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ウシがサンマを訴えた!? 魚屋の女将が起こした歴史に残る裁判をたどる

  • 2020.2.7
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2月8日(土)と11日(火)、テレビ朝日ほか全国各局で「第34回民教協スペシャル サンマ デモクラシー」(テレビ朝日では、8日[土]朝10:30-11:25)が放送される。

【写真を見る】沖縄テレビに残っていたキャラウェイ高等弁務官の映像も登場する

民教協(民間放送教育協会)は、放送を通じて教育の機会均等と振興に寄与することを目的に、1967年に設立された団体。既存の放送ネット系列を超えて全国34の民間放送局(テレビ33局+ラジオ1局)で組織される。

民教協では、1年に1度、加盟局から提出された企画の中から外部審査委員が選考して制作を決定する「民教協スペシャル番組」を放送しており、2019年度放送作品には、沖縄テレビ制作の「サンマ デモクラシー」が選ばれた。企画選考審査を担当したのは、映画監督の崔洋一氏、映画監督・作家の森達也氏、写真家・作家の星野博美氏の3人。

「サンマ裁判」を起こした玉城ウシ
(C)沖縄テレビ

「サンマ デモクラシー」は、米軍の占領下にあった1960年代の沖縄で、伝説のおばぁが起こしたサンマの関税に関する裁判を入口に、自治権をかけて統治者アメリカに挑んだ沖縄の人々の民主主義を巡る闘いを追いかけたドキュメンタリーだ。

1960年代初め頃の沖縄では、日本の味として大衆魚サンマの人気が高まっていた。サンマには輸入関税がかけられていたが、その根拠は琉球列島米国民政府の高等弁務官布令、物品税法を定めた高等弁務官布令十七号(1958年公布)。だが、関税がかかると指定された魚の項目に、サンマの文字はなかった。

そこで魚卸業の女将・玉城ウシは、1963年、行政を管轄し、税金を徴収する琉球政府を相手取り、「サンマに関税がかかるのはおかしい!」と、徴収された税金の還付訴訟を起こした。求めた額は、現代の貨幣換算でなんと7000万円。

【写真を見る】沖縄テレビに残っていたキャラウェイ高等弁務官の映像も登場する
(C)沖縄テレビ

裁判を展開した人々の視線の先には、1961年初めから1964年夏まで第3代高等弁務官を務めたポール・W・キャラウェイがいた。

キャラウェイ高等弁務官は、沖縄経済の改革に尽力したが、布令を何度も発令して民衆を縛り付け、本土復帰運動をも弾圧した施政を展開。沖縄のメディアはその猛威を「キャラウェイ旋風」と名付けた。1963年3月の講演会での「沖縄の自治権は神話に過ぎない」という発言でも知られる。

番組は、キャラウェイ高等弁務官に挑んだウシおばぁの「サンマ裁判」をきっかけに、その裁判を支えた弁護士であり、大きなことを言うことから「ラッパ」と呼ばれた政治家・下里恵良、“米軍(アメリカ)が最も恐れた政治家”・瀬長亀次郎らの行動をたどり、統治者アメリカと自治権をかけて闘った人々の姿を伝える。

番組ナビゲーターのうちな~噺家・志ぃさー
(C)沖縄テレビ

番組のナビゲーターは、うちな~噺家・志ぃさー(藤木勇人)、ナレーションを川平慈英が務める。

完成披露試写会より

1月24日には、企画審査を担当した崔洋一氏、森達也氏、星野博美氏も参加しての完成披露試写会が行われた。

制作を担当した沖縄テレビ・山里孫存(まごあり)ディレクターは、「アメリカ占領下の沖縄に民主主義、デモクラシーがあったのか、今の沖縄に民主主義があるのかと問いかける番組作りを目指した」と制作に込めた思いを明かした。

山里ディレクターが同番組を提案したきっかけは、SNSで目にした高校時代の仲間の投稿。「父は『サンマ裁判』の裁判官」という文言を目にして、「サンマ裁判」を調べ始めた。

「最初は裁判官を主人公に描こうと考えましたが、調べていくうちに、玉城ウシというおばぁが裁判を起こしたと分かり、『ウシ』が『サンマ』を訴えたという面白さを強く感じたので、玉城ウシ探しから取材に入りました」と語った。

その玉城ウシさんに関する資料は乏しかったようで、試写会に出席していた審査員らからは、「使用されている写真も少なく、苦労されたのでしょう。それでもウシさんのことをもっと見たかった」と感想があがった。番組には那覇市の牧志公設市場で働く人々や、ウシさんの妹の孫のコメントは盛り込まれている。

噺家をナビゲーターに起用し、全体を落語テイストで進行させた試みについて「まるで落語のような、今から考えると不思議なアメリカ統治下の沖縄を、面白く映像にしたかった」と山里ディレクター。

「今回、『サンマデモクラシー』という番組で、沖縄にこういう時代があったことを伝えられるのは制作者としてありがたい。たくさんの人に届いてほしいと思っています」と締めくくった。(ザテレビジョン)

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