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ナスD語る、“ネット時代”意識したテレビ作り「そこだけは自信があります」 過酷取材で伝えたい“リアル”とは

  • 2020.3.8
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過酷取材の裏側を語ってくれた友寄隆英氏、大谷映芳氏(写真右から)
(C)テレビ朝日

【写真を見る】白銀の世界の中、過酷な山道を進む友寄隆英氏ら取材クルー

テレビ朝日開局60周年記念の特別企画として、友寄隆英ディレクターと大谷映芳氏が初タッグを組んで挑んだ「氷と雪に閉ざされた秘境の地 天空のヒマラヤ部族 決死の密着取材150日間」(夜8:53-11:26、テレビ朝日系)が、3月8日(日)に放送される。

「陸海空 地球征服するなんて」(2017-2019年)では南米アマゾンに暮らす部族に体当たり取材を行い、全身真っ黒の姿になった“ナスD”こと友寄ディレクターが今回訪れたのは、日本から約5000キロ、行きつくまでに最悪1カ月間もかかる“ヒマラヤ最奥の聖地”ネパール・ドルポだ。

「ニュースステーション」の取材ディレクターとして世界の集落や高山に潜入リポートを敢行、数々の功績を残した元テレビ朝日局員・大谷氏も同行し、2人は四季を通じてドルポを取材。その期間は計150日にも及んだという。

今回、ザテレビジョンでは破天荒ディレクターの友寄氏と、伝説の辺境ディレクターとも呼ばれた大谷氏にインタビューを実施。2人の出会いから長期密着取材の裏側、過酷なロケやテレビの“今”について語ってもらった。

友寄氏「大谷さんは“本物”」

過酷取材の裏側を語ってくれた友寄隆英氏、大谷映芳氏(写真右から)
(C)テレビ朝日

――破天荒D、辺境Dとして取材されてきたお二人ですが、今回初タッグということで、お互いの印象を教えてください。

友寄隆英氏:大谷さんは、「ニュースステーション」をやられていたのでもちろん存在は知っていたのですが、お会いするのは今回が初めてです。

冒険好きな登山家がテレビ局に入って、結果として辺境を取材することになったのかなというイメージを抱いていました。

僕は冒険家でも全くなくて、テレビ業界にアルバイトから入って、フリーのディレクターになって、テレビ朝日に入り、結果的に冒険番組を担当することになったので、本当に似て非なるものというか…大谷さんは“本物”という印象です。

すごく優しくて物静かな方ですが、破天荒と言われている僕よりもよっぽどクレイジーであり本物ですね(笑)。

大谷映芳氏:(友寄氏のことは)アマゾンで真っ黒になっている番組を拝見しました。お会いしたときにも、「やっぱり違うな」と感じたんです。すごくまじめで、こういう人と組んで、僕が関わっている土地を取材してもらえるのはうれしい。

しかも1年以上の時間をかけて、これはいいものを作ってくれるだろうと確信しました。そういう番組って今ないから、とても楽しみでした。

友寄氏:元々大谷さんが、ヒマラヤの企画を出されていたんです。ちょうど僕も、アマゾンの取材が終わって、ヒマラヤに行きたいなと思っていたところに、今回の企画が実現しました。そこで初めて大谷さんに会わせていただいたのですが…。

大谷氏:割と気が合ったんだよね。

友寄氏:年が離れた兄弟というか、親子というよりお兄ちゃんという印象でした。今回の取材でも、毎晩大谷さんが眠くなるまでカメラを回しながら、いろんなお話を聞かせていただきました。

大谷氏「違った角度でドルポを撮ってみたかった」

「氷と雪に閉ざされた秘境の地 天空のヒマラヤ部族 決死の密着取材150日間」ロケの1シーン
(C)テレビ朝日

――ヒマラヤの中でも、今回のドルポ地方を舞台に選んだのはなぜでしょうか?

大谷氏:「ニュースステーション」時代に初めてドルポを取材して、世の中はどんどん変化していくのに、ドルポだけは変わらないんです。そこが気に入って、その後も時々訪れて付き合いが続いていました。

僕は元々ヒマラヤが好きで、そういう番組をずっとやってきたのですが、もう一度大型なドキュメンタリーをやりたいと思っていたら、それがこの形で実現した。ドルポ地方がもう一度テレビで紹介されるのはうれしいですね。

――友寄さんは、ドルポ地方と聞いてどのような心境でしたか?

友寄氏:僕は正直、ドルポと聞いて「どこやねん」と(笑)。普通はエベレストとかK2とか、シェルパ(※ネパールの少数民族・登山ガイド)に密着するとか、そういうことを考えていたんです。

ドルポは調べてもなかなかネットには載っていないし、かなりマイナーな地域で、「これテレビになるのかな?」と正直不安でした。

でも、行ってみて、そこにはちゃんと理由があったというか。何もなくて、すごく過酷な環境で、だからこそそのまま大地に生きる民族がそこにいて。

四季を通して大地が変化していくんです。真っ茶色の大地に雪が積もって真っ白になって、人々が大麦の種を植えて芽が生えて真緑になって、金色に輝いて茶色に戻り、また白くなる。その光景を初めて見たときに、大地に愛情を持てたというか、愛おしく感じたんです。だからそこに住んでいるんだなと納得できました。

大谷氏:僕が取材した当時から、カメラ機材や撮影技術も大きく進化しているので、もう一度違った角度でドルポを撮ってみたかったんです。

友寄氏「400年前にタイムスリップしたような…」

「氷と雪に閉ざされた秘境の地 天空のヒマラヤ部族 決死の密着取材150日間」ロケの1シーン
(C)テレビ朝日

――1年を通して取材することに意味があったんですね。

友寄氏:最初に訪れた秋は、こんなところで100日以上取材しても何も撮れないと思ったのですが、行くにしたがって、やっぱりちゃんと1年行かないと伝わらないものがあるなと気付きました。大地の変化、人々の生活の変化や表情まで、季節ごとに全く違うんです。

――中でも、印象的な瞬間はどういったところでしょうか?

友寄氏:400年以上続いている“仮面祭り”というのが、日本でいう大みそかにあったんです。テレビでは初めての潜入だったのですが、民族の方々に祭りのことを聞いても、皆さんほとんど知らないんです。

なぜやるのか、何の意味があるのか。伝承として年に1回、ただ楽しいから毎年やっている、というのが異常に“リアル”でした。実際にお祭りを見たとき、ふと400年前にタイムスリップしたような…全く同じことを、400年前からやっていたんだなと実感しました。

大谷氏:なんとなく意味があるんだろうけど、具体的に説明できないんです。当たり前過ぎてね。

友寄氏:それが素直で、祭りの根本を今も残しているのはここしかないなって、すごくリアルだったんです。

大谷氏「山の怖さを知らないから」

【写真を見る】白銀の世界の中、過酷な山道を進む友寄隆英氏ら取材クルー
(C)テレビ朝日

――今回は、“アジア最後の秘境”ともいわれる極寒の地で、非常に過酷なロケだったと思いますが…。

友寄氏:大谷さんにはガイド役として今回同行していただいて、日本人の制作スタッフも最初は4人いたんですけど、一人はネパールの都市・カトマンズにいる段階で、大谷さんから「危ないね」という判断が下って。

命を守るためにカトマンズに残して旅を進めたのですが、もう一人のスタッフも、3780メートルの地点で大谷さんが「帰そう」と。僕は行けると思ったのですが…。

大谷氏:そこから先に進むと、しばらく帰れなくなるんです。

友寄氏:先に進めば進むほど危険度も増していくので、帰れるときに帰る、というのが鉄則で。

大谷氏:ドルポって地域は、それだけ厳しいんです。かわいそうでしたが、これ以上は行かない方がいいよ、と。それだけ過酷だった。それでも、友寄くん含め、スタッフも強かったですよ。ただ、山の怖さを知らないから、峠でいつまでも良い画が撮りたいとずっと言っているんです。

――ディレクターとしての葛藤があったんですね。

友寄氏:それで喧嘩しました(苦笑)。3回くらい喧嘩したんです。大谷さんは冒険家のテレビマンで、僕はテレビマンの冒険家で、僕らは撮影したい。でも大谷さんは、みんなの命を預かっている役割なので、とにかく誰も死なずに次の目的地に届けたい。その葛藤の連続でした。

大谷さんに多少言われても、僕もサバイバルには自信があるから撮影を続けようとしたんです。でも、あっという間に真っ暗になって、気温も驚くくらい下がるんです。そうしたらもう、怖さしかなくて、下手したら死ぬなと危険を感じました。

その時は意地張って謝れなかったのですが、翌朝大谷さんにすぐに謝って(笑)。

大谷氏:僕はその時、「だろう?」って(笑)。

友寄氏:大谷さんは10秒も待ってくれないんです。でも、ヒマラヤの夜って、舐めてたら死ぬんですよね。

友寄氏「テレビの良さが伝わると思うんです」

「氷と雪に閉ざされた秘境の地 天空のヒマラヤ部族 決死の密着取材150日間」ロケの1シーン
(C)テレビ朝日

――では最後に、今回の見どころをお願いします。

友寄氏:編集視点で言うと、今回はネットの時代というのをすごく意識しました。ドローンでの撮影も含め、色づいた山や景色が延々とバックに続く光景は、テレビでしかできないんじゃないかと。

1日10時間、合計1500時間以上は撮影しているんです。1500時間の映像を、一度編集して120時間ほどに、そこから2時間半にするためには、見せたいものを一個に絞らないと収まらないと思ったんですよ。

そこで、テレビの奥行、高さ、深さだけに集中して、視聴者に今回の映像を届ければ、テレビの良さが伝わると思うんです。そこだけは自信があります。

大谷氏:民放ではなかなかできない挑戦で、今回は現場に自ら赴いてその土地に立って撮影できたのは良かったです。僕自身も放送がとても楽しみです。

――ありがとうございました!(ザテレビジョン)

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