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『伊藤家の晩酌』~第九夜3本目/旨味の中にキレを感じる食中酒「鷹来屋 特別純米酒」~

  • 2020.3.2
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弱冠22歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入! 酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは? 第八夜と第九夜の2回にわたって、娘と父が二人っきりの九州旅で実際に酒蔵を巡って選んだ6本をご紹介。旅の思い出の聞き手として母・ミキも加わった第九夜、3本目はこれぞ“酒”な味わいの食中酒。
(photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita)

第九夜3本目は、冷酒でも燗酒でも究極の食中酒「鷹来屋 特別純米酒」

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大分県豊後大野市に位置する浜嶋酒造から、福岡産山田錦と大分県産ヒノヒカリを使った旨味とキレを両立させた、蔵を代表する食中酒「鷹来屋 特別純米酒」。
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720ml 1430円(税別・ひいな購入時価格)/浜嶋酒造合資会社

父・徹也(以下、テツヤ)「第20回で紹介した『SOBOKU』のラベルと違うねぇ」
娘・ひいな(以下、ひいな)「『SOBOKU』は〈住吉酒販〉限定だったからね」
テツヤ「これはどんな日本酒なんだろう。今まで紹介した日本酒、全部九州の日本酒だったけど、同じ九州でもさ、ぜんぜん違ったもんね」
ひいな「第八夜で紹介した3本は華やか系で、旅の後半の第九夜では、だんだんと濃いめでクセのあるお酒に…」
テツヤ「最後の『鷹来屋』は、本当にいい蔵だったな」
ひいな「ね。思い出話は後にして、まず乾杯しよ」
母・美樹(以下、ミキ)「待ってました!」

テツヤ「この器、いいでしょう?」

ミキ「わ、すごく軽い!」
テツヤ「これはね、鹿児島のしょうぶ学園
に行った時に一目惚れして買ったおちょこ。木でできてて手彫りなんだけど、すごいいい味出しててさ。これにお酒入れたらうまいだろうな〜って思って即買い!」

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(ねじり鉢巻がお似合いの父・テツヤへ注いで…)

一同「んじゃ、乾杯!」

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(五臓六腑にしみわたるおいしさ)

テツヤ「いい意味で“酒”だね」
ひいな「うん、酒だね」
ミキ「おいしい」
テツヤ「これを一番最初に持ってきてもよかったんじゃない?」
ひいな「うん、あえてね」
ミキ「お酒らしいお酒ってこと?」
テツヤ「そう。『乾杯!』で飲んだら、『くぅ〜、酒だねぇ!』って感じがするんじゃないかな」
ひいな「わかる〜!」
テツヤ「俺、この酒、好きだなぁ。あとね、大将が好きなのよ。鷹来屋の」
ひいな「人が良すぎたよね」
テツヤ「ね。あの大将がつくる酒なんだから、やっぱり贔屓にしたくなるよね」

「鷹来屋 特別純米酒」を造る、大分県豊後大野市にある「浜嶋酒造」へ。

ミキ「この人が大将?」
ひいな「そう、代表の浜嶋弘文さん」
テツヤ「本当にいい人でさ」

ひいな「ここまで見学者にすべてを見せてくれるなんて思ってなくて」
ミキ「うわ〜、ここは麹をつくる場所?」
ひいな「そう。扉開けた瞬間、あったかくて。髪の毛もネットつけてないし、本当にいいんですか?って聞いたんだけど、大丈夫だっておっしゃって入らせてもらえたの」
ミキ「そんな場所に入れたの? すごい!」
ひいな「この酒蔵巡りの取材の数日前から納豆食べないで行ったもんね」
テツヤ「ね。麹室ってさ、酒蔵にとってすごく神聖な場所なんじゃないかなって気がしたんだよな」

ひいな「うん。普段なかなか見られない場所だからすごく興奮しちゃった。麹米も食べさせてもらったの」

ミキ「麹米ってどんな味なの?」
ひいな「麹の味がしたよ。白米を噛めば噛むほど甘くなるじゃない?それが早い段階でそうなる感じ」
テツヤ「うん、米とはぜんぜん違うものだったね」

ひいな「ステンレスのタンクに顔を入れて中を見せてくれたんだけど、もっと突っ込んで!って何度も言われて(笑)。もろみの香りを感じてほしいからって言ってくださって。プツプツと発酵している状態も見せていただいたし、『しぼり』の工程も見せてもらって」
テツヤ「このしぼりが昔ながらの工程で、『槽しぼり』っていうんだけど、袋づめしたお酒を上に重ねて、上から圧をかけて搾るから、酒粕だけが残るようになってるんだって」

ひいな「これが、昔の機械」
ミキ「へぇ〜!」
ひいな「この槽がね、鉄でできてて、こういうのお父さん大好きだから興奮してた(笑)」
テツヤ「テツヤだけに(笑)。いまあるこれを壊しちゃったらさ、修理するところがないっていう状況だって聞いてさ」
ミキ「なくなっちゃったら大変だね」
テツヤ「ホーローとかステンレスのところが多いらしい。小豆島の醤油蔵に行った時も、木の桶を作る業者がどんどんなくなっていて困るっていうことで、自分たちで木の桶をつくろうと、そのノウハウを一年かけて覚えて、酒蔵にその桶を売ってるんだって。そうやって継承していくって大事だね」
ミキ「ね。それがなくなっちゃったらお酒がつくれなくなるんだもんね」
ひいな「この蔵を選んだ理由はね、第20回で紹介した『SOBOKU』がきれいなお酒だったから、ほかの『鷹来屋』も飲んでみたいと思って酒蔵まで行っちゃいました」
テツヤ「大分ではすごく有名な酒蔵なんだけど、都内ではなかなか飲めないんだよね」
ひいな「そう。九州だけでしか飲めなくて、ほとんど出回ってないみたい。目の届く範囲内で流通させたいということなんじゃないかな」
ミキ「なるほど、そういうことなんだね」

「鷹来屋 特別純米酒」に合わせるのは伊藤家の定番「山芋鍋」!

テツヤ「お燗でも飲みたいな」
ひいな「お燗にしてみようか!」
ミキ「いいね!」
ひいな「45度の上燗にしてみたよ!」
テツヤ「あぁ、香るねぇ〜。今回は45度だけど、温度を決めるその差ってなんなの?」
ひいな「芳醇さ、かな。55度まで上げちゃうと逆にアルコール感が鼻にささっちゃうかもなと思って。42度にしようかなと思ったけど、上がり過ぎちゃった(笑)」

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(冷酒からお燗にして飲み比べ)
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(45度にしていただきます!)
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(さぁ、どうぞ〜)

テツヤ「(笑)。でもこの温度、おいしいよ! やってみないとわからないね」
ひいな「家で熱燗って、いろんな温度で試せるのがいいよね」
ミキ「42度くらいで飲んでみよう」
テツヤ「お風呂みたいな感じだな(笑)。飲みやすい! これは食中酒なんじゃないの?」
ひいな「前回の『SOBOKU』には湯豆腐だったけど、今回は山芋鍋に。お父さんが山芋を削ってつくってくれました!」

ミキ「だんだんと父娘の二人三脚になってきたね」
テツヤ「ひいな、鍋行くよ!」

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山芋をがしがしがしおろす音がキッチンから。「手がかゆい」とテツヤ。

ひいな「上にたっぷりととろろがのった山芋鍋です! 父の得意料理」
ミキ「おだしのいい香り〜 伊藤家の定番鍋だよね」
テツヤ「山芋と卵白を混ぜたものを上にかけると、ふわふわになるんだよ。鶏の団子がね、抜群に合うんだよね。今回は、味噌ベースでつくりました!」
ミキ「長芋1本(30cmくらい)をおろして卵白3つを混ぜる。ベースのスープは鶏ガラスープなんだけど、スープはその時によっていろいろ変えていて、ナンプラーが入ったり、和風だったり、今回は味噌ベースにしてみたんだよね」
テツヤ「長芋だけ入れちゃうとすぐに固まっちゃうから、もう少しふわふわさせたくて卵白と合わせたらバッチリ! 実は、後半にどんどんうまくなってくるの、なんなら次の日の朝が一番最高だよね」
ひいな「山芋がスープをどんどん吸ってね」
テツヤ「最初はね、味薄いかな?と思うんだけど、だんだん、なじんできて、止まらなくなる感じ」
ひいな「ね」
ミキ「入ってるのは、鶏の団子、手羽中、きのこ類に豆腐と今回は極力シンプルに」
テツヤ「各家で定番のお鍋ってあると思うけど、伊藤家ではこれだね」
ミキ「どうして『鷹来屋』と合わせようと思ったの?」
ひいな「正直、『鷹来屋』のお酒はどんな食事にも合う食中酒だと思ってて。酒がうますぎてもダメで、料理を引き立てることができなくてはいけないって考えてる蔵なの。山芋鍋って伊藤家では定番だから、紹介したくて」

ひいな「何回食べてもおいしいね〜」
テツヤ「お酒と合わないわけがないよね」
ひいな「しあわせ〜」
テツヤ「あれ、まだ味がなじんでないな。独立してる」
ひいな「でもおいしい。この後おいしくなっていくから大丈夫」
テツヤ「この子、きっといい俳優になるわ、っていうね」
ひいな「素質を感じるよね」
テツヤ「これに燗酒、最高だなぁ」
ミキ「『鷹来屋』は冷酒と燗酒、どっちが合うんだろうね」
ひいな「うわ〜難しい! どっちも合うから困っちゃう」
テツヤ「どっちも飲んでみようっと」
ひいな「はいはい」
テツヤ「冷酒は冷酒で合うけど、燗酒にした時のまろやかさのほうが鍋と合う気がするな」
ミキ「そうだね、燗酒には鍋が合う気がする」
ひいな「燗酒にすると、角がとれるよね」
テツヤ「家で燗酒いいね。家で鍋も最高だけど」

娘・ひいなの初取材となった、九州をめぐる酒蔵旅を振り返る。

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(蔵でいただいた前掛けを自慢げに!)

テツヤ「第八夜と第九夜の日本酒は本当にバラエティ豊かだったね。つまみもすごかった。いちご、パン、鍋と、総決算的な感じだったね」
ひいな「どこの蔵の方も、取材を快く引き受けてくださり、やさしくおもてなししてくださって、本当にありがとうございました!」
テツヤ「みなさま、ひいなを受け入れてくださって本当にありがとうございました!」
ミキ「日本酒が大好きな娘なんです。母からもありがとうございました!」
ひいな「もっとお酒のことを知りたい!って思ったし、とても勉強になった4日間でした!」
テツヤ「酒蔵に連絡を入れて、アポ入れして、取材して」
ミキ「ライターさんだね」
テツヤ「自分でアポとって取材したの初めてでしょ?」
ひいな「そう。人生初取材!」
ミキ「取材するにあたって、ひいなが自分で調べたり、アポ取ったりする大変さをそばで見てたから、ちょっとこの写真を見て感慨深い…」
ひいな「なんか恥ずかしいな(笑)」
ミキ「よくがんばった!」
テツヤ「いたらないところはあったかもしれないけど、ほんとよくがんばった! ライターさんとよく一緒に取材するけど、アポとるのも取材するのも質問するのも大変だからな。相手はお酒の専門家なわけですよ。その人に質問するっていうのはすごく緊張することだと思うんだよな」
ひいな「はい。実はすごく緊張した…。普通に取材するのも緊張すると思うけど、父親と一緒に行くっていうのでさらに」
ミキ「そりゃそうだ!」
テツヤ「そりゃやだわ!」
ひいな「父親参観みたいな(笑)。やっぱり取材って難しいなって身にしみてわかりました。まだ若いからで許されることもあるけれど、今回、自分で全部やってみて、大人対大人じゃないとできないことだったなってすごく感じたし勉強になりました。足りないところがわかった旅でした」
ミキ「成長したね」
テツヤ「若さが武器になる時もあるし、いましか聞けないこともあるだろうし。初めての取材だし、ひいなが聞きたいこと、知りたいことを聞くのが一番だと思うな」
ひいな「うん。飲んだことのある蔵で、行きたい蔵に行けたからすごく楽しかった!」

次回:3月8 日(日)更新予定

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浜嶋酒造合資会社の皆様、どうもありがとうございました!

【ひいなのつぶやき】
蔵の隅々まで案内して下さりありがとうございました! タンクをのぞき込んだ時の香り、忘れません!
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