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夫への不信感、そして昔好きだった彼とLINE交換で私は…【わたしの糸をたぐりよせて 第6話】

  • 2020.2.5
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前回からのあらすじ
幼稚園のママ友からの執拗なダメ出しに疲れていく友里。さらに夫の亮のスマホには、意味深なメッセージが届く。心にわだかまりが残る中、夫に頼まれた封筒を届けに行った先で、懐かしい顔と再会するのだった!
「ママ友の執拗なダメ出し、夫への不穏な通知…心のわだかまりが解けない」

●登場人物●
友里:都会で就職し結婚したが、夫・亮の転勤で地元の街に戻ってくる
:友里の夫。友里から告白してつきあうように。息子の悠斗を妊娠して以来、夜の生活がない
マキ:悠斗と同じ幼稚園に通うママ友で気が合う
カオル:悠斗と同じ幼稚園に通うママ友で、友里を配下に置こうと考えてる
イナガキ:友里の幼なじみ。小学校~高校まで一緒だった

※このお話はフィクションです


■心に暗い感情がのしかかる中、再会したのは…

夫のスマホに届いた不穏なメッセージ。そして急に決まった出張。
何もかもが怪しく思えてしまう夫の行動を、結局私は何ひとつ問いただせないまま、出張に出かける夫を見送った私。

そのホームで偶然再会したのは、幼なじみで小学校から高校まで一緒だったイナガキ君だった。


「イナガキ君、久しぶり! 元気だった?」

「うん、相変わらず元気でやってるよ! 今日はどうしたの?」

私は、夫の忘れ物を届けに行って、ついでに見送りまでしてきたことを話した。

「そっか、いい奥さんしてるんだね。僕はまだ独身だからなー」

そう言って微笑むイナガキ君は、高校時代とまったく変わりのない笑顔だった。

「懐かしいなー。このままお茶でも誘いたいけど、あいにくアポイント入ってて。LINE交換しない?」

LINEを交換したイナガキ君は、颯爽とホームの階段を下りていった。

イナガキ君こと、イナガキアキラはいまもっとも注目を集めるイラストレーターだ。最近では、大ヒットゲームのキャラクターデザインを担当したり、お菓子のパッケージデザインを担当したりと活動は多岐にわたっている。

私とは、小学校と高校が一緒で、家も近所だったことからよく互いの家に遊びに行っていた。イナガキ君のお母さんがつくる餃子がとても美味しかったのを覚えている。

そして私は、あの頃ずっとそっとだけどイナガキ君を見つめ続けていたんだった…。それはもしかしたらイナガキ君も………?

(でも……イナガキ君の実家、もうないんだよね)





亮が出張から戻る日。悠斗と二人で餃子を作った。

「おにくこねこね、たのしいー!」

悠斗のその言葉に、ちょっぴり昔のことを思い出す。イナガキ君のお母さんの前で餃子のひだを作ったこと、うまくできなくて泣いちゃったこと、顔じゅうがオイスターソースだらけになっちゃったこと。
全部が愛おしく、懐かしい時間だ。

「ママー、これでいいの?」

悠斗が私のほうを見上げながら、慣れない手つきで餃子を包んでいく。ちょっと不格好な餃子だけど、焼いてみればたぶん世界でいちばん美味しいはず。餃子は、出張から戻ってきた亮にも食べてもらった。悠斗が包んだことを話すと、とても喜んでくれた。


おなかも心も何となく満たされて、眠りに就こうとすると、またLINEが鳴った。カオルさんグループからだ。

『明日、久々にお茶会するよー。場所はまだ未定だけど、みんな集まってねー』

慌てる気配が漏れてくるほど、「わかりました」メッセージが一斉に届く。私も、何とか遅れないように通知することができて、少しだけ安堵する。


■恐怖のママ友お茶会は順番制!?

幼稚園に着くと、カオルさんたちが待ち構えていた。場所は一番初めにお茶会をやったママさんのところになったらしい。

「ペンキ塗り、終わったからまたみんなをお招きできます」

彼女は引きつり笑いでそう言った。
道すがら、カオルさんが何か思い出したような顔をしながら、私とマキちゃんに向かって言い出した。

「ねえ、1回もあんたたちの家に行ったことないんだけど、いつなら行かせてくれるの?」

私とマキちゃんは顔を見合わせる。

「うち、実は官舎に住んでるんです。ちょっと古い建物で、とてもじゃないけど人をお招きできるようなところじゃなくて……」

「へー。官舎ってことは旦那さん公務員なんだー。佐々木さん、しっかりしてそうだもんね。で、あんたは?」

話を振られて私はしどろもどろになりながら社宅であることを伝えた。

「そっかー。なかなか厳しいんだね、悪かったよ」

私とマキちゃんは、顔を見合わせた――。
その日のお茶会はお昼で解散になり、マキちゃんがそっと私に耳打ちした。

「これから、私の家に来ない?」


■前に進み始めるママ友。私の手放した糸の先は…

招きに応じてマキちゃんの家に行くと、マキちゃんは私に手作りクッキーとオーガニックの紅茶を出して、それぞれの味の感想を求めた。

「このクッキー美味しい! もしかして、野菜スイーツ?」

「その通り。じつは、野菜スイーツを作り出したのには理由があるのね」

マキちゃんの告白はとても衝撃的だった。

ひまりちゃんの偏食にずいぶん悩まされてきて、時に手を上げたくなるほどつらかったこと。もともと料理は好きだったけど、ひまりちゃんに食べてもらいたくて一から勉強しなおしたこと。その過程で本当に子どもにとってふさわしいご飯やおやつを作りたくなったこと。管理栄養士になろうと思ったけれど、国家試験に通ってもなかなか就労が厳しい現実を知ったので、それならいっそ自分で店を開いてみたいと思うようになったこと。

「だからね、今年の夏休みは間借りカフェに挑戦しようと思うんだ。じつはもう、借りる店も決まってるの」

そう言うマキちゃんの笑顔は晴れやかで、どこか一本、芯が通っている感じがした。
(はぁ……私、最近なにやってるんだろう)

夜、窓の外を見ながらなんとも言えないやるせない感覚に見舞われる。

服作りを諦めて一般企業に就職を決めたときから、私は現実だけを見て生きていこうと決めた。あのころ、夢なんて見なくてもいいと平静を装っていたけれど、いまのイナガキ君やマキちゃんを見ていると、夢や目標がどれだけ人にとって必要なものなのか思い知らされる。

イナガキ君がデザインした商品を目の前にするたびに甘酸っぱい気持ちとともに、もうひとつ隠し続けている想いが心の奥底でうごめくような気がするのだ…。

手放した糸の先には確かに大きな夢がついていた。


そして…またLINEの通知音が鳴る。
ため息をつきながら見ると、イナガキ君からだった。

『急だけど、明日ちょっと付き合ってくれない? 11時30分に○△ホテルでどうかな?』

……え? いきなりどうしたんだろう? そしてホテル?
次回更新は2月11日(火)を予定しています。
イラスト・ぺぷり

(宇野未悠)

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