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【医師監修】ねんねトレーニング、赤ちゃんの心への影響は?医学的正しい実践法

  • 2020.3.9
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赤ちゃんが夜泣きをして、なかなか自分自身がゆっくり眠れないというママやパパは多いでしょう。親が寝不足で元気がなくなってしまうと、日中の過ごし方にも影響してしまい、生活全体の質が下がってしまうというリスクもありますよね。

今回は、「ねんねトレーニング」の進め方について、書籍『家族そろってぐっすり眠れる 医者が教える赤ちゃん快眠メソッド』を元に医師でありママでもある森田 麻里子先生に、ねんねトレーニングの進め方や子どもの心への影響についてアドバイスをいただきます。

医師 森田 麻里子先生

1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表
赤ちゃんの安眠サポート「ぐっすりBaby」公式サイト


■ねんねトレーニングとは



「ねんねトレーニング」という言葉は聞いたことがあるという人も多いでしょう。
【ねんねトレーニング(以下、ねんトレ)とは】
2週間ほどかけて、赤ちゃんに一人で寝つくことを教えるトレーニング
日本では添い寝文化があり、赤ちゃんを一人で寝かせることに罪悪感を持ったり、「トレーニング」と聞いて難しく感じたりする人も多いかもしれません。

しかし、赤ちゃんが一人でスムーズに寝つくようになると、たとえ夜中に目を覚ましても、眠りに戻るためにママやパパを泣いて呼ぶことはなくなります。そしてねんトレは、子どもにとってもママもパパにとっても「眠りの質を高める」ことができる一生役立つスキルとなります。

ねんトレの効果は、数多くの研究で証明されているのが特徴です(*1)。

■ねんねトレーニングの具体的なやり方は?

では、どのようなステップでねんトレをすればいいのか、具体的な方法についてご紹介したいと思います。

▼いつから「ねんトレ」を始めればいいの?


ねんトレは、生後6ヶ月以降に開始します。

ほとんどの研究は、ねんトレは生後6ヶ月以上の赤ちゃんを対象にしています。この時期の赤ちゃんは、抱っこや母乳・ミルクがないと寝つかない場合、睡眠とそのような行動とのつながりが強くなっているためです。

生後6ヶ月以降になると、「眠い」以外の理由では泣かなくなってくるため、夜寝つくときや夜中に泣くということは、「眠いのに寝つけないから」であることが多くなります。

▼ステップ1、夜のルーティーンが終わったら部屋を出る



●夜のルーティーンを行う

●赤ちゃんをお布団におろす

●子守歌を歌う

●「おやすみ」と言って部屋を出る
「夜のルーティン」とは、赤ちゃんがスムーズに寝るために、寝る時間の少し前の決まった時間に決まった順番で繰り返し行動することをいいます。

これにより赤ちゃんがリラックスし、赤ちゃん自身も「このルーティンが始まったら寝る時間なんだな」と条件づけられます。

<生後6ヶ月以降の夜のルーティーン例>
●部屋を薄暗くする
●お風呂
●母乳・ミルク
●歯磨き
●絵本
●おやすみのごあいさつ
●子守唄



これはひとつの例ですが、このようなルーティーンを行うと、寝つきやすくなるということが研究でもわかっています(*2)。ルーティーンが終わったら、「おやすみ」と言って部屋を出ましょう。

▼ステップ2、泣き続けたら、部屋に入って声をかける



<「ぎゃー」「えーん」と泣き始めた場合>

●時計を見て、部屋に入るまでの時間を測る

●泣き続け、落ち着く気配がなければ部屋に入る

●「大丈夫だよ」などと声掛けをする

●声をかけ終わったら、数十秒ほどで部屋を出る

ねんトレ初日であれば、赤ちゃんが泣いたらまずは約3分間、外で様子を見ましょう。それでも泣き止みそうになければ、赤ちゃんのそばに行きます。

赤ちゃんへの声掛けは淡々と「ねんねだよ」「大丈夫だよ」と行い、「いつもと違う状況になっているけれど、これで大丈夫なんだよ」と伝えてあげます。

<赤ちゃんが声をあげる、もぞもぞ反応するなどの場合>

●何も反応せずそっとしておく

▼ステップ3、部屋に入るまでの時間を少しずつ延ばす



部屋を出てすぐにまた泣き始めたり、ずっと泣き続けている場合は、初日であれば次は5分程度待ってから部屋に入ります。

ステップ2を繰り返したあと、再度泣く場合は、次は10分待ちましょう。このようにして、2日目、3日目と日がたつにつれてさらに時間を延ばしていくことによって、ねんトレが進んでいきます。

<部屋に入る時間の目安(一番右が最大待ち時間)>

1日目:3分 → 5分 → 10分
2日目:5分 → 7分 → 12分
3日目:10分 → 12分 → 15分


▼ステップ4、寝つくまで繰り返す



●ステップ2、泣き続けたら、部屋に入って声をかける

●ステップ3、部屋に入るまでの時間を少しずつ延ばす

●部屋に入るまでの時間は、最大時間(1日目は最大10分)を寝るまで繰り返す



<夜中に目を覚まして泣いたとき>

●部屋に入って声をかける(その日の一番短い時間から始める)

●ステップ4、寝つくまで繰り返す

ママやパパが同じ部屋で寝ている場合は、完全に寝たふりをして、時間ごとに声掛けをしてあげましょう。



■ねんトレは心の成長によくない?



ここまでねんトレのステップについてみてきましたが、よくあるねんトレにまつわる不安のひとつに、「ねんトレは心の成長によくないのではないか」というものがあります。

しかし、じつは、ねんトレは赤ちゃんの心の成長に悪影響を与えないことは、医学研究によって証明されています(*3)。

泣いたら何がなんでもすぐに抱っこして泣き止ませなければ、心の成長に悪影響があるというわけではないのです。

ママやパパが赤ちゃんが夜泣きするたびに目をさまし、睡眠不足になってしまうことの方が大問題。寝不足によってママやパパの元気がなくなってしまい、日中に笑顔で子どもと向き合えなくなってしまうことは、家族にとっても苦しいことに思えます。

▼ねんトレを成功させるには


【ねんトレ成功のカギ】
「不安になってもブレずにトレーニングを続けること」

ねんトレ中に一度不安になると、悪いことばかりを考えてしまって不安がどんどん大きくなり、ねんトレを中断してしまう原因になってしまいます。ねんトレに対する不安は、できる限りトレーニング前に解消しておきましょう。

■「ねんトレが不安…」そんな声に森田先生がアドバイス!

「ねんトレを始めたいけれど、不安で…」というママのために、森田麻里子(もりた・まりこ)先生からアドバイスをいただきました。

――子どものギャン泣きに罪悪感をいだいてしまうママやパパに、「ねんねトレーニング」を行うアドバイスをいただけますか?



赤ちゃんがギャン泣きしているのはやはり親としてつらいものですが、長期的に「何が家族全体のためになるのか」、ということを考えていただけたらよいのではと思います。

今までとまったく違う寝かしつけ方法に変えたとしたら、赤ちゃんが泣くのは当然ですよね。これまでずっと続けてきた習慣が、ガラッと変わるわけですから。でも、そうして寝つくための新しい方法を身につけられたら、ママ・パパも赤ちゃんもぐっすり眠れるようになります。

夜中も何度も授乳やミルク、抱っこをして、ママ・パパが日中フラフラになっているのと、夜中の授乳やミルク、抱っこをやめる代わりに日中笑顔で目一杯遊んであげられること。どちらが家族全員にとって良いでしょうか?

――たしかにそうですね。でも、やはりギャン泣きされるとつらいときもあります。

そうですよね、ただ、赤ちゃんを泣き止ませるのはすべて親の責任というわけではない、と私は思います。赤ちゃんには個性があって、あまり泣かない子もいれば、すごく泣きやすい子もいます。

もちろん、「おなかが空いた」とか「暑い」「寒い」といったような親が対応してあげられる理由で泣いているとしたなら、対応すべきだと思います。

でも、どうやっても泣き止ませられないこともありますよね。赤ちゃんだって、泣きたいときがあるのではないでしょうか。手を変え品を変え必死にあやし続けて疲れてしまうくらいでしたら、そっと見守ってあげるだけでも良いと思います。

ついつい、とりあえず「泣き止ませることだけ」を目標にしてしまいがちですが、本当はどうするのが赤ちゃんやママ・パパにとって一番良いのか、考えてみていただけたらと思います。

――心が折れて、ねんトレの最中に抱っこや添い乳をしてしまったら…。どうすればいいでしょうか?

抱っこや添い乳自体が悪いとはまったく思いません。もしママやパパが困っていないなら、夜中に起きて抱っこや添い寝などで寝かし続けても良いのです。

ただ、睡眠を改善するためには、「寝かしつけを変える必要なケースがある」というのはやはりあります。ご家庭の中で、ねんトレした方が幸せなのか、しなくてよいのか、ぜひ考えていただければと思います。

赤ちゃんが泣いてしまうというのは、ママやパパにとってやはりつらいものです。でもママやパパが悪いことをして、赤ちゃんが泣いているわけではないですよね。「泣いてしまっているけれど仕方ない」、「この子も上手に眠れるようにがんばっているんだね、がんばれ!」と思えるようになると、ねんトレもうまくいくと思います。



筆者自身も、子どもたちの夜泣きについて思い返してみると、連日子どもが寝ぐずりをして涙した深夜を思い出し、あの頃の自分にねんトレの存在を教えてあげたかったと思ってしまいます。

子どもの夜泣きや睡眠事情については、子どもによってまったく異なり、解決するための正解はひとつではありません。そこが難しいところで、ついつい孤独をかかえてしまうママやパパも少なくないと思います。

ねんトレを「する」、「しない」の正解はありませんが、ママやパパたちがぐっすり寝て、次の日に笑顔で過ごせることは、きっと子どもたちのためにもなるでしょう。そして、家族が笑顔ですごせることこそが、最高のゴールなのかもしれません。

■医学書や医学論文に基づいた「最高の寝かしつけメソッド」
『家族そろってぐっすり眠れる 医者が教える赤ちゃん快眠メソッド』


医者である著者が、睡眠時間を延ばすテクニック、月齢別睡眠スケジュール、正しい夜泣き対策など、医学研究にもとづいた快眠メソッド、正しいねんねトレーニングの方法を具体的に掲載。
赤ちゃんの寝つきをよくするための生活習慣や寝室環境を改善する方法、ママやパパが抱えがちなねんトレについての不安にまつわるQ&Aも掲載。
<参考文献>
*1)オーストラリアでの試験(2002)
生後6カ月~1歳の赤ちゃん156人を対象に行われたランダム化比較試験。一方のグループにだけ段階的消去法(ご紹介したような部屋に入るまでの時間をだんだん延ばしていくねんトレ)、または寝かしつけに少しずつ手をかけないようにしていく方法でねんトレを行った。すると、ねんトレをしたグループでは2カ月後に70%が改善、何もしなかったグループで47%が改善した(*4)。
*2)Mindell JA, Telofski LS, Wiegand B, Kurtz ES(2009) A nightly bedtime routine:inpact on sleep in young children and maternal mood, Sleep;32(5):599-606.
*3)Price AM, Wake M, Ukoumunne OC, Hiscock H (2012) Five-year follow-up of harms and benefits of behavioral infant sleep intervention: randomized trial. Pediatrics; 130(4):643-51.
*4)Hiscock H, Wake M(2002) Randomized controlled trial of behavioural infant sleep intervention to improve infant sleep and maternal mood,BMJ;324(7345):1062-5.

(高村由佳)

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