラブソングができるまで』<ザテレビジョンシネマ部>

  • 2020.3.18
  • 110 views
『ラブソングができるまで』
C)Warner Bros. Entertainment Inc.

【写真を見る】小沢が「人間的に魅力的」と語るドリュー・バリモア

映画を愛するスピードワゴンの小沢一敬さんならではの「僕が思う、最高にシビれるこの映画の名セリフ」をお届け。第14回は、ヒュー・グラントとドリュー・バリモアが初共演を果たしたロマンティック・コメディ、『ラブソングができるまで』(‘07)。さて、どんな名セリフが飛び出すか?

──今回は、少し古い2007年の映画をチョイスしていただきましたが。

小沢「うん、今回も面白かったね。なんていうかさ、最近はどんな映画にも『実はこういうメッセージが込められてます』とかって意味を持たせたがるでしょ。もちろん、それはそれで楽しいし、映画を観終わった後で友達と語り合う面白さみたいなものもあるんだけどさ。その一方で、何も考えずに、ただただ楽しい映画を観たい日もあるじゃん。そういうときにピッタリの映画だと思うよ、これ」

──ホントに楽しいエンターテインメントな映画ですもんね。

小沢「そうやって単純に楽しいっていうことは、すごい価値があると思うし。だから、そんな映画をこうやってわざわざ語ろうとすることが、実は失礼なんだよ(笑)」

──確かに、こんな風にじっくり語られたことのない映画だと思います。

小沢「そうだよね。だって、語るべきところがあんまりないから(笑)。でも、それってすごいことだよ。俺はカレーが大好きなんだけど、カレーのうまさを説明するほどバカバカしいことはないと思ってるのね。『カレーはおいしい』って言葉が一番なんだから。それを『これはスパイスが何種類も入っていて…』なんて言ってるやつ、イヤじゃん」

──そんなカレーがおいしいのと同じぐらい、当たり前に面白い映画ということですね。

小沢「なんの教訓もないもんね、いい意味で。だから、もしかしたら高尚な人とかはばかにするかもしれない。あんな映画の何がいいんだって。でも、あえてそれを言わせちゃう映画って、すごくない? そうやってばかにされることすらも、最初からセットになってるんだから。それぐらい器のデカい映画だと思うよ」

──ばかにされがちだけど、決してばかにしたもんでもない映画。

小沢「そう思うね。また、そういう映画だから(上映時間が)100分ぐらいであるべきだし。これが2時間半あったら、俺もちょっと文句言ってた可能性あるから(笑)」

『ラブソングができるまで』
C)Warner Bros. Entertainment Inc.

──ヒュー・グラントとドリュー・バリモアという主演の二人も良かったですよね。

小沢「うん、チャーミングだよね、二人とも。チャーミングっていうのは、かわいいってことじゃなく、魅力的って意味でね。顔の造形の美しさっていうのもいいけど、やっぱり人間的に魅力的なほうがいいじゃん。笑ってる顔をずっと見てられる二人で、それは顔の作りじゃなくて、表情の良さなんだろうけど。そこが良かった」

──映画の内容はタイトルの通り、1980年代に一世を風靡したバンドの元ボーカルが、たまたま出会った女性と一緒にあるラブソングの作詞作曲をしていくというお話です。

小沢「実はこの作品を選んだ理由のひとつが、俺、歌詞についてずっと考えてることがあって、その話をしたかったからなんだけど」

──どんな話ですか?

小沢「言ってもいい? 俺はさ、音楽が大好きで、子どもの頃から洋楽も聴いてたんだけど、洋楽を聴いてると、いつもアメリカ人とかイギリス人がうらやましくなるのね。というのは、例えばビートルズを聴いても、俺らには歌詞が頭に入ってこないじゃん、英語が分からないから。だけど英語をネイティブで話せたら、メロディと同時に歌詞の意味も入ってくるんだろうなって」

──確かに。われわれは歌詞カードの訳詞を読みながら意味を追わなきゃならないですもんね。

小沢「だから俺は、やっぱり日本の歌が好きで。それは単純に、歌詞の意味が分かるからなんだけど、そんな俺の気持ちを表したようなセリフが、この映画の中に出てきて。それが今回選んだ名セリフなんだ」

【写真を見る】小沢が「人間的に魅力的」と語るドリュー・バリモア
C)Warner Bros. Entertainment Inc.

──今回、小沢さんがシビれた名セリフは?

小沢「(メロディと歌詞)二つが合わさって“魔法”が生まれるの」

──偶然知り合ったアレックス(ヒュー・グラント)から新曲につける歌詞の作詞を頼まれたソフィー(ドリュー・バリモア)。アイデアが浮かばずに悩んでいるとき、アレックスから「気楽に言ってみて。たかが歌詞だ」と言われたソフィーが反論するセリフです。「メロディは第一印象よ。肉体的魅力やセックス。でも“相手の本当の姿を知ること”が歌詞よ。二つが合わさって“魔法”が生まれるの」と。

小沢「俺もまさに二つが合わさって魔法が生まれると思ってるんだけど、じゃあ、そこでさらに『歌詞とは何か?』ということを考えたときに、一つ感動した話があって。またTHE BLUE HEARTSの話になっちゃうんだけど」

──この連載では毎度おなじみ、甲本ヒロトとマーシー(真島昌利)のブルーハーツですね。

小沢「ブルーハーツは、ほとんどの曲をあの二人がそれぞれ分担して作ってたんだけど、どっちが作った曲も『歌詞がいい』って言われ続けてきたのね。で、そのことをある取材で聞かれた二人の言った答えが、『歌詞っていうのは指なんだよ』と」

──指とは?

小沢「例えば、月がきれいだと思って、それを歌にしようとしたとき、歌詞っていうのは、その月を指してる指なんだと。だから、『歌詞がいいですね』って言われるのは、『指がきれいですね』って言われてるようなもんだと。ヒロトさんは『僕らが本当に伝えたいのは、その指が指してる月のことなんだよ。だから歌詞だけ褒められても困るんだ』みたいなことを言ってて」

──なるほど~。ヒロトさんらしい言い回しの、いい話ですね。

小沢「めちゃくちゃいいよね。この話をしたかったんだ、ここで(笑)」

──この話をするために、今回の映画が選ばれたようなもんですね。

小沢「そうそう。ちょうどいいセリフが出てきたから。まさにメロディと歌詞が合わさったときに魔法は起きるよね、と」

──語るべきところがないと言いつつ、だいぶ語れる映画でしたね。

小沢「そうね。教訓は何もないと言ったけど、もしかしたら、この映画を観て『私も何かやらなきゃ』ってやる気になった女子もいただろうし。結局、どんな映画でも、人は何かを得るんだよ。どう受け止めるかは、その人次第だから。例えば、クレヨンしんちゃんの映画で救われた人だって、何人もいるはずでしょ。そう考えると、映画ってホントにすばらしいですね…(淀川長治調で)サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ!(笑)」

──そんなオチでいいんですか?

小沢「もう、俺はヒロトとマーシーの話をできただけで、かなり満足してるから、大丈夫(笑)」

小沢一敬

KADOKAWA

愛知県出身。1973年生まれ。お笑いコンビ、スピードワゴンのボケ&ネタ作り担当。書き下ろし小説「でらつれ」や、名言を扱った「夜が小沢をそそのかす スポーツ漫画と芸人の囁き」「恋ができるなら失恋したってかまわない」など著書も多数ある。(ザテレビジョン・取材・文=八木賢太郎)

元記事で読む