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共働き世帯で配偶者が死亡したら遺族年金はもらえる?妻・夫の違いをFPが解説

  • 2020.3.17
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近年「イクメン」という言葉が一般化しつつあり、家事や育児に関して男女の差をなくし夫婦ともに協力しあう家族のスタイルが増えてきたそうです。

これは、国が推進している働き方改革の影響もあり、お子さんの居る女性が正社員としてバリバリ働くことも珍しくありません。専業主婦だけでなく、専業主夫もどんどん増えているそうです。

このことから、必ずしも一家の大黒柱が男性ではなく女性の場合もありますし、一本の大黒柱が、妻と夫の協力体制で守られているご家庭も多いと考えられれます。

このような近年の家族スタイルの場合、配偶者が死亡したらどうなるのでしょうか?家計を支える主な収入のある方が妻だった場合、専業主夫の夫が遺族年金をもらうことは出来るのでしょうか?

今回のテーマは、かなり身近に感じる方が多いかと思います。ポイントを絞って紹介しますので、最後までどうぞお付き合いください。

受給要件

今回のテーマで、特に気になるのは「私の場合はどうなの?」ということですよね。ご家庭ごとの働き方や、世帯を支える収入のある人は様々ですので、こまかくご紹介することは残念ながらできません。

代わりに、亡くなった方が夫の場合と妻の場合、さらにそれぞれ「自営業」「会社員」の二つの場合に分けて概要をまとめますので、是非参考にされてくださいね。

遺された配偶者の前提条件(共通)

【遺族基礎年金】【遺族厚生年金】いずれにも共通する前提条件としては以下の項目です。

  • 年収850万円以上だと対象外(高収入の方はもらえない)。
  • 前年の収入が850万円を超えていても、概ね5年以内に雇用契約が終わる等、長期的に年収850万円超が続くわけではない場合は受給対象とみなされる。

現行制度では【基礎年金】と【厚生年金】の2種類ですが、以前は公務員の方が加入する【共済年金】というものがありました。現在では【厚生年金】と統合されています。現在、公務員の方は【厚生年金】の箇所を参考にされてください。

夫が死亡した場合

【遺族年金】について考える前に、共働き世帯で夫が死亡した場合、特に子供がいる場合は妻の働き方を見直さなければいけないかもしれません。

夫婦で分担していた家事や育児を全て妻が一人で担うとなると、これまで通りというわけにはいかなくなることもあるでしょう。また、お子さんの有無に関わらず、精神的なショックから体調を崩す方もいらっしゃるでしょう。

配偶者が亡くなるということは、金銭的な面だけではなく様々な面に関して不安が出てくる方が多いのではないでしょうか。そのことも踏まえつつ、まずは夫が死亡した場合について見ていきます。

ケース1:夫が自営業の場合

夫が自営業である場合、加入している年金は【国民年金】です。【国民年金】の加入者が亡くなった場合は【遺族基礎年金】のみです。【遺族基礎年金】をもらうための遺族の条件は「子」「子のある配偶者」です。

つまり、お子さんのいない共働き夫婦で夫が自営業の場合、妻が受け取ることのできる【遺族年金】はゼロということになります。

一方、お子さんのいらっしゃるご夫婦であれば、お子さんが18歳になった年度末までは「子」とみなされて、子供の分の【遺族基礎年金】も同時にもらえます。

ただしここで注意なのは、お子さんが18歳になった年度末を過ぎたら、制度上の「子」ではなくなりますので、「子」の年金額と「子のある配偶者」の年金額は、いずれももらえなくなってしまいます。

対策とポイント

夫が自営業者で、もらえる【遺族年金】が何もない場合、奥様は大変心細いかと思います。少しでもご不安を軽減するために、今からでもできる対策はありますのでご安心くださいね。以下、その一例です。

  • 妻や子を死亡保険金受取人として生命保険に加入する(遺族保障のテッパン)。
  • 夫が死亡した後に、その後の事業をどうするか事前に決めておく(事業閉鎖、引き継ぎ等)。

国からの遺族保障が足りない、または最初から保障がないとわかっている場合は、その後のご遺族の生活費としてどれくらい必要であるか、最低でもどれくらい遺したらよいのかを事前に把握し、予め備えておくと良いでしょう。

ケース2:夫が会社員等の場合

亡くなった夫が会社員・公務員などの給与所得者で、加入している年金が【厚生年金】である場合、遺族年金は【遺族基礎年金】と【遺族厚生年金】の2種類があります。この2つを同時にもらえる場合もあれば、どちらか片方だけの場合もあります。

  • 18歳未満の子供がいる場合は【遺族基礎年金】【遺族厚生年金】のどちらも対象。
  • お子さんが18歳以上になったり、お子さんがいらっしゃらない場合は【遺族厚生年金】のみ対象。
  • 子供のいない妻で、死別した時に妻が30歳未満である場合【遺族厚生年金】をもらうことが出来る。ただし5年の受給上限あり。
対策とポイント

ここでもやはり子供の有無はポイントになりますが、自営業者の場合と違い、何ももらえない場合は無いということがお解りいただけたと思います。

この場合、少し心配になるのが、子供のいない30歳未満の妻の場合です。条件が厳しく、受給開始から5年経つと一律打ち切りになります。

妻が30歳未満となると、結婚してそう時間が経っていないことと考えられますから、生命保険に未加入であったり、独身時代のまま継続している方が多いのが現実です。 結婚を機に保険の見直しを 悲しい状況になることは考えたくないとは思いますが、結婚を機に生命保険の新規加入や見直しをしておくことを、FPとして是非お勧めします。万が一奥様が一人遺されて【遺族厚生年金】が打ち切られても安心できるだけの金額を遺すことが出来ます。

予めリスクに備えるという意味で、生命保険の正しい加入の仕方ではないでしょうか。

妻が死亡した場合

共働き夫婦で奥様が亡くなった場合、ご主人は今後どうなるのでしょうか。日頃から家事、育児を率先して行っている夫だったとしても、妻と役割分担していたことに関しても全て夫一人でこなすことになります

一般的に、時間外まで預かってくれる保育施設の利用やベビーシッターにお願いする等、金銭的な負担がかなり増えることが多いとの事。食事に関しても、出来合いのモノで簡易的に済ませる場合も多くなり、かえって出費がかさむことになります。

ご両親や身内の方で家事育児に協力してくれる方がいらっしゃれば良いのですが、なかなかそういうご家庭ばかりではありません。ここからケース別に見ていきましょう。

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ケース1:妻が自営業の場合

妻が自営業で【国民年金】のみ加入していた場合、18歳に到達した年度末を迎えていないお子さんがいれば、夫も子供も【遺族基礎年金】を受け取ることが出来ます。残念ながら、お子さんがいなかったり、すでに子供が18歳以上である場合は【遺族基礎年金】がもらえません

対策とポイント

ここで気になるのは、ご夫婦で自営業をされていた場合。お子さんがいない夫は【遺族基礎年金】はもらえません。さらに、二人で店舗経営などをしていた場合、妻が亡くなることで事業の規模縮小や、場合によっては閉店せざるを得ないこともあるでしょう。

なおかつ、夫が老後にもらえるお金も【老齢基礎年金】だけ、となれば妻と死別したことにより経済的・精神的に厳しい状況が続くことも予想されます。

リスクに備えるという意味で、自営業の夫婦の場合は、お互いを死亡保険金受取人として生命保険にしっかり加入しておくことをお勧めします。あわせて、老後資金対策として民間の個人年金保険や、つみたてNISA、iDeCo、国民年金基金などの加入も可能な範囲で進めておくと安心です。

ケース2:妻が会社員等の場合

亡くなった妻が会社員・公務員の場合、発生するのは【遺族基礎年金】【遺族厚生年金】です。

ケース1の自営業者の場合にも書きましたが、【遺族基礎年金】の受給の対象者は「子」「子のある配偶者」です。つまり、18歳に満たないお子さんがいれば、夫も【遺族基礎年金】をもらえます。しかし子供が18歳以上になったり、子供がいない場合は残念ながらもらえません。

では【遺族厚生年金】はどうかというと、子供の有無は関係ないのですが、夫の年齢の条件があります。妻が死亡した時、夫が55歳以上であった場合、夫は60歳以降にならなければ【遺族厚生年金】がもらえません

つまり、妻が亡くなった時に、夫が55歳以下であれば【遺族厚生年金】はもらえません。残念なことに、子供もいない場合は【遺族基礎年金】ももらえませんから、結果的に遺族保障としてもらえるものは無いという事になります。

対策とポイント

近年やっと遺族年金の対象者が妻だけではなく「配偶者」という表現になり、夫も対象になったとはいえ、子供の有無であったり、年齢制限が有ったりと、まだまだ夫が妻と同じような遺族保障を受けられる体制ではないとお解りいただけたと思います。

このことから、事前に奥様とよく話し合い、資産の洗い出しや整理をできる範囲で進めておくと安心です。何度も繰り返しになりますが、足りない保障は民間の生命保険で補完するのも対策のひとつです。

子供の有無がポイント

ここまで、亡くなった配偶者のケースごとに【遺族年金】についてまとめてきました。非常に大きなポイントとして「子供の有無」があることは十分にご理解いただけたかと思います。

18歳以下のお子さんは、一番教育費がかかると考えられます。更に教育費という面では18歳で終わりではなく、近年は大学の進学率も高くなっています。

【遺族年金】としてお子さんに支給される18歳までの期間を過ぎてもなお、大学の進学費用や一人暮らしの支援なども含めると、お子さんに関しては18歳以降も資金が必要となると考えておいた方が良いでしょう。

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老後はどうなる?

共働きの夫婦の場合、それぞれにしっかりと収入があり、年金も滞りなく支払っていると思います。そうなると、在職中に配偶者と死別した場合、条件に当てはまれば何らかの【遺族年金】をもらうことができますよね。

ここで気になるのが「ご自身の【老齢年金】がもらえるようになった場合【遺族年金】はどうなる?」ということです。

退職前は気にしなくてよい

ご自身が退職する前、つまり在職中であれば、受け取っている年金が【遺族年金】だけですのであまり気にすることはありません。

というのも【遺族基礎年金】【遺族厚生年金】はいずれも非課税扱いです。年末調整や確定申告でも、所得として申告する必要がありませんから、何も気にすることはありません。

併給できる年金

日本は「ひとり一年金」制度を導入しており、基本的には国民一人に対してもらえる年金は1種類のみです。種類が同じであれば基礎と厚生どちらももらうことは可能です。(例えば【遺族基礎年金】と【遺族厚生年金】は一緒にもらえます)

【老齢年金】や【障害年金】をもらえるようになる場合は注意が必要です。異なる種類の年金の受給権がある場合は、年金事務所に相談に行くのが確実です。

ただし、例外としてこれら3つの組み合わせは、65歳以降であれば併給可能です。

  • 【老齢基礎年金】+【遺族厚生年金】
  • 【障害基礎年金】+【遺族厚生年金】
  • 【障害基礎年金】+【老齢厚生年金】
シミュレーションを活用しよう

日本年金機構のねんきんネットを代表として、Web上には無料で利用できる年金シミュレーションがあります。遺族保障だけでなく、老後の年金の試算ができるものもあります。

万が一に備えて早めに対策を始めることを考えると、予めどのくらいの年金額なのかは把握しておくと良いでしょう。ぜひ各種シミュレーションを活用されてください。

共働きの遺族年金・まとめ

今回のテーマで一番のポイントは、お子さんの有無です。また、妻を亡くした夫が年金をもらう場合は、現行制度ではかなりシビアな条件であるとわかりましたよね。

現行の条件でいくと、実際どの程度の「夫」の方が遺族保障を受けられているのか気になるところです。【遺族年金】制度は、あくまでもご遺族に対する最低限の生活費としての給付額です。もらえたとしても、決して贅沢をできる金額ではありません。

国からもらえる遺族保障の補強として、やはり民間の生命保険に加入する等の自助努力は必要であると考えます。その参考として【遺族年金】のシミュレーションなどを活用し、過度に保険加入することが無いようにお気を付けください。

年金額だけでは足りないと推測される部分だけを、民間の生命保険で補うイメージで加入しましょう、すべてを自助努力で補う必要はありませんよ。ご安心くださいね。

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