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理学療法士からみた「良いヨガインストラクター」とは?機能解剖学的3つのポイント

  • 2020.1.30
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日本のヨガ人口の増加

現在、日本でヨガを楽しむ人は約650万人といわれ、不動の人気を得ています。私がヨガを始めた2006年頃は、日本でもじわじわと人気に火がつき始めていた頃。当時はまだ「ヨガって何するの?」と聞かれることも少なくありませんでしたが、今ではほとんどありません。それくらいヨガは日本では健康を支える大きな柱の一つとして根強く浸透していると実感しています。

そして、ヨガ人口に比例してヨガインストラクター人口は飽和状態に。ヨガレッスンを受ける方は数多のヨガインストラクターの中から良い先生を選ぶ権利があり、ヨガインストラクターは良いクラスを提供する義務があります。

良いインストラクターとは?

ヨガスタジオに通っていると、定期的にレッスンを受ける先生が決まってくるでしょう。私自身、生徒としてヨガクラスを受けにいきますが、頻繁に通わせていただく先生はほぼ決まっています。

お気に入りの先生を選ぶポイントは人それぞれですが、例えば、
・指導が分かりやすい
・説明や話が面白い
・ヨガの効果が分かる
・知識が豊富
・ポーズのバリエーションが豊富で楽しい
・先生のビジュアルやスタイルに憧れて
・先生のヨガウェアがオシャレで
・この先生に会うと元気になれる
・この先生だと癒される
・先生の人柄が好き
・先生の声が好き

・・・などが挙げられるでしょう。

「ヨガインストラクターの選び方」に正解はありません。なぜならヨガとは「身体だけではなく心へも働きかけるもの」だからです。自分にとって「心地がいい」と思えるヨガクラスなら、その先生がベストなのかもしれません。

では、「良いインストラクター」とは一体何でしょう?この定義はなかなか難しいところです。

今回は、日々さまざまな症状を抱える患者さんの治療を行う理学療法士の観点から、筆者が感じる「良いヨガインストラクターの見分け方」を定義したいと思います。

「予防医療」としてのヨガの重要性

リハビリ=高齢の方だけ…というイメージがありますが、決してそうではありません。私は運動器疾患を主に担当していますが、捻挫をした幼児から、腰痛や頚部痛を抱える小学生、部活で怪我をしたり手術をした中高大学生、日常生活や仕事やスポーツなどで身体の痛みを訴える中高年の方も含めて、様々な年齢・症状の方がいらっしゃいます。そういった方々の治療を通して、怪我や痛みなどの「予防医療」としてヨガを行うことが重要だと思っています。

また、患者さんの中にはヨガで身体を痛めた方もいます。ヨガインストラクターには、ケガへの注意も求められるでしょう。すでにヨガインストラクターとして指導にあたっている方も、ぜひ一度自分のクラスを振り返ってみる機会になると嬉しいです。

重要なのは、指導内容に3つのポイントが含まれているかどうか。順を追って解説していきましょう。

1.3つの面の運動がある

3つの面とは、「矢状面」「前額面」「水平面」のことです。

理学療法士からみた「良いヨガインストラクター」とは?機能解剖学的3つのポイント
引用:川島敏生「ぜんぶわかる筋肉・関節の動きとしくみ事典」

例えば、太陽礼拝を思い浮かべてください。身体の向きは常に正面に向いたまま、ヨガマット上を前後に動いてポーズを展開するので、太陽礼拝は「矢状面」上のポーズの連続だということはお気付きですか?

一方で、両脚を前後に開いた、ヴィーラバッドラーサナ2(戦士のポーズ2)、ウッティタ・パールシュヴァコナーサナ(体の脇を伸ばすポーズ)、ウッティタートリコナーサナ(三角のポーズ)を連続で行うことがしばしばありますが、これらは全て「前額面」上のポーズです。

理学療法士からみた「良いヨガインストラクター」とは?機能解剖学的3つのポイント
Photo by Yuki Horikawa

そして残りの「水平面」上のポーズはというと、アルダマッツェーンドラーサナ(半分の魚の王のポーズ)や、パリヴルッタトリコナーサナ(ねじった三角のポーズ)などです。

これら3つの運動面の違いと身体の運動方向の違いを分かった上で、それら3つの面がバランスよく組み合わされているようなヨガクラスが理想だと思います。

2.怪我などのリスク回避ができている

身体のためにヨガをやっているはずが、正しい身体の使い方を知らないと、身体に良いどころかむしろ身体を壊してしまう可能性が出てきてしまいます。

過伸展を注意してくれる

過伸展とは、関節が必要以上に反ってしまうことで、「ハイパーエクステンション」ともいいます。この状態でヨガを続けていると、体重がかかることで関節や靱帯に負担がかかり、痛みや故障を招くため危険です。

過伸展の原因は、関節に頼った使い方にあります。まるで突っ張り棒のように「関節をロック」する使い方です。それだと関節にかかる負荷を筋肉で吸収せずに、関節がダイレクトにストレスを受ける状態になってしまいます。

ヨガで過伸展を起こしやすい関節は決まっています。それは、「肘・膝・手首・首・腰」の5か所です。詳しくは、以下のコラムで話してますのでチェックしてみてくださいね。

▶肘…そのポーズ、肘が「過伸展」しているかも?理学療法士による過伸展チェックポイント
▶膝…膝の「過伸展」とは?理学療法士によるアーサナ過伸展チェックポイント
▶手首…ヨガ中の痛めやすさ2位…「手首」を守る3つの秘訣|理学療法士が解説
▶腰…「ヨガで腰が痛くなる…」理学療法士が解決、骨盤のニュートラルを知ろう

理学療法士からみた「良いヨガインストラクター」とは?機能解剖学的3つのポイント
Photo by Yuki Horikawa

「膝」に関しては過伸展だけでなく、knee inといってポーズの際に膝が内側に入るように曲がってしまっていないかを注意してもらえるかもポイントです。膝は複雑な構造をしていて、正しく動かさないと靭帯を痛めることの多いナイーブな関節なのです。

「首」は、後屈という天井を見上げる動作で負担がかかりやすいため、頚椎とともに胸椎の伸展を誘導するなどして、過伸展を注意しなければなりません。

そして、ヨガポーズの最も基本となるタダーサナのような立位姿勢で、機能解剖学的な正しいアライメントを分かった上でヨガを指導しているかどうかも大切です。くわしくは、こちらのコラムでお話しています。

▶「タダーサナ」がすべてのアーサナの基本!理学療法士が重視する理想的な「姿勢」とは?

呼吸を確認してくれる

ヨガクラスの時に、ポーズに夢中なり過ぎて呼吸が疎かになってしまうことは誰でも経験があると思います。そういった状態を避けるために、呼吸を続けることをガイドしてもらうことは重要です。

なぜなら「バルサルバ現象」が起こるからです。息を止めることで、瞬発的にいつも以上の筋力を発揮することができます。運動の目的や患者さんの治療の中で、このバルサルバ現象を有効に利用できるケースもありますが、心拍数と血圧を一気に上げたり下げたりするので、高血圧や心疾患をお持ちの方にはとても危険です。そのため、ヨガ中は息を止めずに呼吸を続けるガイドが大切になります。

水分補給を促してくれる

運動中に水分補給をすることは、脱水や熱中症予防のために今は積極的に推奨されています。脱水や熱中症は、ヨガのような屋外で行うものでも当然起こり得ます。特に夏場や発汗量の多いヨガクラスの場合は、水分だけでなくナトリウムなどの電解質(ミネラル)も必ず補給することがポイントです。

プロップスの利用を勧めてくれる

ブロックやブランケット、ヨガベルトなどのプロップスや壁などを有効に使いましょう。プロップスを使うことで、ポーズの補助になり、結果身体への過度の負担や怪我のリスクを軽減することになります。プロップスでの軽減法を教えてくれて自由に選択させてくれる先生だといいですね。

3.「筋力・柔軟性・バランス能力」の3要素が揃っている

身体の機能としてまず大切な基本は、「筋力」「柔軟性」「バランス能力」の3要素だと私は思っています。それについてはこちらのコラムでお話しました。

たとえリストラティブヨガなどリラックス系のクラスだとしても、マタニティヨガでも、高齢者が多かったとしても、筋トレ系のポーズは必ず入れるべきです。ストレッチのポーズだけになってないかどうか振り返ってみましょう。ストレッチポーズで「柔軟性」ばかり高めても、実際に身体を動かして支えているのは「筋力」です。

そして、ヴルクシャーサナ(木のポーズ)などの「バランス能力」を高めるポーズにもどんどんチャレンジしましょう。バランスポーズを取ることで、筋骨格系だけでなく、感覚系、中枢神経系にも作用するのでとても有効です。

数あるヨガポーズを「筋力」「柔軟性」「バランス能力」の3つに分類して整理してみて、それぞれのエッセンスをきちんとクラス内に取り入れましょう。

最後に

機能解剖的にみた3つのポイント、いかがでしたか?あくまで、ヨガとピラティス指導をしている理学療法士の一個人の考えですが、参考になる部分や共感してもらえる部分があれば、とても嬉しいです。

もちろん私もいつもパーフェクトなクラスを提供できる訳ではありません。日々勉強中ですし、毎回反省点はあります。ヨガインストラクターの方においては、ここにあげた知識や技術だけでなく、まず生徒さんへの「思いやり」をいつも心にもつことが大切なのではないかと思います。そして個性や価値観や背景も違う生徒さん一人一人が「今日ヨガに来てよかったな」と、何か一つでも感じてもらえるような出来事や収穫があれば、充分素敵なのではないのでしょうか。

理学療法士からみた「良いヨガインストラクター」とは?機能解剖学的3つのポイント
Photo by Yuki Horikawa

ライター/堀川ゆき
理学療法士。ヨガ・ピラティス講師。抗加齢指導士。モデルやレポーターとして活動中ヨガと出会い、2006年にRYT200を取得。その後、健康や予防医療に関心を持ち、理学療法士国家資格を取得し、慶應義塾大学大学院医学部に進学。現在大学病院やスポーツ整形外科クリニックで、運動機能回復のためのリハビリ治療に携わる。RYT200解剖学講師も務める。

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