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『伊藤家の晩酌』~第八夜1本目/米、水、人。“オール福岡産”の「喜多屋 純米吟醸 吟のさと」~

  • 2020.1.27
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弱冠22歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入! 酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?第八夜から二夜にわたって、娘と父が二人っきりの九州旅で実際に酒蔵を巡って選んだ6本をご紹介。1本目は地元酒米を使ったこだわりの酒から。
(photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita)

第八夜1本目は、地元産の酒米100%で醸した「喜多屋 純米吟醸 吟のさと」から。

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Hanako 編集部

娘・ひいな(以下、ひいな)「今回は、11月に2人で九州の酒蔵を回った時のおいしいお酒たちをご紹介します!」
父・徹也(以下、テツヤ)「もうすでにボトルとか酒の名前を見るだけで懐かしいねぇ」
ひいな「ね、2人で旅行したのも久しぶりだったしね」
テツヤ「しかも、ひいなは自分でアポを取って取材したのが初めてだったんだよな」
ひいな「そう!人生初取材。11月は新酒の仕込みに入っていて、蔵にとってはとても忙しい時期なのに、本当にみなさん忙しい中、取材に対応してくださって。本当にありがとうございました!」
テツヤ「ありがとうございました!」
ひいな「じゃまずは、福岡県八女市にある『喜多屋』から!」
テツヤ「まず、乾杯しよっか!酒蔵を巡っていた時は車を運転していたから飲めてないんだよね(笑)」
ひいな「そうそう、私だけが飲んでたね(笑)」

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Hanako 編集部

テツヤ「あ、この徳利とおちょこについてちょっと語ってもいい? 福岡の八女で一目惚れして買ったやつなんだけど」

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Hanako 編集部

ひいな「この深い色がいいね」
テツヤ「熊本にある『小代焼ふもと窯』っていうところの作品。昔、ここは炭鉱の町だったらしくて、石炭を土に混ぜて焼く技術があったらしいのね。それで独特の黒さが出るらしくて。でもその土がもうなくてなかなか作れないんだって。一目惚れして思わず買ったんだよね」
ひいな「思い入れのあるおちょこで飲むとさらにおいしくなるね」

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Hanako 編集部

テツヤ「あぁ〜!うまいねぇ、これ」

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Hanako 編集部

母・美樹(以下、ミキ)「ねぇねぇ。私も入れて」

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Hanako 編集部

ひいな「ちょ! どうしたの?」
ミキ「九州の旅、どんなだったのかなぁと思って」
ひいな「そんなに見たい?」
ミキ「見たい!見たい!見せて〜」
ひいな「いいよ、一緒に見よ!」
テツヤ「いよいよ、母も登場(笑)」
ひいな「次は妹のひびきも呼んじゃおう」
テツヤ「とうとう伊藤家、全員集合だね!」
一同「(笑)」
ひいな「じゃ、みんなで乾杯しよっか!」

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Hanako 編集部

一同「乾杯!」

ミキ「うわ〜華やか!」
ひいな「なんかさ、口の中で白い小さな花が咲いてる感じしない?」
テツヤ&ミキ「え!?」
ミキ「うん、でもわかる気がする。ふわっと香りがしてくる感じ。いいね」

福岡県八女市にある自然豊かな「喜多屋」の酒蔵に訪問した時の様子はこちら!

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Hanako 編集部

ひいな「お父さんが撮ったこないだの酒蔵旅行の写真だよ」
ミキ「うわ〜、たくさんあるね! いろいろ教えて!」
ひいな「これがまず一軒目に行った『喜多屋』。外観からすごく趣があって。すごく素敵な場所だったね」

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Hanako 編集部

ミキ「うわぁ、なあにこれ?」
テツヤ「ほら、新酒ができると作る『杉玉』っていうやつ。(ライター注:杉の葉を集めて球状にしたもので、酒蔵の軒先に吊るし、新酒ができたことを知らせる。吊るしたては緑で青々としている)」
ミキ「うわ! こんなに大きいの?」
テツヤ「ここまででっかい杉玉を見たのは初めてだったね。中が空洞のものが多いらしいんだけど、ここの杉玉には中まで全部詰まってるって言ってた」
ひいな「最初は緑色で、葉っぱに含まれてる水分があるからすごく重いらしいだけど、水気がどんどん飛んで枯れて軽くなるみたい」
テツヤ「4年に一回変えるって言ってたね」
ミキ「知らないことだらけだ。行ってみるっていいね。ここの酒蔵はどんな酒蔵だった?」

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Hanako 編集部
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ひいな「人をね、すごく大事にしてるっていうのが印象的だったかな。蔵に行く前日に『蔵開き』(ライター注:蔵を解放し、見学や試飲などができ、新酒が味わえる)があったらしくて、その時に若手だけで造ったお酒を特別に販売したんだよね。それを社長さんも絶賛してたらしくて」
テツヤ「そうそう。伝統に縛られないで自由な発想で造ったって言ってたね。たしか、そんなに本数もなかったはず」
ひいな「もともと造り手も7〜8人とかだと思うんだけど、その中の若手だけでお酒を造れるチャンスがあるってなんかいいなと思って」
ミキ「飲んでみたくなるね」
ひいな「この蔵のおもしろいところがね、 HP を見ると、お酒の造り方がぜんぶ載ってるの!」
テツヤ&ミキ「えー!?」
ミキ「企業秘密なのに…! そんなことしちゃっていいの?」
ひいな「どうして公開してるんですか?って聞いてみたら、『手順を教えたからと言って簡単に作れるものじゃないから』って」
ミキ「そこには絶対の自信があるんだね」
ひいな「そう。技術に対する信頼と人に対する信頼が強いんだなっていうのを、話を聞いていて思ったな」

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Hanako 編集部

ミキ「試飲もしてる! いいな〜」
ひいな「試飲させてもらったところが、社員食堂みたいになってて。会う人会う人、みなさんがすごく元気にあいさつしてくだって」
テツヤ「いい会社だったよねぇ」

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Hanako 編集部

ひいな「この蔵は米と水と人、“オール福岡”にこだわってるんだって。JA福岡八女と協力して『吟のさと』っていうこの土地に適した酒米を開発したらしくて」
ミキ「お米にこだわってるんだね!」
ひいな「そう。その『吟のさと』を100%使ったのがこのお酒」
ミキ「へぇ〜」
テツヤ「吟のさと』は、『吟醸』の吟なんだよね」
ミキ「なるほど」
ひいな「そういうお米のこだわりと、水も釈迦ケ岳の伏流水を使っていて水にも自信を持っていて、“地域の力”を大事にしてるの」
テツヤ「水がおいしいところには、必ずおいしい酒があるよな。またさ、八女っていう古い町がよかったよね」

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Hanako 編集部

ひいな「そう。街並みがすごく素敵だった。この煙突もね、今は使ってないんだけど、モチーフとして残してるって言ってて」
ミキ「町のシンボルなんだねぇ」

「喜多屋 純米吟醸 吟のさと」に合わせるのは、父・テツヤ特製のこだわりの「目玉焼き」!

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Hanako 編集部

テツヤ「このお酒おいしいね」
ひいな「おいしいよね」
テツヤ「いつも飲みすぎちゃうよね」
ひいな「1本目の減りが早いよね(笑)」
ミキ「私も加わったからなおさら。フルーティなんだけど、ほど良い感じだからするっと飲んじゃう」
ひいな「このお酒、ベルギーで開催されたSAKE-Selection-2018の純米吟醸酒部門でプラチナ賞を獲ってるんだって!」
ミキ「へぇ〜!」
テツヤ「プラチナって一番いいの?」
ひいな「そうじゃない?」
テツヤ「プラチナカードってあるもんな」
ミキ「だとすると、ゴールドの上じゃない?」
テツヤ「だな(笑)。すごい!」
ひいな「この純米吟醸に合わせるのは、なんと目玉焼きです!」
ミキ「えぇ!?」
テツヤ「しかも、俺が作ります!」

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Hanako 編集部

テツヤ「はい、おまたせ〜!テツヤ特製の目玉焼き〜!」
ミキ&ひいな「わ〜い」
テツヤ「しかも普通の目玉焼きじゃなくて、こだわりの目玉焼きだからね!」

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Hanako 編集部

ミキ「すっごくきれい!」
テツヤ 樋口直哉さん直伝の目玉焼きだからね。水様卵白ってやつを取り除いて、白身と黄身だけを焼いてるよ」
ひいな「しかも、白身にだけ塩を振るんだよね」
テツヤ「そう!」
ミキ「黄身には振っちゃだめなの?」
テツヤ「黄身に振ると塩に水分が吸収されて斑点がついちゃって美しくないから」
ミキ「あぁ、だからこんなにきれいなんだね」
ひいな「白身からいただきます! お酒とめちゃ合う!」
ミキ「白身だけでも?」
ひいな「白身だけでもめちゃくちゃ合う。バターのほんのりとした甘さがあって」
テツヤ「これ、口内調味?」
ひいな「お好きなほうで(笑)」

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Hanako 編集部

ミキ「うん、おいしい! バターがお酒と合うのかな?」
テツヤ「うん、このお酒にバター、確かに合うね」
ひいな「黄身を崩して食べてから飲むとたぶんもっと衝撃がくると思う」
ミキ「崩しちゃお!」
テツヤ「崩すとまろやかさがさらに増すね! いい!」
ひいな「合うでしょ?」
テツヤ&ミキ「いいね!いいね!」
テツヤ「水様卵白のない目玉焼きって、濃厚でおいしくなるね」
ミキ「うん、いつもの目玉焼きとぜんぜん違う」
ひいな「ひと手間だけでね」

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Hanako 編集部

テツヤ「ざるで一回こして、ざるに残った卵だけをバターで焼くんだけど、バターで焼くと温度が上がりすぎなくていいらしいんだよね」
ミキ「普通の油よりも?」
テツヤ「うん。って、樋口さんの本に書いてあった(笑)。水様卵白があると、そっちに火が通り過ぎちゃって白身が固くなっちゃうんだって」
ひいな「おつまみの新しい展開だね」
テツヤ「おつまみの新境地!」
ひいな「この企画をやってるとさ、紹介するおつまみが真似できないって言われることがあって。だから目玉焼きでも、こんなにおいしくお酒が飲めるんだよっていうのを伝えたくて。目玉焼きとお酒を合わせた時のやわらかさを感じてほしい!」
テツヤ「ぜひ、水様卵白を外して焼いてもらえたら」
ミキ「蓋をしたりもしないんだよね?」
テツヤ「蓋をすると黄身が白くなっちゃうじゃない? あれはあれで味わいがあるんだけどさ。あと、白身の端って焦げるでしょ? それが旨味でもあるんだけど、バターの焦げとこのトロッと感だけでも十分おいしい」

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Hanako 編集部

ひいな「目玉焼きについて語るねぇ〜」
ミキ「日本酒についてはひいなが語るから、今日は語らせてあげて(笑)」
テツヤ「俺、樋口さん信者だから(笑)。樋口さん、これでよかったでしょうか?」
ひいな「今日は“目玉焼きの晩酌”だね。お母さん、今日のお酒どうだった?」
ミキ「お酒については素人だから気の利いたことは言えないけど、香りが良くてとってもおいしい。さらに夫の作った目玉焼きもすごくおいしくて、お酒ととっても合うね。2人ともごちそうさまでした」
テツヤ&ひいな「いいえ。どういたしまして」

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Hanako 編集部

(次回は2月2日(日)更新です!)

第七夜3本目「フモトヰ 雄町 きもと純米吟醸」はこちらから
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